X.繰糸の基本技術

 自動繰糸機を用いて繰糸を行うときの基本技術について解説します。これは繰糸工程の中で行う大切な幾つかの作業について、すばやく、無駄なく、確実で、しかも誰が行っても同じ結果が得られるように、動作の順序−これをステップといいます−を永い経験に基づいて標準化し実施されてきたものです。よい生糸を安定して作れるように繰り返して練習し、無意識のうちに基本どおりに動作できるようにしたいものです。なお、標準作業表は渡辺敏彦氏の「繰糸基本技術分解シート」、日本シルク鰍フ「製糸のあらましと繰糸の基本技術」、当協会の「はじめてシルクを作る人のほん」その他を参考にさせて頂いて作りました。

1.繰糸の基本作業
 自動繰糸機の糸道作りの順に従って幾つかの大切な作業について述べます。

(1)基本の構え
 [作業の内容と狙い]
 繰糸を行うには繰糸機に向かって立ったり、かがんだり、横に移動したり様々な姿勢を取りますが、最も基本的な姿勢は繰糸機に直面して作業するときのものです。作業にすばやく取りかかれるようにするだけでなく、身体を疲れさせないためにも無理のない正しい姿勢を取ることが大切です。

(2)接緒器通し
 [作業の内容と狙い]
 接緒器は繰糸中の生糸が細くなり、新しい繭をつぎ足すことが必要になったときにその繭の糸口を繰られている繭糸にからみつかせて接緒するためのものです。そのため新たに粒付けを作るときや糸故障で無くなった粒付けを作り直すときには接緒器に粒付け繭の糸を通しておくことが必要で、通糸針を使って接緒器の通糸管に糸を通します。

 [標準作業表]

作業名 ステップ 作業手順 要点(注意事項)
 接

 緒

 器

 通

 し


約(15秒)
1.通糸管に通糸針を差し込む 右手1・2指で通糸針をつまんで通糸管にさし込む 針の先端が通糸管の下に突き抜けていることを確認する
2.粒付けを作る 給繭器から両手で必要数の正緒繭をすくって繰解部に移し、左手1・2指で糸口を針の先端に巻き付ける
接緒器回転中は糸口をプロペラの羽根に接触させて巻き付ける
 
3.通糸針を引き抜く 右手1・2指で抜く 針から糸口が抜けないように静かに
4.糸口を持つ 左手1・2指で糸口を針から外して持つ

(3)集結器通し
 [作業の内容と狙い]
 接緒器を通過してきた繭糸は集緒器の細い穴を通して1本にまとめます。この集緒器には繭糸が塊の状態で出てきたときにそれを感知して繰糸を止める働きも持っており、目的の繊度に合致した孔の集緒器を使うことが必要です。集緒器には中央に細い穴をあけてある磁器製のボタン型と狭い隙間を設けたスリット型とがありますが、ボタン型が多く使われていますのでこの集緒器を使う場合について述べます。

 [標準作業表]

作業名 ス テ ッ プ 作 集 手 順 要点(注意事項)











(約7秒)
1.集緒器を持つ 集緒器はさみから集緒器を左手1・2指でつまんで外す
2.集緒器の穴を調べる 左手2・3指で集緒器をはさみ、繰解部の水をすくい上げて1指の腰でくぼみを押して水の出具合を見る 水が出ないもの、細く斜めに出るもの、2つに分かれて出るものなどは別の良いものと交換する
3.糸端の先端を2つ折りにしてよる 糸端の先端を揃えて右手1・2指で持ち、左手を添えて2つに折り、右手1・2指の腹で強くよって左手をはなす 先端約10cmを揃えて折り、左手1・2指に持ちかえて先端約1cmを右手で細く硬く真っ直ぐによる
4.糸を通す 左手1・2指で集緒器を待ち、ふくらんでいる側から穴に糸の先端を通す 両肘をしめて息を止め、穴を見て糸の先端1〜2mmを通す
5.糸端を出す 集緒器を右手1・2の指に持ち変え、左手2指の腹で集緒器のくぼみをなでるようにして糸を引き出して右手に持ち変える 集緒器から糸が抜けないように注意しながら持ち変える
6.集緒器を戻す 左手で集緒器を持ち、集緒器はさみにはさむ 糸端は右手に持ったまま

(4)より掛け
 [作業の内容と狙い]
 集緒器で1本にまとめられた繭糸をさらに良く接着させるためと、繭糸に付いて来た水を飛散させるために糸を枠に巻き取る前により掛けを行います。このよりは鼓車を使って糸をループ状に走らせ、2本の糸が重なったところで数10回より合わせるもので繰糸だけで使われている独特の方法です。このよりはよりの手前から掛かり始め、よりが過ぎると戻ってしまう仮よりですが、よりの回数が少ないと繭糸の接着と水分の飛散が不十分となりますので、一定の十分な長さのよりを掛けることが必要です。

 [標準作業表]

作業名 ス テ ッ プ 作 業 手 順 要点(注意事項)









(約10秒)
1.右手に糸を持ち第1・2鼓車に掛ける 右手1・2で糸端を持ち3指を添えて引上げながら、左手2〜5指で支え、第1・2鼓車に掛ける 第1鼓車は手前から、第2鼓車は奥側から掛ける
2.糸の先端を切る 糸の先端を左手1指の爪の生えぎわの向う側から手前にかけ、3〜5指で握り5指の腹で切る 第2鼓車上約5cm
3.よりを掛ける 糸の先端を右手1・2指に持ち変え、下から上がってくる糸に沿わせて引き上げて合わせ、左手1・2指で左へよりながら3指の背でなで付ける。
糸を右手首と左手1指の腹で軽く抑え、右手を軽く引いてよりを与える
よりの長さが10cm程度になるまで2〜3回よる。
4.糸を引き上げて第3・4鼓車に掛ける 右手1・2指でよりの上端から糸の先端をつまみ出して引き上げ、断続鼓車、繊度感知器を経て第3・4鼓車に掛ける 鼓車外れがないこと、繊度感知器に糸が正しく入ることを確認

(5)あやかぎ通し
 [作業の内容と狙い]
 糸道を経て繰り上がってくる生糸にはかなりの水分が残っており、同じところに重ねて巻き上げると糸が接着して離れにくくなります。この接着を防ぐためと枠にある幅を持たせて整然と巻き取るために、糸を左右に振ることをあや振り、または絡交(らっこう)といいます。あや振りでは糸を強制的に激しく振りますので糸があや振りの溝から外れることのないように必ずあやかぎ(リング)の中を通してから糸を小枠に導きます。

[標準作業表]

作業名 ス テ ッ プ 作 業 手 順 要点(注意事項)






(約1.5秒)
1.糸の先端を持つ 左手の1・2指で先端を持って引き上げる  
2.糸を通す 左手3・4・5指で糸を握り、1・2指で先端をあやかぎの下から右側に通し、右手1・2指で引き出す 糸をたるませないように

2.糸故障修理の基本作業
  繰糸中の繭が接緒器に飛び付いたり、集緒器に節が詰まるなど糸道にトラブルが生じることを糸故障といいます。自動繰糸機では糸故障が発生すると繰糸は自動的に停止する仕組みになっていますが、自動停止機構が作動しなかった場合や修理が遅れた場合には糸が切断して糸道が消失してしまったり、粒付け繭が流失してしまうなどの大故障に発展することがありますので、糸道は常に完全な状態を保つように整備し、糸故障が発生した場合にはすばやく修理することが大切です。糸故障には飛び付き、節詰まり、よりもつれ、引き糸、鼓車外れなどのほかにも種々ありますが、ここでは主な修理作業の基本動作について解説します。

(1)集緒器詰まり修理(節取り)
 [作業の内容と狙い]
 繰糸中の薄皮繭(ビス)が接緒器を通過してきたり、繭から大きな節が上がってきたりすると、それらは集緒器に詰まって繰糸は停止します。集緒器に繭や節が詰まることを集緒器詰まり、とくに節やセリシンの塊などが詰まることを節詰まりといい、それらが発生した場合には速やかに詰まっているもの取り除きます。その際、簡単に離れるものは指先でつまんで取り除きます(つまみ取り)が、取り難いものは節の前後の糸を引き出し、結んでから節の部分を切り取りますので、ここではその手順を述べます。

 [標準作業表]

作業名 ス テ ッ プ 作 業 手 順 要点(注意事項)









(約4秒)
1.節を引き出す 左手の手の平で枠つばをなでて糸を戻しながら、右手2指を集緒器下の節の部分に掛けて約20cm引き出す 糸をたるませない
2.糸を結ぶ 節の部分を先端に糸を引き揃えて糸結びをし節を切取り糸を左手に持つ  (「糸結び」の標準作業表を参照)
3.糸を戻して枠を回す 右手の2・3・4指で第4鼓車下の糸を引き出しながら左手の糸を戻して放し、左手でストップレバーを降ろして右手の糸を放す 集緒器下の糸を緊張させたまま

糸道の点検

(2)接緒器下故障修理T(結び取り)
 [作業の内容と狙い]
 繰糸中の薄皮繭や未正緒繭が飛び上がって接緒器の下に詰まることを飛び付きといいます。飛び付きが発生したときは節ができて生糸の品質を低下させますし、小枠停止装置が作動しない場合には大きな故障になってしまいますので、速やかに飛び付き繭を取り除きます。その場合、簡単なものは指でつまんで取り除くこと(つまみ取り)ができますが、繭が糸の中に食い込んだり節がでているものは、その部分を切り取って前後の糸を結び元の状態に戻します。糸故障の状況によってはここでは糸結びをせず、前後の糸をより合わせて接緒器の上に上げてから糸結びをする方法(結び取り法)がとられますが、それは次項で取り上げます。

 [標準作業表]

作業名 ス テ ッ プ 作 業 手 順 要点(注意事項)











(約4秒)
1.繭(ビス)をとる 右手で枠を戻し、左手の1・2指で接緒器下の繭が付いている部分をつまんで引き出し、右手の1・2指で繭をつまみ取る 軽く
静かに
2.糸を結ぶ 繭のあった部分を先端に糸を20mm引き揃えて糸を結び、結んだ糸を左手に持つ (「糸結び」の標準作業表を参照)
3.糸を戻して枠を回す 右手の2・3・4指で第4鼓車下の糸条を引出しながら左手の接緒器下の糸を戻し、左手でストップレバーを降ろして糸を放す 接緒器下の糸を緊張させたまま
第3鼓車下の糸を緊張させたまま
糸道を点検

(3)接緒器下故障修理U(より付け)
 [作業の内容と狙い]
 繰糸中に飛び付きなどで接緒器下の糸故障が発生したときには速やかに飛び付き繭など故障の原因となっているものを取り除きます。この修理のために糸を切ってしまった場合には直ちに糸をつなぎ繰糸を再開することが必要です。その際、糸故障の状況に応じて、接緒器の下にたれ下がっている糸に粒付け繭の糸口をより付けて接緒器上に引上げ、そこで糸結びをしてからより付けた部分を除くより付け法(総より付けともいいます)が使われます。
 なお、このより付け法は集緒器下糸故障修理のときにも用いられ、切った糸をより付けて集緒器を通してから糸結びをすることがあります。

 [標準作業表]

作業名 ス テ ッ プ 作 業 手 順 要点(注意事項)








U
1.繭(ビス)をとる 左手で枠を戻し、右手の1・2指で接緒器下の繭が付いている部分をつまんで引き出し、左手の1・2指で繭・節をつまみ取る 軽く
静かに
節が残らなかった場合はそのまま繰糸を再開する
2.上下の糸を合わせてより合わせる 繭・節が取れない場合はさらに約20cm引き出し、糸を左手2指のくぼみにはさんで右手1・2指で糸を切り、繭・節を取り除く
 右手1・2指で糸の先端を持ったまま左手1・2指の腹で糸をより、右手の糸の先端を下に降ろし二重にしてよる
 
3.接緒器上の糸を引き出して結ぶ 右手2指で接緒器と集緒器の間の糸を引き出して結ぶ (次頁の「糸結び」の項を参照)
4.小枠を廻す 左手でストップレバーを下ろすと同時に右手の糸を放す 糸は緊張したまま

(4)よりもつれ修理
 [作業の内容と狙い]
 糸道を走っている糸から一部の繭糸が離れてケンネルのよりの部分でからまったり、節がよりに巻き込まれてもつれたりして繰糸が停止してしまうことがあり、この状態をよりもつれと呼びます。よりの部分に異常が発生するとよりが上の方に上がってケンネルの糸の角度が変化しますので、このような状態に気付いたときはすばやく修理して正常に戻すことが必要です。

 [標準作業表]

作業名 ス テ ッ プ 作 業 手 順 要点(注意事項)














(約13秒)
1.よりの上の糸を切る 左手の1・2指でもつれた部分の下の糸条をつまみ、3・4指で糸条を支え、右手の1・2指でよりの上手前の糸を切る  
2.糸条を引き出し結ぶ 右手の1・2指でもつれた部分の糸条を上下にすり、切れ端をつまんでもつれた部分が手前にくるまで引き出し、糸結びをする
 (ゆるんだ方の糸条を切り、その切れ端をつまみ、節の部分が手前にくるまで引き出して糸結びする)
糸結びは「糸結び」の標準作業表を参照
3.枠を回わす 右手の2・3・4指で第4鼓車下の糸条を引き出し、左手でストップレバーを降ろしながら左手の糸条を放す 糸道の点検
4.よりもつれを整理する 左手の2・3・4指であやかぎと第4鼓車と中央部の糸条を持ち、右手の2 ・ 3指で集緒器上の糸条を引き出し、左手の糸条を引くと同時に右手の糸条を放す 糸条をゆるめない。
 つまみながら、なくなるまで(1〜2回)

(5)求 緒
 [作業の内容と狙い]
 大きな糸故障が起きたとき、繰糸中の生糸が切断してその切れ端が小枠に巻き込まれてしまうことがあります。その場合には下から上がってくる生糸の先端とを結ぶため小枠に巻かれた生糸の中から生糸の切れ端(糸口)を探し出さなければなりません。小枠から生糸の切れ端を探し出すことを求緒といいます。切れ端は小枠の表面に浮いているのが普通で、生糸の層の中に食い込んでいて簡単には探し出せない場合もありますが、求緒はなるべくすばやく、小枠の生糸を無駄(糸屑)にしたり傷をつけたりしないように作業することが大切です。

 [標準作業表]

作業名 ス テ ッ プ 作 業 手 順 要点(注意事項)







T 糸条の切れ端がある場合
1 切れ端を持つ
2 小枠を逆回転しながら糸条を引き出す
右手1・2指で持つ
 左手で小枠のつばをなでて逆回転する
糸結びに必要な糸が出るまで
U 切れ端が見えない場合
1 小枠を逆回転する
2 小枠表面をなでる
3 糸条の先端を持って引き出す
左手で小枠のつばをなでて逆回転する
右手2〜5指で下からなで上げる
左手で小枠のつばをなでて逆回転する
Tの動作と同時に切れ端が出るまで

 (Tの2と同様)
V Uで切れ端が出ない場合
1 小枠糸条の表面を濡らす
濡らした右手の手の平で枠表面を叩く  
2 小枠の最表面の糸条をつまむ 右手2指の爪を小枠表面の糸に浅く掛けてつまみ上げ、隙間に3指を入れてつまんだ糸が1本になるまで小枠を逆回転 最表面の糸をつまむように注意
つまんだ糸の本数が多過ぎたときは糸切りかまを使う
3.糸を引き出す (Uの3と同様)  

(6)糸結び
 [作業の内容と狙い]
 糸故障などで繰糸中の糸条が切れたときには、上の糸条と下の糸条とを合わせて結びます。糸切れは糸道の随所で発生しますが、糸結びを行うのは主としてあやかぎの上か集緒器の下です。結び方にはいろいろな方法がありますが、生糸は滑りやすいので簡単で解け難い一束結びを行います。
 結んだ糸条の切れ端が短過ぎると解けてきますし、長過ぎると生糸の大中節に数えられますので切れ端の長さは1〜2mmの範囲にすることが必要です。

 [標準作業表]

作業名 ス テ ッ プ 作 業 手 順 要点(注意事項)



(約5秒)
1 上下の糸条を合わせて持つ あやかぎ上または集緒器の下で右手1・2指で生糸を2本合わせて持つ 上と下から糸条を引き揃え、約15cm手前に引き出す
2 糸条を結ぶ @左手5指を2本の糸条の間に入れ、その上を3・4指で握る 糸条の先端を右手1・2指で持ったまま
A左手1指の爪の生えぎわに糸条を手前から掛け、できた輪の中に2指を外側から入れて起こす 糸条の先端は下に下げ緊張したまま
B右手の糸条を2指の腹側に掛け、2指の先端を輪の中に入れて起こす  
C交差点を1指と3指で抑えて残りの糸条を3指の横腹で切り2指を起こす  
D右手1・2指で糸条の先端を持ち、左手1指を輪から抜きな がら引っ張って結び目を作る  
3 糸端を切る E結び目の内側に左手2指の横先端をはさみ、結び目の先で糸条を切る 糸切り指輪を使い切り端の長さは2mm以内に

3.繰糸機の運転開始・停止、枠おろしの基本作業
 自動繰糸機では同時に数100緒の繰糸が行われます。そのため運転開始と停止、枠おろし(小枠交換)等に当たっては様々な準備作業と綿密な注意とが必要ですが、そのうち、繰糸作業者が担当する作業の基本動作はつぎのとおりです。

(1) 回転準備と回転付け
 [作業の内容と狙い]
 繰糸が停止していると糸条はケンネル装置のヨリ、鼓車、接緒器等で接着しており、突然繰糸を開始すると糸条が切断して糸道がなくなってしまいます。そのため、回転開始に当たっては接着個所を濡らして糸条が走行できることを確認したうえですばやく小枠の回転付けを行います。なお、この作業は繰糸機の1台 (20緒)ごとに行い隣の台に移動します。

 [標準作業表]

作業名 ス テ ッ プ 作 業 手 順 要点(注意事項)



1 接緒器とヨリに水を掛ける 注水コックを開く 全緒にむらなく
2 給繭機に注水す る 給繭機注水バルブを開く  
3 小枠を手で廻す 右手で枠つばをなで上げるようにして小枠を順次半回転させる 小枠を半回転させながら糸道と粒付けを点検する






1 小枠を回転する 小枠クラッチを入れる
2 接緒器の回転を付ける 接緒器のクラッチを人れて接緒器を回転する 半クラッチにならないように注意
3 繊度感知器の検索装置を動かす 繊度感知器の探りクラッチを入れる  
4 繰解部シヤッターを上げる (自動の場合は不要)  
5 糸道を点検する 繊度感知器、鼓車外れの有無と粒付け等を点検する 異常粒付けにも注意
6 接緒器の注水を止める 注水バルブを閉じる  

(2)回転停止と後始末
 [作業の内容と狙い]
 工場の終業時など繰糸を停止する時には、糸道を損傷しないよう、また、つぎの繰糸開始時に支障を生じることのないように注意しながら定められた手順に従って操作するとともに、糸道周辺の清掃・整備を行います。

 [標準作業表]

作業名 ス テ ッ プ 作 業 手 順 要点(注意事項)














1 繰解部シャッターを降ろす (自動の場合は不要)  
2 繊度感知検索装置の探りを止める 探りクラッチを切る  
3 接緒器回転を止める 接緒器のクラッチを切る 確実に
4 小枠回転を止める 小枠クラッチを押して小枠を上げる 強く押して確実に
5 ヨリをゆるめる ヨリの上をつまみ、わずかに引き上げる  
6 感知器のゲージに糸が人っているときは外に出す 繊度感知器の下に指をはさみ糸条を手前に引き出す 静かに
7 接緒桿が降りているときは戻す ストップレバーを上げ、制限棒を探り金具から外す  
8 接緒器の糸屑を取る 糸切りかまを使って接緒器にからみついている糸を取る 糸屑は完全に除く
9 周辺を整備する 落繭、蛹、糸屑等を片付ける 周辺を整頓・清掃する

(3) 枠おろし(小枠交換)
 [作業の内容と狙い]
 所定量の生糸を巻き終えた小枠は繰糸機からおろし、空の小枠と交換します。
その際、あとの揚返工程で糸口が見つかり易いようにしておくとともに、つぎの
繰糸が順調に再開できるように糸端などを始末しておくことが大切です。この作
業は別の人が2人1組となっ.で行うのが普通です。

 [標準作業表]

作業名 ス テ ッ プ 作 業 手 順 要点(注意事項)












1 探りクラッチを切る 右側のものが繊度感知装置の探りクラッチを切る 確実に
2 小枠回転を止める 2人が左右それぞれのハンドルを押し、小枠回転を止める  
3 糸条を切る 右側のものは右側10緒、左側のものは左側10緒の糸条をあやかぎ真上でまとめて切り、それぞれの先端をまとめておく  
4 小枠をおろす 2人が同時に小枠をおろし、運搬車に載せる 2人が呼吸を合わせて、静かに
5 空枠を掛ける 運搬車より空枠を取り出して掛ける 2人が呼吸を合わせて
6 糸条を小枠に掛ける 左右の2人が10緒ずつまとめられた糸口を持って左右のほぼ中央の小枠に掛ける  
7 回転を付ける 2人が左右それぞれのハンドルを引いて、小枠の回転を付ける 糸道を見ながら静かに
8 探りクラッチを 入れる 右側のものが人れる  
9 糸道と粒付けを 点検 下の粒付けから上の絡交まで糸道を点検する 感知器外れと鼓車外れに注意

(4)断 緒
 [作業の内容と狙い]
 繰糸が終了したとき、繰糸緒数を減らすときなどに繰解部の粒付け繭の糸を接緒器下で切って給繭機に戻さなければならないことがあり、このことを断緒といいます。断緒を行うときには、繰糸を再開するときのために接緒器下の糸の切れ端が残っているように糸口をよって真っ直ぐ垂らしておくこと、また、断緒した繭の糸口をなくさないように給繭機に戻すことなどが望まれます。

 [標準作業表]

作業名 ス テ ッ プ 作 業 手 順 要点(注意事項)









1 あやかぎ上の糸条を切る 小枠から糸条を戻して切り、切れ端をあやかぎから垂らす  
2 粒付け繭の糸を持つ 右手2〜5指で粒付け繭の糸を握りわずかに手前に引く 接緒器に触らないように注意しながら
3 糸をつまみ持つ 接緒器下約10cmの糸条を左手1 ・2指でまとめてつまむ  
4 切る 左手でつまんだ糸の上を右手1・2指でつまんで切ると同時にその先端を軽くよって真っ直ぐに垂らす 右手1・2指を濡らしてよる
5 繭を移す 左手1・2指で糸をつまんだまま右手で繭をすくい取り給繭機へ移す  
6 糸を掛ける 左手1・2指でつまんだ糸を緒糸巻き棒に巻き付ける  

4.巡回時の基本作業
 自動繰糸機では給繭・接緒や落繭の捕集・分離等の作業はすべて機械化されており繰糸は自動的に進行しますが、原料の繭がカイコという昆虫の作ったもので1つ1つの形や性質が違うために繰糸中に接緒器が飛び付いたり、大きな節が出て集緒器に詰まるなどの糸故障を起こすほか、繭がだんご状になって順調に流れなくなるなど思いがけないトラブルが発生することかあります。そのため、繰糸作業者は常に自動繰糸機の周りを巡回していて、トラブルが発生するとすばやく故障を修理したり、繭の流れを手直しするなどの措置をとることが必要です。
 なお、標準作業表の中で、右巡視とは給繭機進行方向、左巡視とは給繭機進行逆方向に移勤しながら巡視することをいいます。

(1) 巡視作業時の基本姿勢

巡回方向 動   作 作 業 姿 勢
右巡視 姿勢 上体を伸ばす。
体の重心を安定させ、肩の力を抜く
構えと移動 足の位置…右足:繰解部に対し45°
        左足:繰解部に対し並行
上体………繰解部に対し45°ほど開く
        握りこぶし1つ分手すりより離れる
手…………右手:腰に
        左手:まっすぐ下に
目…………粒付け:3〜4緒先を見る
        糸道:2〜3緒先を見る
左巡視 姿勢 上体を伸ばす
体の重心を安定させ、肩の力を抜く
構えと移動 足の位置…右足:繰解部に対し平行
        左足:繰解部に対し70°
上体………繰解部に対し70°ほど開く
        20cmほど手すりより離れる
手…………右手:まっすぐ下に
        左手:腰に
目…………10緒先の回転状況を見る

(2)巡視時の作業範囲・標準作業段取り

工  程 巡視方向 作  業 標準作業手順と要領
第1工程 右 巡 視
 (給繭機
 進行方向)
粒付け管理と糸故障修理 右足よりふみ出す
異常粒付けの早期発見と補正
 (極端な異常粒付けを発見した場合 にはその小枠に目印を付ける)
糸故障修理(小故障から)
落繭分離機周辺の点検
  (落繭詰まりに注意)
第2工程 左 巡 視
(給繭機進行
  逆方向)
給繭機整理と糸故障修理 左足よりふみ出す
給繭機内持ち繭量の補正
給繭機内の口なし繭、未正緒繭、汚染繭等不備繭の除去
糸故障修理(大故障は分割して修理)
第3工程 右 巡 視 糸道等の点検と糸故障修理 感知器の汚れ、糸道の点検
糸故障修理(小故障から)
第4工程 左 巡 視 糸故障修理 つなぎ節、よりの長さなどに注意
 以後、第1〜4工程を1単位として反復して行う。作業中、第1工程と第3工程、第2工程と第4工程とを混同しないよう注意する

その他の作業
 @ 接緒器の糸屑取りは糸故障が少なく作業に余裕があるとき、または繰糸機の運転停止後に行う。
   運転中の場合は接緒器に15〜20秒散水し、切断防止感知レバーを上げて除去する。
 A 繰解部周辺の糸屑とこぼれ繭を始末する。
 B 繰糸機の運転停止後には接緒器取付け台(ビーム)と第2鼓車をブラシで洗浄する。この部分はセリシンが飛散しており、乾くと取れにくくなるので濡れているうちに始末する。

5.その他の管理作業
 繰糸作業者の仕事の中で最も大切なことは繊度が目標通りの太さでむらと節の少ない生糸を作ることですが、それを実行するには、まず、繊度感知が正確に行われ接緒がすばやく確実に行われることが必要です。そのため、ここでは給繭機と繊度感知器が不備な場合の影響について述べ、繰糸工程管理の目安とします。

(1) 給繭機管理
 [作業の内容と狙い]
 給繭繊は繰解部の周辺を巡回していて接緒要求の出ている緒にすばやく、確実に接緒できるように常に完全に整備されていなければなりません。整備が不十分の場合は空接緒や多粒接緒によって生糸の繊度むらを作るだけでなく、引き糸によって大故障を引き起こす原因となりますので、下表を参考にして巡視作業(左巡視)の中で給繭機の内容と動きを調整するとともに、接緒を起動させる接緒桿の動きが不調の場合は整備します。

不   備   事   項 結果または影響
○給繭機の送繭片が動かないとき。
 座板と送繭片とに薄皮等がかみあっている
 緒糸等が巻き付いている。
○接緒桿と駆動レバーとのタイミングが不良。
○振動底板の作動不良。
○給繭器内繭量が少な過ぎる、または多過ぎるときは  繭が動かず、送繭部の繭が空となる。


空接緒または繭取り出し不良
  ⇒細むら
○給繭機内の繭が多過ぎるとき。
○給繭機内の水位が高過ぎるとき。
○側板・2粒給繭防止板の取付け位置不良のとき。
多粒接緒(2粒以上)
  ⇒太むら
○接緒桿が戻らないとき。
  接緒桿の取り付け位置が不良、または曲がり。
○送繭片が送繭片カバーまたは底仮に触っているとき。

引き糸
  ⇒糸故障

その他の管理事項
 @ 緒がらみ軸の回転状況を点検する。
 A 汚染繭などの不良繭およびくちなし繭、未正緒繭を除去する。

(2) 繊度感知器管理
 [作業の内容と狙い]
 現在自動繰糸機で広く用いられている繊度感知器は、繰られている生糸が所定の繊度より太いかどうかを調べるもので、生糸が細くなったことを感知したときに接緒の指示を出すように定繊度感知装置の中に組み込まれています。この感知器はスリットゲージ型と呼ばれるもので、生糸を2枚のガラス板の狭い隙間を出入りさせる仕組みになっておりますので、感知器の内側が汚れたり、出入りのバランスが乱れたりして繊度感知が正確に行われなくなることがあります。繊度感知が不良の場合には粒付けが乱れますので、巡視中に粒付けを見るとともに生糸が繊度感知器に正しく出入りしているかどうかを監視します。

異   常   原   因 粒付けへの影響
増 粒 減 粒
1.感知器が不良のとき(破損その他)
2.断続鼓車、感知器、第3鼓車が垂直面に並んでいないとき
3.鼓車外れで糸条が感知器に入っていない
4.汚れで感知器の溝が詰まっているとき
5.探り金具の位置が不良のとき
 1)探り金具が入り過ぎている状態
 2)探り金具が出過ぎている状態
 3)探り金具が第〕L停止箇所で停止しない
 4)探り金具が感知器ケースに触っている
6.よりがなくなっているとき
7.連結桿が長過ぎるとき
8.連結桿が短過ぎるとき
9.感知器が感知器ケースに完全に入っていないとき
10.鼓車が廻っていないとき


























(3) 繊度感知器洗浄
 [作業の内容と狙い]
 繊度感知器には繰糸中の濡れた生糸をひんぱんに出入りさせますので、セリシンその他の異物で汚れたり、溝が詰まったりして感知が正確にできなくなることがあります。感知が不良となった繊度感知器は直ちに正常なものと交換しますが、汚損していないものでも定期的に洗浄して清浄に保つことが必要です。洗浄は別の作業者が行うのが普通ですが、一部は繰糸作業者が行うこともありますので作業手順を知っておくことが望まれます。

項  目 作        業 要       点
作業準備 1.洗浄用台車を用意する
2.洗浄液を点検する
3.清浄用ブラシを用意する
4.洗浄液と温水を用意する
5.予備感知器5個を用意する
清浄部の長さ・曲り・バリの点検


30℃程度
作業中 1.予備感知器と汚損感知器とを交換する
2.汚損感知器を洗浄液に浸す
3.溝部をブラシで洗浄する
4.汚物を清浄板で取り出す
5.感知器を水洗する
6.洗浄液・温水を交換する

7.不良感知器の取り出し・交換
落とさないように注意

ゲージガラスを傷めないように

汚物を溝の奥に押し込まない

洗浄液の汚れがひどくなったら
(洗浄感知器数800個ほどまで)
ゲージガラス破損、指示桿変形
作業終了 1.汚損感知器5個は洗浄し、予備として保存する
2.洗浄液および温水を捨てる
3.洗浄台の清掃
4.ブラシ、清浄板感知器の整理
注)感知器洗浄は汚れの度合いによるが最低3日に1度は実施する。   
  清浄板は繊度に適したものを使用し、ほかのものは絶対に使用しない。
    14〜21中には RI23210 極細用清浄板
    28〜31中には RI23170 細糸用清浄板
    42中以上には RI23180 太糸用清浄板

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