142.夏秋蚕用蚕品種「新山彦」(1994)

永易健一、井原音重、村上正子、岡田英二、真野保久(1994)蚕の新品種−夏秋蚕用普通蚕品種「日201号×中202号」.技術資料 第128号:5-6

1.日201号
  化性:二化性。系統:日日固定種。来歴:本種は農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所において育成した、二化性白繭系の日日固定種である。
  蟻蚕は暗褐色を呈し、蚕児の体色は淡赤系で斑紋は限性形質を示し、雌は形、雄は姫であって、4齢起蚕より熟蚕まで斑紋による雌雄鑑別が容易である。蚕児の経過は「日134号」に比べ稚蚕期は0.51日短く、壮蚕期はほぼ同じか0.5日程度長めである。眠起はよく揃い、飼育取扱は容易であるが、5齢期の冷温環境は経過が長引くばかりでなく、繭中斃蚕が多く発生することがあるので注意を要する。また、秋蚕期の粗硬葉給与は作柄並びに産卵量に悪影響を及ぼすので、良桑給与が大切である。繭は白色の浅縊俵形で、ちぢらは普通である。越年卵の卵色は藤鼠である。
  本種と「中202号」とを交配する場合、両品種の取扱いがほぼ等しい時は、本種の催青着手を約3日早くすれば良い。蚕種の人工孵化に要する塩酸浸漬時間は、即浸、冷浸ともに5〜6分が適当である。

2.中202号
  化性:二化性。系統:中中固定種。来歴:本種は農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所において育成した、二化性白繭系の中中固定種である。
  蟻蚕は黒褐色を呈し、蚕児の体色は青系で斑紋は限性形質を示し、雌は形、雄は姫であって、4齢起蚕より熟蚕まで斑紋による雌雄鑑別が容易である。蚕児の経過は「支135号」に比べ、稚蚕期は0.51日長く、壮蚕期はほぼ同じか0.5日程度長めである。虫質は強健で飼育取扱は容易である。繭は白色の楕円形で、ちぢらは普通である。越年卵の卵色は淡藤鼠である。
  本種と「日201号」とを交配する場合、両品種の取扱いがほぼ等しい時は、本種の催青着手を約3日早くすれば良い。蚕種の人工孵化に要する塩酸浸漬時間は、即浸では5〜6分、冷浸では6分前後が適当である。

3.日201号×中202号(愛称:新山彦)
  化性:二化性。系統:日中交雑種。適用蚕期:夏秋蚕期
  本種は日中一代交雑二化性の白繭種で、夏秋蚕用に供する。
  蚕児の体色は青系であるが淡赤系を混ずることがあり、斑紋は雌は形、雄は姫の両眼性品種である。蚕児の経過は「日137号×支146号」とほぼ同じである。虫質は強健で食桑活発、眠起はよく揃い飼育取扱は容易である。5齢期は桑不足とならないようできるだけうす飼いをして良桑を飽食させると繭重が重くなり、繭層歩合、生糸量歩合も高くなる。初秋蚕期等の高温蚕期では飼育中の座蒸れの防止、上蔟時の換気等に努めることが重要である。繭は白色の浅縊俵形に楕円形を混じ、ちぢらは普通である。
  本種は繭層はよく締まり、繭重・繭層重が重く、収繭量も多い。なお、繭層歩合・生糸量歩合が高く、収量性・繭生産能力が優れている。また、小節点、エクスフォリエーション等級点とも高く、繭層練滅率も低めで繭糸質の面でも優れている。繭糸繊度は3.0デニール内外である。


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