135.広食性蚕品種「はばたき」(1993)

山本俊雄、榎島守利、間瀬啓介、加藤正雄(1993)春蚕用広食性蚕品種「日603号・日604号×中604号・中605号」.技術資料 第127号:1-4

1.日603号
  化性:二化性。系統:日日固定種。来歴:本種は農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所において広食性蚕品種として育成した二化性白繭系の日日固定種である。
  蟻蚕は暗褐色を呈し、幼虫の体色は淡赤系で、斑紋は形である。幼虫の経過は日137号に比べて稚蚕、壮蚕ともに大差がない。眠起はよく揃い、飼育取扱は容易であるが、5齢期はやや肥大しすぎるので給桑量は控えめにして、しめ飼いすることが望ましい。繭は浅縊俵形で、ちぢらは普通である。越年卵の卵色は藤鼠である。
  本種と日604号とを交配する場合、両品種の取り扱いがほぼ等しいときは、催青着手を2日程度遅くすればよい。蚕種の人工孵化は即浸では5分、冷浸では6分前後の塩酸浸漬時間が適 当である。

2.日604号
  化性:二化性。系統:日日固定種。来歴:本種は農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所において広食性蚕品種として育成した二化性白繭系の日日固定種である。
  蟻蚕は暗褐色を呈し、幼虫の体色は淡赤系で、斑紋は形である。幼虫の経過は日137号に比べて遅く、稚蚕で約1日、壮蚕でも約1日長い。飼育では、眠起の取り扱いを適切にし、稚蚕期は特に良桑を給与することが望ましい。繭は浅縊俵形で、ちぢらは普通である。越年卵の卵色は藤鼠である。
  本種と日603号とを交配する場合、両品種の取り扱いがほぼ等しいときは、催青着手を2日程度早くすればよい。蚕種の人工孵化は即浸では5分、冷浸では6分前後の塩酸浸漬時間が適当である。

3.日603号×日604号
  化性:二化性。系統:日日交雑原種。
  本種は中604号と中605号との交雑原種と交配し、四元交雑種を造る。
  蟻蚕は暗褐色を呈し、幼虫の体色は淡赤系で、斑紋は形である。幼虫の経過は日137号に比べて稚蚕は大差ないが、壮蚕は約1日長い。眠起はよく揃うので、春、夏秋ともに飼育は容易である。繭は浅縊俵形で、ちぢらは普通である。越年卵の卵色は藤鼠である。
  本種と中604号と中605号との交雑原種を交配する場合、両交雑原種の取り扱いがほぼ等しいときは、本種の催青着手を4日早くすればよい。蚕種の人工孵化は即浸では5分、冷浸では6分前後の塩酸浸漬時間が適当である。

4.中604号
  化性:二化性。系統:中中固定種。来歴:本種は農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所において広食性蚕品種として育成した二化性白繭系の中中固定種である。
  蟻蚕は黒褐色を呈し、幼虫の体色は青系で、斑紋は雌は形蚕、雄は姫蚕となる限性形質を有し雌雄鑑別の容易な品種である。幼虫の経過は支146号に比べて稚蚕、壮蚕ともに大差ない。虫質は強健であるが、眠起の取り扱いを適切にし、稚蚕期は特に良桑を給与することが望ましい。繭は楕円形で、ちぢらは普通である。越年卵の卵色は生壁である。
  本種と中605号とを交配する場合、両品種の取り扱いがほぼ等しいときは、本種の催青着手を同時にすればよい。蚕種の人工孵化は即浸では5分、冷浸では6分前後の塩酸浸漬時間が適当である。

5.中605号
  化性:二化性。系統:中中固定種。来歴:本種は農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所において広食性蚕品種として育成した二化性白繭系の中中固定種である。
  蟻蚕は黒褐色を呈し、幼虫の体色は青系で、斑紋は雌は形蚕、雄は姫蚕となる限性形質を有し、雌雄鑑別の容易な品種である。幼虫の経過は支146号に比べて稚蚕、壮蚕ともに大差ない。虫質は強健であるが、眠起の取り扱いを適切にし、稚蚕期は特に良桑を給与することが望ましい。繭は楕円形で、ちぢらは普通である。越年卵の卵色は生壁であるが、藤鼠を混ずる場合がある。
  本種と中604号とを交配する場合、両品種の取り扱いがほぼ等しいときは、本種の催青着手を同時にすればよい。蚕種の人工孵化は即浸では5分、冷浸では6分前後の塩酸浸漬時間が適当である。

6.中604号×中605号
  化性:二化性。系統:中中交雑原種
  本種は日603号と日604号との交雑原種と交配し、四元交雑種を造る。
  蟻蚕は黒褐色を呈し、幼虫の体色は青系で、斑紋は雌は形蚕、雄は姫蚕となる限性形質を有し、雌雄鑑別の容易な品種である。幼虫の経過は支146号に比べて稚蚕、壮蚕ともに大差ない。虫質は強健で眠起はよく揃うので、桑不足にならないよう注意すれば春、夏秋ともに飼育の取り扱いは容易である。繭は楕円形で、ちぢらは普通である。越年卵の卵色は生壁である。
  本種と日603号と日604号との交雑原種を交配する場合、両交雑原種の取り扱いがほぼ等しいときは、本種の催青着手を4日遅くすればよい。蚕種の人工孵化は即浸では5分、冷浸では6分前後の塩酸浸漬時間が適当である。

7.日603号・日604号×中604号・中605号(愛称:はばたき)
  化性:二化性。系統:日中交雑種。適用蚕期:春蚕期
  本種は日中四元交雑二化性の白繭種で、低コスト人工飼料に適する広食性蚕品種である。
  幼虫の体色は青系に淡赤系を混じることがあり、斑紋は形である。1〜4齢を低コスト人工飼料で飼育すると、幼虫の経過は(日601号×日602号)×(中602号×中603号)に比べて稚蚕期はやや長めであるが、全齢では大差ない。虫質は強健で、眠起はよく揃うが、就眠期は除湿に務め、蚕座をよく乾燥させることが望ましい。とくに四眠期は皮膚が傷付きやすいので農家への配蚕に際しては取り扱いに注意し、また5齢期は良桑を十分給与することが大切である。
  繭は楕円形に浅縊俵を混じ、ちぢらは普通である。
  本種は(日601号×日602号)×(中602号×中603号)に比べて繭重、繭層重、収繭量、生糸量歩合はほぼ同じである。また、繭糸繊度は細く(3デニール内外)、繭糸長が長い(1200m内外)など糸質は普通蚕品種とほぼ同等である。


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