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Subject: [silkmail:217] 皇后さまの御親蚕 2004/10/28 <Chikayoshi Kitamura >

10月20日付けで扶桑社から、皇后陛下古希記念「皇后さまの御親蚕」(¥2400)
という本が出版されました。全部で4章から成りますが、紅葉山御養蚕所に関する記
事は1章だけで(取材記事と佐藤好祐御養蚕所主任・元群馬蚕試場長に対するインタ
ビュー)残りは、皇居で飼育された小石丸を使って正倉院宝物の復元を行った経過と
途中の各プロセス、関係者へのインタビューという形で構成されています。
 正倉院宝物の復元では、できるだけ当時の実物に近い形で復元するという目標の下
に使用する品種の決定(その中で蚕昆研のアドバイスで小石丸に決めた)、繭の生産
(その過程で皇居の御養蚕と出会う)、文様の検討、製糸法、染色、製織と各段階で
古代の人々の技術水準の高さに驚きながら、一つ一つ問題を解決していく物語が語ら
れています。例えば、染色一つとっても、『日本の色を染める』(吉岡幸雄、岩波新
書)の中でも紹介されている、日本茜、刈安、黄檗、藍、紫根などを使えば良いだろ
うと検討をつけてみても、開発の進んでいる今の日本のどこへ行けば手にはいるのか、
という疑問から出発します。刈安は伊吹山へ、日本茜は結局、皇居の庭に自生してい
たものを増殖し(天皇様に増殖していただき)といった苦労を経て手に入れるわけで
すが、紫根だけはどこにもなく、結局漢方薬店から分けてもらうことになります。
 染色だけでなく、その他の工程についても、様々な検討が加えられ、復元にいたる
様が紹介されています。技術の継承の大切さをしみじみと感じさせる本でした。

ところで、10月20日の昼13:55〜15:50に日本テレビの「ザ・ワイド」
という番組で、紅葉山御養蚕所での小石丸の飼育に始まり、碓氷製糸での製糸、川島
織物での織り、染め、正倉院事務所へのインタビューという内容で、結構きれいな番
組が放映されたのですが、どなたか、ビデオをとっておられませんか?

Chikayoshi Kitamura (NIAS/MAFF) kitamura@affrc.go.jp