117.桑の新品種「たちみどり」(桑農林13号)(1991)

松尾幹夫、尾暮正義、長沼計作、木内美江子、横山忠治、原島典雄(1991)桑の新品種「たちみどり」(桑農林13号).技術資料 第121号:5-815-21

1.近年、土地生産性の向上と収穫・管理の機械化を目指す新しい技術として、多・密植桑園が広く普及しつつあり、その栽培収穫体系に適合する桑品種の要望が強い。そのため密植向き桑品種として昭和63年に「みつしげり」が育成・公表されたが、「みつしげり」は良質・多収で耐寒性を備えており少雪寒冷地に適するが、萎縮病抵抗性がやや低く、秋季の葉の硬化がやや早い上、倒伏しやすいため温暖地・暖地での栽培には不向きである。そのため、温暖地では「一ノ瀬」や普通桑園向けに育成された「しんいちのせ」および「はやてさかり」が栽培されているが、「しんいちのせ」は枝条がやや太く、また「はやてさかり」はやや展開性であるなど密 植栽培・機械収穫に対する適合性に難点があり、温暖地向き密植栽培適応性品種の育成が要望されていた。そこで、温暖地に適応し、良質・多収で萎縮病抵抗性に優れ、密植栽培に適する優良品種の育成を目的とした。

2.本品種は、昭和47年に蚕糸試験場栽桑部桑育種第1研究室において、「ときゆたか」を雌親、「赤芽魯桑」を雄親として交雑し、得られた交雑実生を日野桑園(東京都日野市)に植え付けて昭和48年から5年間個体選抜試験を行って、選出したものである。昭和54年〜59年までの6年間、蚕糸試験場(筑波)において系統選抜試験に供試するとともに、昭和54年〜58年に愛知県および鳥取県の両試験地で萎縮病抵抗性検定試験に供試した。

3.これらの試験においてそれぞれ優秀な成績が得られたので、昭和61〜平成元年に群馬県および千葉県において栽培および飼育試験(系統適応性検定密植試験、1系統当たり2.5a)を実施した。その結果、良質・多収であるとともに、挿木発根性にも優れており、機械収穫にも適合することが確認され、土地生産性向上に貢献することが期待されるため平成2年6月22日「桑農林13号」として登録され、「たちみどり」と命名された。

4.本品種の特性の概要は次のとおりである。@本品種はログワ系に属し、2倍体である、A根刈仕立の樹型は直立型である、B枝条は直立で灰白色を呈し、「しんいちのせ」と比較すると枝条数はやや多い。枝条は短く、やや細いが良く揃う、C節間長は「しんいちのせ」より短く、冬芽は灰褐色の三角形でやや小さく、枝条に密着する、D葉形はやや大型の全縁葉で2裂葉が僅かに混在する。葉色は濃緑色で、光沢を有し、葉面は滑らかである、E春季の発芽は「しんいちのせ」と大差なく、その後の発育も大差はない、F春秋兼用壮蚕用としての年間収葉量は「しんいちのせ」より多く、条桑量中の新梢・葉量割合も高い、G萎縮病には「しんいちのせ」よりやや強く、縮葉細菌病抵抗性は大差ないが、生育不良株および枯株の発生は極めて少なく強健である、H古条挿木の発根性は極めて良好である、I蚕の飼育成績は「しんいちのせ」と同等である。

5.本品種の適応地域は、北関東から山陰地方までの温暖地であり、春秋兼用または夏秋専用の密植桑園用として春・秋の蚕に適する。萎縮病には「しんいちのせ」よりやや強いが「ときゆたか」よりやや弱いので、萎縮病多発地での栽培は避ける方が望ましい。また、条桑量中の新梢・葉量の割合が高いので、蚕飼育における給桑量が過多にならないよう注意を要する。


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