127.桑の新品種「ひのさかり」(桑農林15号)(1992)

岩田 益、樋田仁蔵、山本 賢、市橋隆壽、内田 満、阿部 弘(1992)桑の新品種「ひのさかり」(桑農林15号).技術資料 第125号:1-49-14

1.広く普及してきた「一ノ瀬」には、@樹型が展開性で倒伏しやすく収穫や桑園管理に支障をきたす、A縮葉細菌病に罹病性である、等の欠点がある。「しんいちのせ」、「はやてさかり」などは、これらの点を改良した品種であるが、近年普及拡大してきている密植栽培や収穫機械には、枝が太い、樹型が展開性あるなどの点から必ずしも適しているとは言えない。また、暖地における桑品種に対する要望は多様化し、機械作業のために樹型が直立で条径が細く、活発に生長して下部落葉が少なく、発根性に優れた良質多収品種の育成が強く望まれている。
  そこで、西南暖地に適応した良質・多収で条径が細く、耐倒伏性で、耐病性(縮葉細菌病)に優れた優良桑品種の育成を目標とした。

2.昭和51年、蚕糸試験場九州支場において暖地向きに育成した多収性で葉の硬化が遅い「みなみさかり」(桑農林4号)を雌親に、蚕糸試験場で温暖地向きに育成された、枝条の伸長が良好で比較的枝が細く、葉が厚い「あつばみどり」を雄親に用いて交配を行った。昭和48年から50年までは実生による個体選抜を実施した。昭和51年から56年に系統選抜試験を行った結果、選出した系統「九72-15」は優良な成績を収めた。そこで、昭和55年から59年まで、愛知、徳島、鹿児島の各試験地で桑の萎縮病抵抗性検定試験を実施するとともに、昭和60年から大分・高知の試験地と、昭和63年から宮崎の試験地においてそれぞれ平成3年まで系統適応性検定(宮崎は密植)試験に供試し、栽培試験並びに蚕の飼育試験を実施した。
  その結果、耐倒伏性で枝が細く、機械収穫が容易で普通及び密植栽培に向き、良質・多収であることが認められ、平成4年7月17日「桑農林15号」として登録され、「ひのさかり」と命名された。

3.本品種はカラヤマグワ系に属する2倍体で、暖地の普通植え及び密植栽培に適し、耐倒伏性、良質・多収性であるこどなどから「ひのさかり」と命名された。特性の概要は次の通りである。
 @葉は春秋とも全縁から2裂葉で濃緑色を呈し、葉面は平滑である。
 A春の発芽は「しんいちのせ」よりやや早く、新梢の発育は良好である。
 B中間伐採後の再発芽性は良好で、晩秋期の葉の硬化は遅い。
 C枝条長は「しんいちのせ」よりやや短いが、株内枝条長は斉一であり、枝条数は多い。また、節間長は「しんいちのせ」より短い。
 D条径は「しんいちのせ」、「はやてさかり」に比べて細い。
 E収量は「しんいちのせ」より多く、「はやてさかり」と同等か、やや多い。
 F縮葉細菌病抵抗性は強く、萎縮病および裏うどんこ病には「しんいちのせ」並である。
 G蚕飼育成績による飼料価値は「しんいちのせ」と同程度に良好である。
 H接木の活着性及び挿木発根性は良好である。

4.本品種の適応地域は、四国、九州の平坦地および中山間地帯の普通植および密植栽培に適し、春秋兼用、夏秋専用として春、夏秋の壮蚕用に適する。萎縮病抵抗性は「しんいちのせ」並であるので、萎縮病激発地への導入は避ける方が望ましい。


 研究成果の目次に戻る