発刊のことば

 蚕種取扱いの適否が蚕作に大きな影響を及ぼすことは今更言うまでもない。われわれ蚕種製造業者は蚕種の製造過程すなわち、原蚕飼育、種薗保護、採種、浸酸、冷蔵保護、催青等のすべてに亘り、長期間細心の注意を払い、その蚕種が養蚕家の手許に健全な状態で渡り、りっぱな繭が出来上るまで片時も気をゆるすことは出来ない。
 従ってわれわれは蚕種の製造技術の全般にわたって、つねに研鑽を怠らず新しい技術の吸収に心を砕いている。近時おびただしい研究成果が発表せられ、これらを基とした新しい参考書の上梓を渇望していたのであるが、茲にに高見博士の力作「蚕種総論」の発刊を見てわれわれは百万の味方を得たような心強さを覚ゆる次第である。
 高見博士は蚕種に関する学理と応用の両面に亘る真摯な学究として知られていたが、先般農林省蚕糸試験場を退職され小閑を得られていることを承り、同博士にわれわれの希求している参考書を執筆していただくよう前蚕糸試験場長大村清之肋博士を通じ、再三に亘り懇願したるところ、漸く御承引を得て今回茲に「蚕種総論」刊行の運びに至ったことは私の最もよろこびとするところであります。
 ここに、執筆者高見丈夫博士の御努力に対し心から敬意を表すると共に、同氏の蚕種に関する研究成果があますところなく本誌に織込まれておるので、研究者、製造実務にたずさわる技術者はもちろん広く関係者の皆さんの御期待に添うものであることを確信して発刊のことばと致します。

昭和44年6月

全国蚕種協会会長 矢沢 泰明


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