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Subject: [silkmail:56] ブランド(8) <KINOSHITA > 2001/11/19


日垣隆氏による「ブランドとは何か?」について。

(8)元オリンピックアスリートが、ブランドとして
「認知」された瞬間。


   イタリアで、ミッソーニっていうブランドを、
聞いたことある人はいますか?緑や赤の結構派手な
ニットを使ったブランドで、世界中に多くの愛好者が
います。 
ミッソーニっていうのは、それを作った人の名前
です。この人は、オリンピックの陸上選手で、400m
障害で銀メダルとった人です。それが、27歳の時まで
に3回目のオリンピックに出場して、入賞から洩れて
しまい、限界ということで、諦めて引退することになる。
それでどうしたか、というと、貰ったお金でミシン
を2台買うんです。30年くらい前の話です。
 27歳のスポーツ選手が、最初から独学をして37歳
くらいにかけて世界的なブランドをつくり上げていく。
それまでは編んだこともないし、ミシンの使い方もろく
に知らなかった。ずうっと陸上バカで、ニットどころか
Tシャツと短パンがあれば良かったみたいな生活から、
サラリーマンは嫌だから、自分のものは自分で縫おうと
いうことになった。それから、「私のものも作ってくだ
さい」って頼まれるようになって、世界的にたくさんの
店舗を持つようなブランドになったんです。

では、ミッソーニが、いつブランドになったのか?
ミッソーニ自身は、ミラノに第1号店を持てた時に
「デビューした」という言い方をしています。陸上をや
めて5年目くらいです。デパートの一角で売られるよう
になり、だんだん3店舗、4店舗となって、初めてミラ
ノにお店が持てた時にブランドとして成立したと、ご本
人は考えているようです。

ここで改めて「ブランドの成立」について、ミッソー
ニの定義から厳密に言えば、

@まず流通する、お金になる、
Aそれから名前が付いている、ということ。そして、
B消費者に選ばれる、認知される、ということ。

 少なくとも、
 ブランドの商品を買うということは、たまたま見てい
 てこの商品が良いから買う、ということではありません。
 ミッソーニだと思って買う、というような行為のことです。

例えば、自分もデザイナーになってみたいと思った時に、
自分の服を作る。学校やメーカー主催のファッションショー
に、何かを出す。また、兄弟姉妹や知り合いから、「あん
まりお金無いけど5000円くらいで何か作ってくれないか?」
と言われて、作る。さっき話した人たちも、みんな同じで
す。ココ・シャネルも、ティファニーやグッチも、その成
り立ちは、自分の好きなものを1つずつ作った、というの
が、全部出発点になっています。

だから、自分で布を考えて、デザインして完成させ、そ
こにタグを付けた。これが売れて、「すごく着心地が良い」
、「もう1個作って」、「何かあの子が作ったのはすごく良
いらしいよ」と認知する人が2人、3人、4人、100人って出
てきた時に、ブランドとして成立していく、ということです。

つまり、まず売る側がブランドを宣言したっていうだけ
では、まだブランドではありません。買う人たちから、まだ
見たことも無い人たちから、「あれは良い」という評価を
受けた時にブランドとして成立する、ということになりま
す。    

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独立行政法人 農業生物資源研究所
ゲノム研究グループ
木 下 晴 夫
E-mail:hkinoshi@affrc.go.jp
TEL:0298-38-6196