188.カイコ脱皮ホルモン受容体(BmEcR)の脱皮、変態過程における発現(1998)

Kamimura, M., S. Tomita, M. Kiuchi and H. Fujiwara (1997) Tissue-specific and stage-specific expression of two silkworm ecdysone receptor isoforms: Ecdysteroid-dependent transcription in cultured anterior silk glands. Eur. J. Biochem. 248: 786-793
Kamimura, M. and M. Kiuchi (1998) Effects of a juvenile hormone analog, fenoxycarb, on 5th stadium larvae of the silkworm, Bombyx mori (Lepidoptera: Bombycidae). Appl. Entomol. Zool. 33: 333-338
Kamimura, M. M. Takahashi, S. Tomita, H. Fujiwara and M.Kiuchi (1999) Expression of ecdyson receptor isoforms and trehalase in the anterior silk gland of Bombyx mori during an extra larval molt and precocious pupation induced by 20-hydroxyecdysone administration. Archives of Insect Biochemistry and Physiology 41: 79-88

1.昆虫の脱皮、変態は脱皮ホルモンと幼若ホルモン(JH)により制御されることが知られているが、それらの作用の分子的機構の詳細はわかっていない。そこで、脱皮ホルモンの細胞内 情報伝達系の最上流の因子である脱皮ホルモン受容体(BmEcR)の発現様式が脱皮から変態への切り替えを制御する機構を調べる。

2.5齢期のカイコ前部糸腺では、脱皮ホルモン受容体Aアイソフォーム(BmEcR-A)とB1アイソフォーム(BmEcR-B1)のmRNAは同調して発現し、ともにワンダリング期に発現のピークをむかえるが、4齢期にはBmEcR-Aが齢期の前半で強く発現し、BmEcR--B1が齢期の後半で強く発現することから、前部糸腺の脱皮ホルモンに対する幼虫脱皮および蛹化時に特異的な反応がBmEcR-ABmEcR-B1の発現のタイミングにより制御されている可能性が示唆される。

3.JH活性物質フェノキシカルブおよび20-ヒドロキシエクジソン(20E)を処理することにより、脱皮回数や終齢期間の長さを増減した8種の実験系の全てで、BmEcR-ABmEcR-B1に先行して発現する時には幼虫脱皮時の変化(前部糸腺では内膜クチクラ層の分解と再生)が誘導され、両者が同調して発現する時には蛹化時に変化(プログラム細胞死)が誘導される。

4.5齢0日の前部糸腺を20Eとともに培養すると、5ng/ml以上の20Eにより両方のアイソフォームの転写が濃度依存的に誘導される。この閾値は5齢期に両者のmRNA量が増加しはじめる時期の血中エクジステロイド濃度と等しく、5齢期にはエクジステロイドの少量の増加によりBmEcR-ABmEcR-B1の転写が同時に誘導されることが示唆される。


 研究成果の目次に戻る