7.母蛾検査

1.母蛾検査の必要性と検査方法
  微粒子病は母蛾から卵へと伝染(経卵伝染)し、野外昆虫から桑を経て蚕に感染するため、厳重な検査規程が設けられている。蚕糸業法第9条第3項では、母蛾の検査に合格したものでなければ蚕種及び蚕児を譲渡し、あるいは飼育することができないことが規定されている。さらに、蚕糸業法施行令によって蚕種に関する検査が規定されている。
  また、施行令第1条の5の原原蚕種又は原蚕種の検査蛾数については、蚕糸業法施行規則第16条に定められている。
  以上のことから原原蚕種については14蛾、原蚕種は28蛾を単位とする集団又は蛾毎の微粒子病検査を行う。また、交雑種等についても同様の単位で検査を行う必要がある。
  不越年蚕種の母蛾については、その蚕種を掃立又は配布発送するまでに検査を終了しておかなければならないので時間的な制約があり、母蛾検査の順序、手順についてもあらかじめ蚕種の処理方法と対応させて、計画的に実施するよう準備しておくことが重要である。なお、越年種の場合は採種後翌年まで母蛾を保存しておいて検査することも可能である。
 母蛾検査の方法は1蛾別の検査方法と集団検査の方法がある(蚕糸業法施行規則)。1蛾別の検査では母蛾とその産下卵が対照できるようにしておかなければならない。また、集団検査の場合には、14蛾(原原蚕種)又は28蛾(原蚕種)の母蛾集団とその母蛾集団が産下した産卵台紙が対照できるようにしておかなければならない。
 集団検査は1蛾別検査に比べて能率が高い反面、万一微粒子病原虫が発見された場合、産卵台紙全体(原原蚕種では14蛾分)を廃棄しなければならないので、製造数量の多少によって集団検査とするか、1蛾別検査とするかを決める必要があるが、おおむね製造蛾数30蛾以上の場合は集団検査とする。

2.母蛾検査の実施要領
 1)母蛾の乾燥および保存
   収蛾後はなるべく早い時期に母蛾の乾燥を行う。乾燥は収蛾箱ごと乾燥機で乾燥(70℃、6時間)し、母蛾検査まで保管する。乾燥後長期保存する場合は、カビを発生させないこと、防虫剤を入れ、缶又はビニール袋に密封して保存するよう留意する。

 2)1蛾別検査
  1蛾別の検査では0.5%炭酸カリウム又は2%水酸化カリウム水溶液4mlを加え、母蛾磨砕機によって磨砕した後、この磨砕液を鏡検用スライドグラスに1滴滴下し、カバーグラスをかけて600倍の位相差顕微鏡で鏡検する。
  なお、「蚕種等に係わる蚕糸業法の運用に関する局長通達」59農蚕第3667号では、母蛾検査について蛾数ごとに2枚以上の標本を調整し、2人以上の職員がそれぞれ1枚の標本を鏡検することと、1鏡面ごとに10視野以上鏡検することを定めている。
 微粒子病は、胞子がやや楕円型または洋梨型をしており、蛍光色を彩する。脂肪球は円型で、表面近くに存在するために顕微鏡のピントを合わせることで微粒子と区別できる。また、カビが発生した母蛾は微粒子と区別しにくいことがある。カビも蛍光色を彩するが微粒子よりも小さく、円型をしており通常の場合は多数現れるので区別できる。
 真性微粒子に遭遇することは極めてまれであって、通常は新型原虫及び疑似胞子類が多いが、それだけに検査の前に、これらの標本(Sample)をプレパラートに準備してあらかじめ目を馴らすことが必要である。
 また、原原蚕種及び原蚕種については、鏡検の結果M11などの新型原虫及び疑似胞子類が発見された場合にも、すべて不合格とする(昭和53年3月27日付農蚕園芸局長通達)こととなっている。

 3)集団検査
  産卵台紙と対応するように収容した収蛾箱毎に、全母蛾を集団母蛾磨砕機のミキサーカップに入れ、0.5%炭酸カリウム水溶液40〜80mlを注入(蛾磨砕機では自動的に注入される)して磨砕し、そのろ過液を70mlに均一化し、遠心分離(毎分2,600〜3,000rpm、3分間)して、その沈殿物に炭酸カリウム水溶液2mlを加えて希釈した上、ボルテクサーで撹件した後1蛾別検査の場合と同様の方法で鏡検する。
  原原蚕種、原蚕種及び普通蚕種の集団母蛾検査の実施要領を示せば次の通りである。

第12表 集団母蛾検査の実施要項

  原原蚕種 原蚕種 普通蚕種
管理目標  完全無毒  0.5%以内
検査形式  全数検査  抜取検査
検査蛾数  14蛾  28蛾  30蛾
磨砕溶液  0.5%無水炭酸カリ溶液
液  量  (乾)80ml
 (生)70ml
 (乾)100ml
 (生)70ml
磨砕時間  2分 回転数9,000〜10,000rpm
静置時間  2分
ろ  過  5〜10分(ろ紙・脱脂綿)
遠心沈殿  8本架 2,600rpm 3分  [1,500g 3分]
振とう・溶解  (乾)沈査に2%苛性カリ溶液2mlを加え振とう・溶解
 (生)何も入れないで振とう・溶解
検  鏡  2鏡面   10視野
再遠心沈殿
・検鏡
 沈殿に水70〜80mlを加え、1,500g 3分間の沈殿
 を行い、振とう・溶解して鏡検する

(乾):乾燥蛾      (生):生蛾


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