193.脱皮ホルモン生合成を抑制するカイコ新規神経ペプチド(1999)

Hua, Y-J., Y. Tanaka, K. Nakamura, M. Sakakibara, S. Nagata and H. Kataoka (1999) Identification of a prothoracicostatic peptide in the larval brain of the silkworm, Bombyx mori. J. Biol. Chem. 274(44): 31169-31173

1.前胸腺の器官培養とラジオイムノアッセイを組み合わせた前胸腺抑制活性検定方法を用いて、2,000頭分の5齢幼虫脳を出発材料として精製を進め逆相液体クロマトグラフィーなど6段階のステップを経て前胸腺抑制因子の単離に成功した。この因子は9個のアミノ酸からなる分子量が1,090のペプチドであり、前胸腺抑制ペプチド(Prothoracicostatic peptidePTSP)と名付けられた。

2.PTSPは甲殻類の脱皮抑制ホルモンとは全く異なる構造であったが、タバコスズメガで既に単離されている筋収縮抑制ペプチド(Mas-MIP-I)と全く同じ構造であり、また、フタホシコオロギから単離されたアラトスタチン(Grb-AST B1)や脊椎動物のガラニンとも高い相同性を有していた。

3.PTSPは単独でエクジステロイド生合成活性が高い吐糸期の前胸腺を強く抑制した。また、終齢幼虫の摂食期の前胸腺にPTSPPTTHを同時に投与すると、PTTHによるエクジステロイド合成の活性化が阻害された。したがって、PTSPは吐糸期や眠期の後半において前胸腺の活性を抑制することでエクジステロイド濃度を低下させるか、吐糸期や眠期の直前においてPTTHの作用を阻害することでエクジステロイド濃度上昇のタイミングを調節している可能性が示唆された。


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