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Subject: [silkmail:52] ブランド(5) <KINOSHITA > 2001/11/16

日垣隆氏による「ブランドとは何か?」について。

(5)インターネットがつなぐオートクチュールな関係。

いま、IT、ITとインターネットのことが絶賛され
ていますが、その割には大したこと無いんじゃないかと
言われている昨今です。

コピーライターの糸井重里さんは、『ほぼ日刊イトイ
新聞』というホームページを開いています。
1日30万人ぐらいアクセス(正確にはページ閲覧)が
あるそうです。1日30万人の人がアクセスするというこ
とは、たいていの地方紙は20万部から50万部くらいです
から、それに匹敵するようなことを個人でやってるとい
うことになります。

その糸井さんが、『ほぼ日刊イトイ』のある読者にオリ
ジナルTシャツを作ろうと予約注文を取り、完成してから
送ったのだそうです。すると、その読者(消費者)たちか
ら、「今日着きました。ありがとうございます。感動しま
した」というようなメールが届く。
ものを作って送ったら、それに感謝の手紙がどんどん返
ってくる、なんてことは、これまでの流通ではちょっと考
えられないことでしょ。

そしてある読者は、「自分は癌爺です」と名乗ったそう
です。「ガンジー」っていうのはインドの「ガンジー」じゃ
なくて、「癌」の「爺」っていう意味なんですね。70歳位
の人で、自分は癌だって宣告されて、「もう2ヶ月もたない
だろう」って言われたと。2ヶ月で死ぬって言われたのにま
だ死なないから、お礼状が書けてうれしいみたいなことを
伝えてきた。
糸井さんもそれでビックリしちゃって、「本当ですか?
 本当に癌なんですか? 失礼ですけど」ってメールを出
したんだって。そうしたら、すぐに癌爺さんが返事をくれ
て、今度は、「あなた本当に糸井さんなんですか? あの
有名な糸井さんなんですか? ご本人なんですか?」とい
う。
そ れから、どのように癌と宣告されたか、といったコミュ
ニケーションをするようになったそうです。

そのお爺さんも『日刊親戚新聞』っていうのをやってい
た。数部程度の、ね。癌爺さんがパソコンいじりを始め
たら、娘さんが糸井さんのファンで、糸井さんのホーム
ページが面白いって教えてくれたんですね。糸井さんは
すごくこのことを面白がって、「自分の所にも『親戚新聞』
を送って下さい」って言ったら、送ってきてくれた。糸井さん
はそれがものすごく面白いから、「自『ほぼ日刊イトイ新
聞』で連載してくれないか?」ということになり、今でも連
載が続いているわけです。もうかれこれ3年生きちゃった、
ってことになるのかな。でも、まだ死んでない。

この時代、インターネットというようなメディアを通し
て何が起こっているか?
一度大量生産になってしまったにも関わらず、逆のオー
トクチュール化ともいうべき現象が生まれていると思うの
です。
    いったん全部ユニクロ化してしまった、かに見えた
けれども、1対1の双方向性の関係の中で、作る側の中
心にいる人と消費者が直で結びつけられるという可能性が
ますます出てきているということ。これからそういう流
れは、間違いなく感動を生んでゆく、あるいは新しい関係
を育んでゆく。

例えば皆さんが自分のすごく気に入ってる服を作ったとし
ます。そして、自分が年賀状を出す100人ぐらいの中で、
自分の服を「綺麗だ」、「自分も着た い」って言ってくれる人
が、2人くらいしかいないと仮定します。でも、それは100人
の内2人でしょ。もし自分がお店を持って分母として1000人
くらいお客さんが来れば、20人買ってくれるという計算にな
るんだよね。

ところが、世界中にマーケットを広げた場合、お店を持
たなくてもインターネットで「こういう服を作りました」、「これ
を可愛いと思う人は買って下さい」っていったら、分母は
55億人まで膨れ上がるわけです。

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独立行政法人 農業生物資源研究所
ゲノム研究グループ
木 下 晴 夫
E-mail:hkinoshi@affrc.go.jp
TEL:0298-38-6196