] おわりに −シルクを永遠に−

 はじめにも述べたように、シルクはたくさんある天然繊維の中でただ一つの長繊維として、数千年も前から衣服用途をはじめさまざまな分野で大切に使われてきました。そのためシルクを作り出した中国を始め世界各地でシルクの産業がおこり、それぞれの国の経済の発展に貢献してきました。そして、さらに品質の良い製品を能率良く作ってシルクの産業を発展させようとたくさんの人たちの努力と知恵が積み重ねられ、だんだんに進歩しながら今日の製糸技術が築きあげられてきました。現在私たちが使っている繰糸機の索緒ぼうきや接緒器・撚りかけなどは大変古くからあるもので、しかもごく簡単で当たり前のもののように思われがちですが、それらはいずれも今日先端産業といわれている電子工業や精密機械工業の人たちが見てもすばらしいと感心する器具や技術ばかりであり、他にも大切な役目を果たしている技術がたくさん生かされていることを認識したうえで、製糸技術をマスターして欲しいと思います。
 自動繰糸機とはいえ、現在の繰糸工程には糸故障修理や粒付け管理などむずかしくてやっかいな手仕事が多いように感じられるかもしれません。それは繭がカイコという昆虫の作ったもので1つ1つの性質が揃っていないため、どうしても自動化することができない部分だけが、直接手を下さなければならない作業として残されているものであり、繭の品質や処理の仕方によっても仕事の内容や忙しさは変わってきます。また、同じ型の自動繰糸機でも、工場によって機械の設備は少しずつ異なっております。そのため、繰糸の作業の仕方も工場によって違う部分が多いと思いますが、本書に書かれていることは一般的な基本の技術、考え方と理解していただき、これを参考にして工場ごとにさらに工夫をこらし、製糸に携わるものとして正確でむだの無い作業を身につけるのに役立てていただきたいと願っております。
 1つの産業が産業として存続していくにはその製品が人々に求められているものであると同時に、産業そのものがその時代の社会の仕組みに合っているものでなければなりません。シルクというすばらしい素材を作る産業をつぎの時代に伝えていくには、この産業に携わっているものが知恵を出し合って、人々が求めている品質のよいシルク製品を提供できるようにすると同時に、私たちの製糸業の場合について考えますと、まず工場の機械装置や繰糸技術を改善し、良い環境の中で人手を多くかけなくても良質の生糸を能率良く製造できるようにしていくことが必要ではないでしょうか。この努力は、今日、シルクの仕事に携わっている私たちの責任であり、ただ与えられた仕事だけを実行するというのではなく、生糸の生産成績を一層向上させ、職場の環境を改善するためにアイデアを出すなど積極的に行動されることを望んでやみません。


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