164.濃核病ウイルス1型非感受性品種「大成」(1996)

江口良橘、嶋崎 旭、廣田勝美、一場ともえ、蜷木 理、原和二郎(1996)蚕の新品種−春蚕用普通蚕品種「日203号×150号」.技術資料 第131号:1-2

1.日203号
  化性:二化性。系統:日日固定種。来歴:本種は農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所において育成した二化性白繭系日日固定種である。本種はカイコ濃核病1型(DNV-1)に対し優性の非感受遺伝子(Nid-1)をホモに保有し、DNV-1に対して完全抵抗性である。したがって、本種との交雑種はいかなる交配相手であっても、DNV-1に感染しない。
  蟻蚕は暗褐色を呈し、蚕児の体色は淡赤系で斑紋は姫である。蚕児の経過は稚蚕期、壮蚕期ともに日137号と同程度である。稚蚕期から食桑行動は活発で、眠起は斉一、蚕体はよく肥大するが、5齢期は過度の飽食や、低温冷温での飼育は蔟中・繭中とも斃蚕が多くなることがあるので、適度なしめ飼いと適温での飼育を心掛けることが重要である。また、熟蚕は早朝から活発に動きまわる性質があるので、上蔟は早目に行い上蔟時の遺失蚕防止に努めることが必要である。繭は白色の浅縊俵形で、ちぢらは普通である。
  成虫は黒蛾で稀に白蛾が混じるが、実用諸形質の性状には殆んど差異がない。蚕卵は産下後の卵色の着色が特に遅い特徴がある。したがって、冷蔵浸酸種は所定の時間高温保護後に卵色にこだわらず冷蔵を行い、冷蔵時期を逸しないよう留意することが肝要である。越年卵の卵色は淡藤鼠である。
  本種と中150号を交配する場合、両種の取扱いがほぼ等しいときは、本種の催青着手を同時にすればよい。蚕種の人工孵化は即浸では5分、冷浸では6分前後の塩酸浸漬時間が適当である。

2.中150号
  化性:二化性。系統:中中固定種。来歴:本種は農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所において、多収、長糸長、中繊度用に育成した二化性白繭系中中固定種である。
  蟻蚕は黒褐色を呈し、蚕児の体色は青系で斑紋は姫(淡いい形斑紋を有する)である。蚕児の経過は支146号に比べ稚蚕期は大差ないが、壮蚕期が約1日長い。虫質は強健で飼育取扱は容易であるが、5齢期は冷温を避け良桑を十分に与え、経過が遅延しないよう努めることが望ましい。上蔟は若上げにならないよう注意が必要である。繭は白色の楕円形で、ちぢらはやや粗である。
  採種にあたっては割愛後に産卵が早いので注意が必要である。越年卵の卵色は生壁色である。
  本種と日203号を交配する場合、両種の取扱いがほぼ等しいときは、本種の催青着手を同時にすればよい。蚕種の人工孵化は即浸では5分、冷浸では6分前後の塩酸浸漬時間が適当である。

3.日203号×中150号(愛称:大成)
  化性:二化性。系統:日中交雑種。適用蚕期:春蚕期
  本種は日中一代交雑二化性の白繭種で、春蚕用に供する。本種はカイコ濃核病1型に対し非感受性(完全抵抗性)である。
  蚕児の経過は日137号×支146号に比べて、稚蚕期および壮蚕期ともやや長めであるが、眠起は斉一で飼育取扱いは容易である。虫質は強健で、稚蚕、壮蚕とも食桑行動は活発であるので、桑付け直後から桑不足にならないよう給桑量に注意することが肝要である。特に5齢期は桑不足になると、葉脈、葉柄も食下する程旺盛な食欲を示すので、努めて薄飼いにし、良桑を飽食させることが大切である。
  本種は虫質強健で飼育し易く、繭重および繭層重が重く、収繭量および繭糸量多く、生糸量歩合高く、繭糸長および解舒糸長は抜群に長く、解舒率および小節点も良好な特徴を有する。
  繭糸繊度は2.7デニール内外で、現行の春蚕用普通蚕品種では最も細い特徴を有する。


Eguchi, R., W. Hara, A. Shimazaki, K. Hirota, M. Ichiba, O. Ninagi and K. Nagayasu (1998) Breeding of the silkworm race "Taisei" non-susceptible to a densonucleosis virus type 1. J. Seric. Sci. Jpn. 67(5): 361-366

1.保存系統No.908は濃核病ウイルス(DNV-1)に対し非感受性の優性遺伝子(Nid-1)をホモにもっている。

2.日150号とNo.908を交雑したのち、日150号を反復親とした戻し交雑法により、Nid-1遺伝子の実用品種(日150号)への導入を行った。

3.毎世代孵化幼虫にウイルスを添食し、生存蚕をNid-1遺伝子をもつ個体として選抜した。戻し交雑を6世代繰り返したのち、同蛾区内交配を2回繰り返し、ウイルス添食試験を併用してNid-1遺伝子ホモの系統を選抜した。

4.さらにこの系統の実用形質の改善と向上を図り、濃核病ウイルスに非感受性の実用品種「日203号」を確立した。この日203号と中150号の交雑組合わせは、1996年に春蚕用新品種「大成」 として農林水産大臣の指定を受けた。


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