166.桑品種「みつさかり」(桑農林18号)(1996)

岩田 益、樋田仁蔵、山本 賢、市橋隆壽、水本文洋、内田 満(1996)桑の新品種「みつさかり」(桑農林18号).技術資料 第132号:1-15

1.近年、蚕品種や人工飼料の改良・開発により蚕の年間飼育回数は大幅に増加可能となったがこれに対応できる夏秋蚕期用の桑品種は少ない。

2.一方、暖地向き桑品種として育成された「はやてさかり」は良質・多収等優良ではあるが、枝条が基部で広がることと、条茎が太いなど近年の密植栽培や機械収穫技術には適していない。また、「みつみなみ」や「ひのさかり」は樹型が直立で条茎が細く、密植栽培や機械収穫に適するが、台風や低温、長雨などの気象変動に弱い。

3.そこで、西南暖地の多回育養蚕に適応し、気象災害に強く、夏秋期に良質・多収で、耐倒伏性かつ、耐病性(縮葉細菌病)に優れた優良桑品種の育成を目標とした。

4.昭和50年、縮葉細菌病や萎縮病に強く、葉の硬化の遅い「魯八」を母親とし、蚕糸試験場九州支場において暖地向きに育成した良質・多収性で耐倒伏性の「はやてさかり」(桑農林7号)を父親に用いて交配を行った。

5.その年に実生苗を養成し、昭和51年から56年までは実生による個体選抜を実施し、選出した個体に系統番号「九75-08」を付け接ぎ木により増殖した。その後、昭和57年から61年に系統選抜試験を行った結果、優良な成績を収めた。

6.そこで昭和60年から平成元年まで、愛知、徳島、鹿児島の各試験地で桑の萎縮病抵抗性検定試験を実施するとともに、平成元年から大分・高知および宮崎の各試験地において大分、高知は平成7年まで、宮崎は平成4年までと平成7年に系統適応性検定(宮崎は密植)試験に供試し、栽培試験並びに蚕の飼育試験を実施した。

7.その結果、耐倒伏性で枝がやや細く、機械収穫が可能で普通および密植栽培に向き、良質・多収であることが認められ、平成8年8月21日「桑農林18号」として登録され、「みつさかり」と命名された

8.「みつさかり」の特性概要は次の通りである。@葉は4裂葉で緑色を呈し、葉面は平滑で、大きさは「はやてさかり」よりやや小さい、A春の発芽は「はやてさかり」よりやや遅い、B中間伐採後の再発芽性は良好で、晩秋期の葉の硬化は「はやてさかり」より遅い、C枝条長は「しんいちのせ」よりやや短く、「はやてさかり」と同等である、D枝条数はやや多く、また、節間長は「はやてさかり」と同等である、E枝条の展開幅は小さく、直立性で耐倒伏性である、F条径は「しんいちのせ」「はやてさかり」よりやや細い、G収量は「しんいちのせ」より多く、「はやてさかり」と同等か、やや多い。特に、夏秋期に多く、密植栽培で顕著である、H萎縮病には弱いが、縮葉細菌病には強く、裏うどんこ病は「はやてさかり」よりやや強い、I接木の活着性並びに挿木発根性は良好である、J蚕飼育による飼料価値は「しんいちのせ」、「はやてさかり」と同程度に良好である。

9.本品種の適応地域は、四国、九州の平坦地および中山間地帯の密植および普通栽培に適し、夏秋専用として夏秋期の壮蚕用桑に適する。萎縮病抵抗性は弱いので、本病常発地への導入は避ける。


 研究成果の目次に戻る