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Subject: [silkmail:31] 上毛新聞「世紀をつなぐ−繭の記憶−」(2) <Chikayoshi Kitamura > 2001/10/23

第1部「夢」−3−親子二代
 赤城の節糸を扱う繭糸商は二人だけになった。・・・・「昔は赤城の糸を商う人間が20人
の上いたいね」。石田清夫さん(80)は仕事を継いでいる長男の明雄さん(53)の方を向い
て、こう切り出した(富士見村石井)。・・・・「黒くて太いぼろ糸、なんて陰口言われた
赤城の節糸の質をだんだんによくしていったんだ。国や県の補助金があったわけじゃな
い。だれにも頼ってないよ、節糸は」・・・・三千人はいたという糸引きも今ではわずか40
人。・・・・「糸引きの人数が少なくなると、どうしてもリクエストが多くなるんだ。もう
少し太くだとか、細くしろ、節をあまり付けるなとかね。うるさい注文を聞いてくれる、
うちのおばあさんたちはみんな隠れた伝統工芸士だよ」。
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第1部「夢」−4−ニューヨークから
 繭糸業の石田明雄さん(53)(前橋市荒牧町)のもとに一通の手紙が届いた。便りは「赤
城糸をぜひ注文させていただきたいと願っていましたが、海外に住んでいるので、なかな
か連絡できませんでした」で始まる。差出人はニューヨーク市29番通りで、日本の糸で布
を織る植木多香子さん(31)(工房「八布(はぶ)」)で、「糸作りを拝見させていただけ
ないでしょうか」と結ばれていた。
植木さんは本当にやってきた。石田さんが案内したのは、おせんさん(73)(赤城村溝呂木)
の仕事場。・・・・「表情のある面白い糸を探してあちこち聞き回っていたんです」と植木さ
ん。「おせんさんの引き方が一番ゆっくり。つなぎ目が少ないんだよ」と石田さんが言葉
をはさんだ。・・・・「アメリカ人のお金持ちはインテリアの布にものすごくお金を使うんで
す。ファッションなんかと比べものになりません」。本物に対する目は肥えているのだと
いう。
 色、つや、太さ・・一本の糸にもそれぞれ表情がある。そのことに気づき、赤城の節糸に
興味を持った。6、7年前になる。京都の問屋で買い求めたが、手に入らなかった。あき
らめていた糸にようやくめぐり合える。そう思えるようになったのは人づてに石田さんを
知ってからだった。・・・・初めて見る糸引きはなにもかも想像していた通りだった。「必ず
しも一定じゃない糸の太さも私にとって全然ハンディじゃない」。植木さんはもうこの糸
でどうに織ろうかと思いをめぐらせている。
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Chikayoshi Kitamura (NIAS/MAFF) kitamura@affrc.go.jp