160.絹タンパク質を素材とする抗血液凝固物質(1996)

玉田 靖(1996)絹蛋白質を素材とする抗血液凝固物質の作出.蚕糸昆虫研ニュース No.323

  ※「硫酸化絹フィブロインの抗血液凝固機構(1999」を参照

1.抗血液凝固物質として現在、最も広く利用されているのは、動物から抽出したヘパリンである。ヘパリンの抗血液凝固作用発現には分子内の硫酸基とそれらの位置が重要であることが明らかにされてきた。そこで、そのヘパリンを模倣した新しい抗血液凝固物質の作出を、繭糸類を素材として試みた。

2.繭糸類を水分散液として、濃硫酸を滴下し、一定時間撹拌しながら反応した後、中和・脱塩し、凍結乾燥するという硫酸処理工程を確立した。

3.繭糸構成成分であるフィブロインとセリシンを濃硫酸処理した物質は、血漿のトロンビン時間、部分活性化トロンボプラスチン時間あるいは、プロトロンビン時間を延長し、抗血液凝固作用が発現されることを見出した。この作出した物質は、人血液の凝固時間を延長することを確認した。

4.硫酸処理工程における、硫酸濃度、反応時間等の条件を変化させることにより抗血液凝固活性が変化した。

5.フィブロインあるいはセリシンを濃硫酸処理することにより、フィブロインあるいはセリシンが低分子化することがわかった。

6.この物質の抗血液凝固活性は、ヘパリンのそれに比べて低い(現状では約1/500)。


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