3.上蔟・収繭

1.上蔟作業の方法と留意点
 1)上蔟準備:
 蚕が5齢に入ると、上蔟準備を行う。 各品種ごとに必要な量の蔟(改良蔟・区画蔟等)を準備する。まず、改良蔟(100年蔟)は蚕箔上にピロシート又は蚕座紙、新聞紙等の菰(こも)を敷き、その上に蔟を置くが、蔟の山を均一にするため蔟固めを当てるか、蔟の両端を蚕箔の両端に紐で結びつけるかして固定し、上蔟用網を覆って蔟の準備を終わる。

 2)上蔟: 上蔟(熟蚕を集めて蔟に移すこと)に当たっては、初期の熟蚕は一頭拾いで所定の蔟に移す。その場合1平方メートル当たり450頭ぐらい(蔟1個当たり200〜250頭)が適当である。70%位が熟蚕に達した時期を目安として一斉上蔟させる。ただし、試験等によっては一斉上蔟が違うので留意されたい。
  また、熟蚕期は行動が活発化するので他品種との混交を防止するため、蔟に上蔟網を掛け、蔟からのはい出しを防ぐ配慮が必要である。
  営繭中は高温や多湿を避け、23℃内外を目標とし、換気通風を計り60%前後の湿度となるように努める。
  上蔟作業は、熟蚕化が時間によって集中するので、短時間で熟蚕を処理しなければならない。とくに品種数が多い場合は、過って混交することがしばしばあるので、的確に判断して、間違いを起こさないように上蔟させることが大切である。

 3)菰(こも)抜き
  蔟の下に敷いた菰(通常ではピロシート又は蚕座紙・新聞紙等が用いられている)を取り除く作業を、菰抜きという。この作業は、蔟の中で斃死した蚕を早めに処分することが望ましいので、菰抜きと合わせ、斃死蚕の除去を行う。繰糸を行う繭を生産する場合、解舒(糸のほぐれ)が悪くなるので、熟蚕の排尿が終わり、薄皮繭の出現の頃を見計らって菰抜きを早めに行うとよい。その場合、病気による斃死蚕、不結繭蚕等は計数して取り除き、不結繭蚕で結繭しそうなものは別に処置をする。

2.収繭と繭調査
 1)収繭(繭かき)

   蔟から繭を取りはずす作業で、上蔟後7日目〜8日目の間に行う。この作業時期は、数個の繭を切開し、蛹の状態で決定することもできる。上蔟室の温度が25℃であれば春、夏、秋の蚕期による差は考慮しなくてよい。但し試験によっては、春蚕、晩秋蚕は上蔟後8日目、夏、初秋蚕は7日目と規定されていることもあるので留意する。
   収繭時には薄皮繭、繭中斃死など毛羽取り機にかけた時に問題となりそうな繭は注意して取り除いておく。

 2)毛羽(繭の外側をおおう綿状のもの)取り
  繭の毛羽を取って以後の繭の取扱いを容易にするための作業であり、毛羽取機を使用してよいが、蛹が若いと傷つき易いので、あらかじめ数個の繭を切って繭の状態を確認することが望ましい。

 3)収繭調査及び選繭
  収繭調査の際、外観上明らかに死んでいるもの、薄皮繭、奇形繭を除いたものを普通繭とする。したがって普通繭の中には、蛹または蚕で死んでいるものも若干含まれているし、また、屑繭の中には健蛹繭も含まれる場合がある。上繭は普通繭のうちから、さらに同功繭、死ごもり(内部汚染繭)、外部汚染繭、蔟着繭などの異常繭を除いたものとする。
  肉眼による調査として、繭色、繭形、ちぢら、繭の斉否、その他特性を調べる。
   (注意)配布用原原種および原種は、いずれも配布当時の性状を維持するため、選繭は必要最小限にとどめる。

 4)繭質調査
  繭質調査は収繭の翌日行う。調査方法は試験等の目的により多少違ってくるが、通常選繭終了後繭を切開して雌、雄別に繭重、繭層重を秤量するが、この場合個体別秤量と集団的に秤量する方法がある。個体での重量や変異を求める場合は個体秤量がよく、品種を育成する場合はこの方法が用いられる。一般的には集団秤量(雌雄別に繭を秤量)が行われている。秤量に用いる繭の粒数は目的に応じて決定し、秤量値は雌、雄の平均値で示す。そして、一粒繭層重/一粒繭重×100=繭層歩合が算出される。

 5)1リットル粒数の調査(1リットル調査)
  繭を1リットル升に入れ、半分のところで1回手直しを行い、升縁上に、横半粒並ぶ程度とする。そして、粒数と重量を計測し、2回繰り返した平均値で示す。

3.種繭(原種または原原種)の保護
  上蔟から発蛾までは種繭の保護期間である。この期間の保護の良否は発蛾歩合、正常卵蛾歩合、産卵数などに影響を与える。上蔟時の温度は25℃を目標として管理し、収繭、毛羽取りを終わった後の期間は温度23〜25℃、湿度70〜80%とし、日中は明状態、夜間は暗状態として保護する。

 1)種繭の選別
  収繭、毛羽取りの段階でも不良繭除去などの選別を行うが、最終段階としての種繭の選別を行う。
 この場合、各品種固有の性状(繭の色、繭の形、繭表面のちゞら)にも注意しつつ選除し、併せ不良繭を除去する。

 2)種繭の切開
  最近の品種は繭層重が重く、繭層が厚いため発蛾しにくく、繭中蛾となる場合もあるのであらかじめ種繭の両端を切開する。この作業には繭切開機を利用してもよい。
  また、中の蛹は切開した後繭層から出してしまってもよいし、両端を切開した繭層の中に残したままにしておいてもよい。

 3)切開後の種繭保護
  切開した種繭は目的や量に合わせて所定の容器に入れ、網製のフタをかけて保護する。この場合、容器内にあらかじめ蚕座紙などの紙を敷いて、繭が重ならないように並べておく。
  蛹を繭層から出した場合には、前記と同様の容器内にジャパラ紙(厚紙を波状に折り曲げたもので市販品がある)又はピロシート等の蛹体保護紙を敷き、その上に蛹を重ならないように並べ、フタをしておく。この時期の保護温度23〜25℃、湿度70〜80%を目標とする。
  また、光条件は昼間(午前6時〜午後6時)を明状態、夜間を暗状態にすれば発蛾が斉一になる。なお明暗の調節にはタイマーと連動する点灯スイッチを用いるとよい。

 4)交雑種製造用繭の取扱い
  交雑種を製造するための原種は、あらかじめ幼虫期に雌雄を鑑別し、区分して飼育、上蔟させて収繭するが、幼虫期に雌雄を分けていない場合は、蛹期の生殖原基によって雌雄を分別する(下図参照)。

第3図 蛹の雌雄(文部省、蚕種製造 1963: 高見、蚕種総論 1969)


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