\ 生糸の品質 −良い生糸とは−

1.生糸の品質
 生糸は高級なシルク製品の原料であるので、繊度が表示どおりで太さのむらや節が少なく、強くて弾力があり、あとの加工の過程で糸切れや染めたときに色にむらを生じないものであるなど品質が優れていることが求められる。そのため製糸工場で作られた生糸の取引にあたっては国が定めた各種の項目について検査を受けることが義務づけられており、農林水産省の農林水産消費技術センター(横浜・神戸)のほか、県立(山梨)・財団法人生糸協会などの生糸検査所(福島・前橋・丹後)で検査が行われている。また特別に指定を受けた工場では自主検査(工場検査)が認められており、検査の方法は多少異なっているが、ここでは国の検査機関で行われている方法について述べる。
 生糸の繊度や糸むらなどの品質は工場で生糸を生産している現場では分からないことが多いので、生糸検査の結果は目標どおりの生糸の生産を続け、あるいは品質を一層改善するために参考となる重要な資料であり、一方、生糸を使う織物業者などの側でも目的とする製品に適する生糸の選択、製品設計の基礎資料となるものであるので、製糸にたずさわるものとして生糸品質と検査方法は良く理解しておくことが望ましい。

2.生糸品質の検査
 国が定めている生糸検査には品位検査と正量検査とがある。品位検査では総荷整理検査と料糸検査の結果によって品質を表す格付けを行い、正量検査では生糸の水分率を測定して正量を表示している。
 (1) 品位検査
 @ 総荷整理検査

 荷口の全体の生糸を検査して荷揃いの状態と整理欠点の有無とその程度を検査してその成績を、良、やや劣、劣で表している。
 A 料糸検査
 検査荷口の生糸の中からサンプル(25綛)をとって再繰切断、繊度、糸むら、節、強力および伸度の5項目について検査を行っている。
  ア 再繰切断検査
   表から10綛、裏から10綛について一定の巻取速度と再繰時間により繰り取って途中で生じた総切断回数で表す。あとの工程での作業能率や製品品質に影響するので切断回数は少ないほうが良い。
  イ 繊度検査
   400回繊度糸(450m)200本をとって1本1本の繊度をはかり、平均繊度と繊度偏差、繊度最大偏差を算出する。
   平均繊度検査:全繊度糸の繊度の平均値で表す。この値は目的とした繊度(これをという。例えば27デニールを目標として繰糸した生糸は27中)と合致していることが望ましいことはいうまでもない。
   繊度偏差検査:繊度糸1本1本の値の標準偏差で表す。比較的大きな範囲の生糸繊度のバラツキを表すもので、偏差の値が大きい生糸は製品に経(たて)じまや織段(おりだん。よこ糸の大さ太さむらなどによってできる欠点)を作る。
   繊度最大偏差検査:生糸の中の飛び繊度の有無またはその程度を示すもので、全繊度糸の中で最も太いもの4本、細いもの4本のそれぞれの平均値を求め、平均繊度との開きの大きいほうの値で表す。繊度偏差と同様に値が大きいものは製品にむらを作る。
  ウ 糸むら検査
   セリプレーン板と呼ばれる黒板に生糸を一定の間隔、一定の長さで10区画に巻きつけ、これに一定の方向から光をあて標準写真と対比しながら、生糸の太さのむらの有無とその程度を検査する(セリプレーン板に巻いたものをパネルという)。
   生糸が太い部分は白い縦のしま、細い部分は黒っぽい縦のしまになって見えるので、そのようなしまの濃淡の程度の小さいものを糸むら一類、大きいものを三類、その中間を二類とし、100パネルを検査して二類と三類に相当するしまの出現数を数えて糸むら成績とする。標準偏差が比較的長い範囲にわたる繊度のむらを表すのに対し、この検査は短い長さのむらの有無を表わしている。
  エ 節検査
  糸むら検査と同じパネルについて大中節標準写真と対比しながら節の種類と数を数え、特大節1個について1点、大節1個について0.4点、中節1個につして0.1点の失点をづける。また、小節標準写真と対比して小節の失点をつけ大中節の失点に加えて総失点を求め、100点から総失点を差し引いた値を節点としている。節は織物等の表面に現れて欠点となることが多いので節点は高いほうが良いことはいうまでもない。
  参考のため、以下に主な節の形と大きさについて簡単に述べ、大中節の形態の写真を図・21に示す。


図・21 大中節の形態 (片倉工業梶F蚕糸読本)

特大節
 大節の最小限度の10倍以上の長さまたは大きさのもの。
大節
 大ズル節:生糸が著しく太くなっていてその長さが7mm以上のもの、あるいは短くても大きな塊となっているもの。
 もつれ節:生糸に繭糸または生糸がもつれついて大きな塊状となっているもの。
 よりつけ節:繰糸時の繭糸の撚りつけまたは束付けによって生糸が急に太くなっているもの。
 大つなぎ節:つないだ生糸の切れ端の長さが10mm以上のもの、またはそれより短くてもつなぎ方が不良のもの。
 大びり節:生糸を構成する繭糸がらせん状でその形が大きいもの。
中節
 小ズル節:生糸が著しく大くなっていて長さが2mm以上7mm未満のもの。あるいはそれ以下の長さであっても塊状になっているもの。
 中つなぎ節:生糸をつないだ切れ端の長さが3mm以上10mm未満のもの、またはそれより短くてもつなぎ方が不良のもの。
 大わ・さけ節:生糸から繭糸の一部が離れて環状または枝状になっているもので、長さが10mm以上のもの。
 中びり節:生糸を構成する繭糸がらせん状でその形がやや大きいもの。
小節
   わ節:生糸から繭糸の一部が離れて環状になっているもので、長さが10mm未満のもの。
   けば節:生糸から繭糸の一部が離れて枝状になっているもので、長さが10mm未満のもの。
   こけ節:長さ2mm未満の生糸がわずかに太くなっているもの、あるいはごく小さな塊となっているもの。
   小ぬか節:生糸に小ぬかをつけたような外観をしているもの。
   小つなぎ節:生糸をつないだ切れ端の長さが3mm未満のもの。
   小びり節:生糸を構成する繭糸がらせん状でその形が小さいもの。

  オ 強力および伸度検査
   10綛から10試料をとり、セリグラフを使って切断するまで引っ張ったときの強力と伸度とを検査する。強力は1デニールあたりのg数、伸度は生糸の伸長割合%で表す。強力および伸度は大きいほうが好ましいことはいうまでもない。
 B 格付け
 以上に述べた検査の結果をもとに表・4の格付表と対比して検査した生糸品位の格付けを行う。
  ア まず、生糸格付表の中で、繊度偏差、糸むら二類および節の検査成績が該当するそれぞれの格のうち、最下位の格をその荷口の格とする。
  イ 繊度最大偏差、糸むら三類、再繰切断、強力および伸度の成績が、アで定めた格の属する階級より下位にある場合には、その差だけ格下げする。
  ウ 総荷検査の結果が「やや劣」の場合はイで決定された格よりさらに1格下の格を荷口の格とする。
  エ 総荷整理検査の結果が「劣」の場合と再繰切断が規定の回数をこえたときはD格とする。
 なお、一般に繊度偏差、糸むら二類および節を主要項目、その他を補助項目といい、製糸工場ではとくに主要項目の成績の向上に注意をはらっている。

 (2) 正量検査
 生糸に含まれる水分は生糸が作られるときの条件や生糸の重量をはかったときの気象条件などによって変化する。そのため生糸の取引にあたっては国が定めた一定の水分率(これを公定水分率という。生糸の場合は11%)を含んだ重量(正量)によることが必要である。そのため生糸検査ではサンプルの8綛の生糸を乾燥して無水量を求め、次式によって生糸の水分率を算出して荷口生糸の無水量を推定し、その重量の11/100を加算したものを正量として取引の重量がきめられることになっている。
            水分率%=(原量g−無水量g)/原量g×100


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