156.寄主植物の化学防御に対抗する昆虫消化液中グリシンの役割(1995)

Konno, K., C. Hirayama and H. Shinbo (1996) Unusually high concentration of free glycine in the midgut content of the silkworm, Bombyx mori, and other lepidopteran larvae. Comp. Biochem. Physiol. 15A(3): 229-235

1.各種鱗翅目昆虫幼虫では消化液中に分泌された遊離のグリシンが存在し、その濃度はイボタを寄主としているイボタガ、サザナミスズメで待に高く、50μmoles/g以上(約0.4%)に達した。

2.イボタの葉抽出液とタンパク質を混合して反応させ、電気泳動で調べたところ、イボタの葉抽出液は極めて強いタンパク変性・重合高分子化活性を持っていた。また、イボタの葉抽出液で変性されたタンパク質は必須アミノ酸の一種であるリジンが特異的に減少していた。イボタ葉抽出液で変性されたタンパク質は栄養価を完全に失い、変性タンパク質を添加した人工飼料を食べたカイコは全く成長しなかった。

3.イボタ葉抽出液とタンパク質の反応時に1%のグリシンを加えたところ、グリシンはイボタ葉抽出液の持つ変性・重合高分子化活性、リジン減少活性、栄養価減少活性をいずれも完全に阻止した。このことから、鱗翅目幼虫消化液中に見いだされたグリシンには、植物葉が持っているタンパク変性・栄養価減少活性に対する適応・対抗的役割があることが明らかになった。


 研究成果の目次に戻る