180.昆虫起源セルラーゼの遺伝子構造(1997)

Watanabe, H., H. Noda, G. Tokuda and N. Lo (1998) A cellulase of termite origin. Nature 394: 330-331

1.近年、昆虫自身もセルラーゼを生産していることを示唆する実験データが公表されている。筆者らはすでにヤマトシロアリのセルラーゼを精製し、免疫学的手法により唾液腺に蓄積されていることを明らかにした。

2.ヤマトシロアリ全虫体よりmRNAを抽出しcDNAを作成、ファージにクローニングした。それをヤマトシロアリセルラーゼ(RsEG)に対する抗体を用いてスクリーニングすることによりRsEG cDNAの部分配列を得た。またアンカーPCR法によってcDNAのすべてのアミノ 酸コード領域をクローニングした。

3.cDNAの配列よりさまざまな遺伝子特異的プライマーを作成し、イントロンを含むゲノム上のアミノ酸コード領域をクローニングした。その結果、平均長592bpの8本のイントロンを含 む計6.1kbpの遺伝子がクローニングされた。

4.RsEG cDNAをテンプレートとしてDIG PCRプローブを作成し、ヤマトシロアリゲノムDNAのサザンハイブリダイゼーションを行ったところ、ゲノム上に遺伝子配列より予想される長さの断片を含む遺伝子断片を検出し、RsEG遺伝子がヤマトシロアリゲノム上に存在することを証明した。

5.cDNA特異的プライマーを用いたRT-PCRにより、本遺伝子が唾液腺で発現されていることが確認された。

6.cDNA配列および翻訳アミノ酸配列より本酵素が活性ドメインのみからなるシングルドメイン構造をもち、セルラーゼファミリーEおよび炭水化物加水分解酵素ファミリー9に属する新規セルラーゼであることを解明した。このことにより、昆虫がゲノムにセルラーゼ遺伝子を持つことを初めて証明した。

※野田博明、徳田 岳、渡辺裕文「昆虫由来のセルラーゼ遺伝子」(特許登録:30303492000年2月10日)


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