Q: 二化性のカイコを孵化をさせる方法を教えて下さい


A: 二化性カイコ卵を人工孵化させる方法としては、塩酸溶液に浸漬する方法(浸酸といいます)がよく知られています。
 まず、卵を産み付けさせる紙は、浸酸に耐えられるような厚手の丈夫な紙を使用する(産卵台紙とよばれる専用紙もある)。また、浸酸する前に産み付けた紙を2%ホルマリン液に浸漬し、自然乾燥してから浸酸に移す。これは、紙に卵を膠着させている蛋白質成分をホルマリンで変性させ、浸酸中に卵が紙からはがれて流失するのを防ぐためです。
浸酸には即時浸酸法(産卵から次の飼育までが短期間の場合)と冷蔵浸酸法(産卵から次の飼育までの期間が比較的長い場合)の2通りがあります。

1.採卵後、約40日以内に次の飼育を行う場合は即時浸酸法による:
(1)産卵後25℃で20時間経過させてから浸酸する(午前中に交尾させた蛾を午後に割愛して産卵させた場合、翌日の午後3時〜4時ころ。割愛とは交尾している雌雄蛾を人為的に分離すること)。浸酸条件は常温(約15℃)での比重が1.075の塩酸液を46℃に暖め、4〜6分間浸漬する(適正な浸漬時間は品種によって異なるが、普通には5分間の浸漬でよい)。
(2)加温しない場合は、常温での比重が1.11の塩酸液(温度は23〜30℃)に約60分間浸漬する。
(3)即時浸酸法の場合、浸酸後、約10日経過すると孵化するが、飼育を遅らせる場合は、浸酸後25℃で20時間経過させてから5℃に冷蔵する。冷蔵期間が20日以内であれば、孵化に影響しないが、それ以上の冷蔵は孵化が低下する。

2.採卵後、1ヶ月半〜3ヶ月経過してから次の飼育を行う場合は冷蔵浸酸法による:
(1)産卵後25℃で40〜50時間経過した卵(午後に割愛して産卵させた場合、翌々日の午前中)を5℃に冷蔵する。30日以上経過してから飼育時期に合わせて適宜、冷蔵庫から出して浸酸する。浸酸は常温での比重が1.10の塩酸液を48℃に暖め、5〜8分間浸漬する。適正な浸漬時間は品種によって異なるが、普通には5、6分間の浸漬でよい。
(2)冷蔵浸酸の場合、浸酸後、約12日経過すると孵化するが、飼育を遅らせる場合は、浸酸後25℃で48時間以内に5℃に冷蔵する。冷蔵期間が10日以内であれば、孵化に影響しないが、それ以上の冷蔵は孵化が低下する。
※大ざっぱに書きましたが、浸酸前の卵の固定(ホルマリン処理)、卵の冷蔵時期と冷蔵温度、冷蔵期間の許容範囲、塩酸液の濃度、加温したときの温度、浸漬時間、これらを守れば95%程度の孵化率が得られます。


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