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Subject: [silkmail:97] Re: 国産シルクとは <Chikayoshi Kitamura > 2002/04/11

年度末の諸会議、年度初めの異動などで、書きそびれていました。

Kazuhiro Hirose さんは書きました:
>国産シルクとは何でしょう。一応我が国で織られたものと言う定義でとの事です。
>私はどんなに量が少なくても国産繭で、我が国で製糸され、我が国で織られた、編ま
>れたものと限定した方が良いと思いますが。
>
この中で、“国産繭”の生産という所が一番難しく、意識的に力を裂かないといけ
ないところではないかと思います。

3月14日付けの読売新聞に、「製糸業に廃業補助金」というちょっとショッキング
なタイトルの記事が載りました。“政府・自民党は13日、繭から生糸を製造する
「製糸業」の廃業を促すための補助金を4月から導入する方針を固めた。製糸工場
は現在7社あるが、農林水産省は「このままでは共倒れとなり、1社も残らなくな
る」と判断し、一部に廃業を促して2社程度に絞り込む狙いだ”“また、農水省は、
製糸業が養蚕農家から繭を買う価格を今年度の1キロ百九十円から来年度は百円に
引き下げる方針だ。製糸業の原料コストを抑えて、支援する狙いだ”というのが、
記事の大筋です。

こういう状況になると、養蚕農家がますます繭を作らなくなるという状況になるの
ではないかと懸念されます。

3月末に松井田町の碓氷製糸を訪問しました。茂木組合長に中を案内してもらい
ながらいろいろ説明してもらいました。コストを切り下げ、ニーズに応える多様な
糸を作るための様々な工夫をあちらこちらにしておられるのがよく分かりました。
茂木さんの「ニーズがあれば5キロからでも糸をひく」とおっしゃている背景を垣
間見るようでした(一見の価値があると思います)。

生物研では、これまでのカイコの品種を保存するとともに、新しい繭、新しい利用
法の開発をこれまで以上に積極的に進めることとしています。そういう意味では、
茂木さんのところのように前向き思考で製糸業に携わっておられる所があるという
のは心強い限りです。
少量でも多様な種類のカイコを飼育して多様な繭を生産してくれる農家はあると思
います。ニーズを抱えて工房を運営しておられる方々、ニーズに応える技術開発を
行っている研究者、特徴ある繭を生産してくれる農家、少量でも糸にしてくれる業
者、こうした人々のネットワークを一日も早く作ることが必要ではないかとつくづ
く思います。

Chikayoshi Kitamura (NIAS/MAFF) kitamura@affrc.go.jp