1.催青

  蚕の卵を掃立予定日に揃って孵化させるため、温度・湿度・光線などを調節した環境(催青室)に保護することを催青という。

1.催青の事前準備
(1)催青室:補湿器及び計測器類の点検。
(2)催青室の消毒:少なくとも催青開始予定日の7日前に2%〜3%ホルマリンを用いて十分消毒する。
(3)用具の準備と消毒:催青に必要な用具として一般には催青枠を使用するが、1蛾別の場合は催青箱(例えば三真フラット)、羽箒(1本羽根を含む)、暗幕、種包み紙等であり、これを催青室と同様に消毒する。
(4)蚕種の準備:飼育計画(掃立計画)をあらかじめ立案して、蚕種を準備しておく。
(5)予備催青:品種、採種場所及び時期別に代表的な蚕種について少量の蚕種を用いてあらかじめ試験的な催青を行い、孵化日数、孵化の斉否等、蚕卵の特徴を確認しておく。

2.春蚕期の催青
(1)催青開始時期
  催青に着手する時期は掃立て予定日から逆算しておよそ12日〜13日前(冷蔵条件によって出庫後中間温度を経過させる必要がある場合はその日数を加える)となるが、春蚕期においては、桑の発芽・ 発育状況に左右されるので用桑が燕ロから第1開葉期に達した時期を目安とする(下図参照)。
  なお、交雑種を製造するための原蚕飼育の場合、日本種、中国種それぞれの催青日数、幼虫期経過日数、蛹期日数を勘案し、日本種と中国種の発蛾日が一致するように掃立予定日、催青着手日を設定 (通常は日本種を中国種より2日前に設定)する必要がある。

第1図 桑の発芽、発育図

(2)蚕卵の出庫から催青まで
 胚子が丙A〜丙Bの発育段階で冷蔵(5℃)されていた蚕卵は中間温度として室温15℃で2〜3日間保護した後25℃に、また0℃または2.5℃で冷蔵されていた蚕卵の場合は5℃に1〜2日、さらに15℃に2〜3日間保護してから25℃に移し催青させる。
 保護温度を移行する場合は温度差が10℃以内となるようにし、それぞれ1〜2日間おいて順次上げることが肝要である。
 (ア)23〜25°Cに移して孵化まで温度を変えない(平進法)。
この場合、1化性の品種は低目の温度(23℃)で、また2化性の品種は高目の温度(25℃)で催青すればよい。
 (イ)18〜20℃に2日間、23〜24℃に4日間おいた後、孵化までを25〜26℃にする(漸進法)。
 催青中の湿度は75〜85%を目標とする。また、催青中の光条件は品種によってその蚕卵から孵化した次代蚕の化性に影響を与え、不越年卵を産むことがあるので、これを防ぐために胚子の発育段階が反転期から点青期に到るまでは1日16時間以上照明(明るさは通常の室内照明程度)する。なお、孵化を斉一化させるためには、点青の前日(一部が点青になった日)または当日に蚕卵を台紙ごと紙で包み(包紙)暗幕で覆って暗黒状態(暗催青)とし、25℃で催青を続け孵化当日の朝、早めに暗幕を取り除いて明状態にすると良い。

3.夏秋蚕期の催青
  夏蚕期及び初秋蚕期の飼育には春蚕期に採種した即時浸酸種(即浸種、産卵後25℃で20時間経過した卵を塩酸で処理したもの)及び前年に採種し複式冷蔵を行った越年蚕種が用いられる。この即浸種を、浸酸後直ちに催青を始める場合には25°C、10日間の催青で孵化する。
  しかし、通常この時期に用いる即浸種は即浸処理を行なった後5℃に冷蔵されているので、15℃の中間温度に6時間保護した後25℃の催青室に移す。この場合、催青着手から10日〜11日目で孵化する。
 催青中のその他の取扱いは春蚕期と同様とする。また、複式冷蔵を行った越年蚕種は所定の中間温度による保護を行った後、25℃で催青を行い13日目に孵化する。

4.晩秋蚕期の催青
  晩秋蚕期には、即浸種を用いる方法と冷浸種(冷蔵浸酸種)による方法がある。即浸種を用いる場合は、即時浸酸処理を行なった後5℃に冷蔵されている蚕卵を利用することになるので前項の夏秋蚕期の催青と同様の取扱いをする。冷浸種の場合は、産卵後48時間を経た卵を5℃に冷蔵し、40日以上経過した卵を浸酸して催青するもので、少なくとも12日程度の催青期間が必要である。従って、掃立予定日の13日前に浸酸し、風乾後25℃で催青する。

5.蚕種の整理
  出庫、催青した蚕種が点青期に入る前に蚕種の整理を行う。
  1蛾育を行うものにあっては、蚕卵の状況、固有色等に留意し、掃立予定蛾区等の決定を行い、掃立計画に従い、飼育記号、品種名、前代番号、採種蛾区番号等々を産卵台紙に付し1蛾別に切り離す。
 混合育を行うものにあっては、掃立予定蛾区の決定後、この蛾区から均等に1蛾の中から1部分を切り取り、必要分量を1蛾育と同様に必要事項を記入した台紙に貼り付ける(切り貼り)。
 この場合はb/a蛾を掃立てる。bは使用した蛾区の数、aは1蛾を何分割したかを表す。切り貼りに使用する糊は、防腐剤としてホルマリンを使用しているでんぷん糊が使われる。

6.催青における留意点
  催青を開始した後、何等かの事情で掃立日を延期する必要が生じた場合、催青中の卵又は孵化した蟻蚕を冷蔵することによってある程度まで対応できる。
  催青中の卵を冷蔵する場合は、胚に付属肢突起が生じた時期又は完全に青み卵となった時期が望ましく、この場合5℃に冷蔵する。卵及び蟻蚕の冷蔵可能時期及び期間と温度は次の通りである。

第1表 冷蔵の時期及び可能期間と温度

冷蔵の時期 可能期間 冷蔵温度
(1)付属肢突起形成時   10日間  5℃
(2)青み卵  7〜10日間  5℃
(3)蟻蚕  2〜3日以内   7.5または10℃ 

 なお、冷蔵中の湿度は高い方が望ましいので冷蔵容器内に湿布を置くか冷蔵容器を湿布で包む等補湿を行い冷蔵する。又、冷蔵した後、再び催青を開始する時は、
上表(1)の場合: 中間温度(15℃)に6時間おいてから25℃に移して催青する。
上表(2)の場合: 掃立前日に取り出し、暗幕に包んだまま15℃に2時間以上おいた後25℃に移し、掃立当日に暗幕をとれば孵化する。
上表(3)の場合: 出庫後15℃に2時間おいた後掃立てる。
 催青室は、蚕種庫(蚕種冷蔵庫を含む)と近接したところが多く、飼育室の消毒ほど消毒が行き届かないことが多い。従って催青室の入口に洗面器を置きオスバンかクレゾール石鹸液又は薬用石鹸等を用意し、手を消毒して出入することが必要である。


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