172.カイコのキサンチン脱水素酵素欠失型突然変異における皮膚の着色と妊性の回復法(1997)

Tamura, T., T. Kanda, N. Komoto, K. Yukuhiro, T. Hasegawa and H. Fujii (1999) Rescue of oq, og and ogt mutants by injection of xanthine oxidae. J. Seric. Sci. Jpn. 68(2)111-117

1.カイコではキサンチン脱水素酵素の活性が欠失しているために皮膚が透明となる突然変異ogogt およびoqが存在する。一方、カイコのキサンチン脱水素酵素遺伝子はクローニングされ、構造が明らかにされている。この遺伝子をマーカーとして用いれば、これらの突然変異を形質転換のためのホストとして利用できる。しかし、これらの突然変異体は不妊であり、ホモ型の個体から次世代を得ることができない。そのため、この突然変異の妊性を回復させる方法を開発する。

2.正常なカイコの幼虫皮膚は白色・不透明であるが、キサンチン脱水素酵素欠失型の突然変異ogogt およびoqの幼虫皮膚は透明である。これにキサンチン脱水素酵素と同じ働きをする市販のキサンチン酸化酵素をGraceの培養液に溶かしたものを注射すると、皮膚が正常化し、白色不透明になる。これは注射した酵素が幼虫の体内で働き、尿酸が合成され、皮膚に蓄積するためである。

3.キサンチン脱水素酵素欠失型の突然変異はすべて不妊であるが、不妊性の程度は種類により異なる。ogおよびogt では雌は全て不妊で、雄の一部にのみ妊性があるが、oqでは雌雄共に不妊である。しかし、キサンチン酸化酵素を幼虫期に注射することにより、いずれの突然変異でも妊性は回復し、突然変異同士を交配し、後代を得ることができる。

4. このことから、カイコのキサンチン脱水素酵素欠失型の突然変異ogogt およびoqの不妊性はキサンチン脱水素酵素活性の欠如が原因であると判断される。

※田村俊樹、行弘研司、長谷川毅、河本夏雄、神田俊男、藤井 博「蚕のキサンチン脱水素酵素欠失突然変異og油蚕、ogt油蚕及びoq油蚕の妊性と表現型の回復法とその後代の利用法」(特許登録:2987431199910月8日)


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