128.桑の新品種「はちのせ」(桑農林16号)(1992)

藤田晴彦、片瀬海司、内川長弥、矢崎利一、北浦 澄、松島幹夫、片桐幸逸(1992)桑の新品種「はちのせ」(桑農林16号). 技術資料 第125号:5-815-23

1.東山地域の少雪寒冷地帯に栽培されている桑品種の多くは、@耐寒性が不十分で、しばしば凍害を蒙る、A降水量が比較的少ないため干魃害を受けることがある、B晩秋蚕期の葉の硬化が早く飼料価値が低くなるといった欠点があった。耐寒性で多収の品種として「あおばねずみ」「しんけんもち」「みつしげり」等が育成されたが、これらの品種には、@耐干性がないため下部落葉が多く、晩秋蚕期の葉の硬化が早い、A萎縮病や桑裏うどんこ病に弱く葉質が悪い等の欠点があり、普及にいたっていない。一方、近年土地生産性の向上と収穫・管理の機械化を目指して、多・密植桑園が広く普及しつつあり、その栽培収穫体系に適合する桑品種の育成が要望されていた。そこで、少雪寒冷地に適応し、良質・多収の耐干性、桑裏うどんこ病および萎縮病に抵抗性の普通植え、密植栽培適合性品種の育成をすすめた。

2.本品種は昭和47年に蚕糸試験場中部支場裁桑研究室において、「一ノ瀬」を雌親に、「魯八」を雄親にして交雑した。昭和48年から4年間、得られた交雑実生から個体選抜試験を行って、選出した。昭和5256年まで、蚕糸試験場(松本)において系統選抜試験に供試した。昭和60〜平成元年に鳥取県および鹿児島県で萎縮病抵抗性検定試験を、また、昭和60〜平成3年に岩手県、長野県および山梨県において栽培、飼育試験(系統適応性検定試験、系統適応性検定密植試験)をそれぞれ実施した。その結果、良質・多収であるとともに、夏秋期における枝条下部の落葉はほとんどなく、先枯れも少なく、桑裏うどんこ病抵抗性で挿し木発根性にも優れており、機械収穫にも適合することおよび飼料価値も極めて高いことが確認されたため平成4年7月17日「桑農林16号」として登録され、「はちのせ」と命名された。

3.本品種はカラヤマグワ系に属する2倍体で、寒冷地向耐凍性中生で普通植えおよび密植栽培に適し、耐病性・良品質多収である。特性の概要は次のとおりである。
 @葉は春秋とも4裂葉 大型で濃緑色を呈し、葉面は平滑で光沢がある。
 A春の発芽は「一ノ瀬」よりやや遅い。
 B枝条長は「改良鼠返」と大差ないが、「一ノ瀬」よりやや短い。
 C枝条数は「一ノ瀬」「改良鼠返」より多く、枝条の色も異なる。
 D枝条の先枯れは「一ノ瀬」や「改良鼠返」より少ない。
 E雌雄性であるが、「改良鼠返」より花数が少ない。
 F萎縮病抵抗性は「一ノ瀬」と大差ないが、「改良鼠返」より高い。
 G桑裏うどんこ病抵抗性は高く、殆ど罹病しない。
 H密植栽培における収量は、「一ノ瀬」や「改良鼠返」より多い。
 I蚕飼育成績による飼料価値は、春蚕期、晩秋蚕期ともに「一ノ瀬」や「改良鼠返」より高い。

4.本品種の適応地域は、東山地域および東北地方の太平洋岸地帯の少雪寒冷地で、春夏兼用または夏秋専用の普通植および密植桑園用に適する。また、条桑中の新梢・葉量割合および飼料価値が高いので、蚕飼育における給桑量が過多にならないように注意を要する。


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