[TOP]
[親メール][子メール][次メール][前メール]
Subject: [silkmail:10] Re: 世界ウルルン滞在記 <Nozaki MINORU > 2001/07/12

坪内紘三さんの代理投稿です。
---------------------------------------------------------------------------
Chikayoshi Kitamura wrote:
> 昨日放送された「世界ウルルン滞在記」はタイ東北部(東部?)が舞台でした。
> その中で、黄色の(レポーターは黄金の、といってたような記憶がします)繭を
> 洗面器のようなもので煮て糸をひいている場面がありました。蚕に餌を与えてい
> る場面というのもありましたが、ちょっと色の黒い幼虫のように見えました。
>  この間から、ラオス、カンボジア、タイとそれぞれ黄金の繭のことが話題にな
> っているのですが、東南アジアの方では、黄色の繭が主流なのでしょうか?何か
> 理由があって(例えば病気に強いとか)黄色の繭を作る蚕を飼っているのでしょ
> うか? ご存じの方があれば教えてください。
>

私はJIRCASの短期出張として、タイシルクの特徴を明らかにしたいため、多化性
蚕の繭、生糸、絹織物などの調査研究を5回(1回、1ヶ月)してきましたの
で、知っている範囲でお答えいたします。
 家蚕は大きくは多化性蚕と二化性蚕に分けられます。多化性蚕は二化性蚕に比
べ高温に強いため、熱帯地方(インド、ミヤンマー、タイ、ラオス、ベトナムな
ど)で飼育されています。熱帯地方でも高地では気温が低くなるので二化性蚕が
飼育できます。一般に、500m程度以上の標高が必要といわれています。JICA
による二化性蚕の養蚕技術協力は昭和40年代から行われてきましたが、タイで
は高いと思われるチェンマイでも標高が300m程度であるため、多化性蚕の農
家は現在でも90%、あるいはそれ以上です。
1.タイでは標高の高いところが少ない.
2.多化性蚕は飼育が容易である。耐性だけでなく、二化性蚕のような孵化技術
がいらない.
3.一度にたくさん飼育しない.家の周辺の数アールの桑畑、あるいは桑の垣根
の桑葉を使い、5〜6回/年、農作業の合間に主婦が飼育し、生糸にまでする.
農閑期にはこの生糸で主婦がタイシルクを作る。得られた収入は副食や子供の教
育費に使う.
4.多化性蚕は品種によって蚕の斑紋が違うので(二化性蚕も同じ)、白く見え
る蚕から黒く見えるものまでいる.繭は一般に、黄金に近い黄色で、白は非常に少
ない。生糸は黄色であるが、精練すれば黄色はほとんど落ちてしまう.染色は合
成染料が主である.
5.絹加工は各戸で行われてきたが、最近では指導的な人を中心に4〜6人のグ
ループで精練染色制織が行われるのが見られるようになってきた.
6.最近では生糸生産が効率的なので、多化性蚕×二化性蚕の蚕の普及が進んで
いる。この場合は蚕種技術が必要で、研究所が蚕種の配布をしている.
7.タイシルクは少なくともよこ糸に二化性蚕の生糸を使わなければならない.

8.タイでは黄色にこだわりがあるようで、僧侶の衣も黄色であるように、多化性
蚕繭の黄色を取り込んだ二化性蚕の開発も行っている.タイ人は日本人より色は
派手好みである.
    素材特性研究チーム長 坪内 紘三
----------------------------------------------------------------------------