[TOP]
[親メール][子メール][次メール][前メール]
Subject: [silkmail:53] カイコと八尾 <Chikayoshi Kitamura > 2001/11/18

Silk New Waveのページでも紹介していますが、11月23日から富山県八尾町で
「2001 八尾町コミュニティセンター企画展」として標記の取り組みがなされます。
八尾町と養蚕とのつながりは古く、明治13年八尾町在住の橋爪治郎作氏が私設の
養蚕伝習所を開設したことを皮切りに、明治29年には八尾町立蚕業学校が建設さ
れ、明治41年には県立蚕業学校となります。大正5年には八尾町に原蚕種製造所
が創設され、蚕業試験場を経て富山県農業技術センター山村特産指導所と、一貫し
て富山県の蚕糸業の中心となってきた地域です。
また、八尾町は二百十日の風害を防ぎ豊穣を祈願する「おばら風の盆」でも有名な
所です。民謡「おわら風の盆」の中にも“唄の街だよ八尾の町は 唄で糸とる オ
ワラ 桑も摘む”という歌詞もでてきます。

そんなわけで、本屋さんで高橋治作『風の盆恋歌』(新潮文庫)というのを見つけ
て読んでみました。この小説は、若かったころの出逢いがありながら遂げられなか
った愛を持ち続けてきた男と女が、数十年後に因縁の八尾で燃え上がるという、ど
ちらかといえばしめっぽい不倫の物語(こういうのは余り好きなジャンルではない
のですが)なのですが、中に面白い部分がありました。

二人が白峰村を訪ねた折りに北山産業(実際の白山工房を経営しているのは西山産
業)の永吉広美という女性と二人のやりとりで、
「日本の絹糸に人気が出て、横浜から沢山の糸が輸出された時、大部分の生糸は針
金のように真直だったんです。だから針金生糸。でも、ここのは違いました」「ど
う」「玉繭といって、二匹の蚕が作る繭を使って手でよりをかけますから、天然の
カールが出るんです。それが牛首の生糸が横浜で高く買われた理由で、紬に織り上
げても独特の風合いになります」
という部分です。上州座繰りでゆっくりひいた糸には空気がある、という先の新聞
記事と共通する話で、面白いなと思いました。

-------------------------------------------------------
農業生物資源研究所 企画室長
  北村實彬 (Chikayoshi Kitamura)
    Tel(Fax): 0298-38-7410 kitamura@affrc.go.jp
-------------------------------------------------------