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Subject: [silkmail:223] 『八方にらみねこ』 2004/11/24 <Chikayoshi Kitamura >

先日、絵本でも買ってやろうかと、孫を連れて子供の本専門の本屋に行きました。
一心に物色する孫の横で、何気なく本棚に目をやると『八方にらみねこ』という面
白そうな表題と、真っ赤な表紙が目にとまりました。中をみてみると、捨てねこだ
った三毛の子猫が、拾ってくれたじいさま、ばあさまの恩返しのつもりで、お蚕を
鼠たちから守ろうとするのですが、ちびねこのみけでは力不足。そこで山に修業に
入り、やまねこさまから「八方にらみの術」を会得して、ついには、お札に書かれ
るというような話です。なかなか、かわいいお札の絵なので、ついつい買ってしま
いました。
 この作品は、「母の友」(福音館書店)昭和55年3月号に掲載され1981年に講談
社から刊行されたものを、新装版として2003年に復刻したものだそうです。
文:武田英子、絵:清水耕蔵で1800円でした。
奥付に、武田英子さんの“この物語について”というのがあり、そこには
“養蚕の歴史は、「魏志倭人伝」に書かれているほど古く、長いあいだ、わが国の
民族産業として人々の生活を支えてきました。とりわけ、近代では、国の経営に大
きな役割を果たしました。
 美しい絹の糸を吐くおかいこが元気に育ってくれるようにと、人々は、日夜見守
り、心身をつかい、とりわけ主婦の働きは大きいものでした。また、おかいこが病
気やねずみにやられないように、蚕影明神や蚕玉様などの神様に祈り、蚕安全の猫
の絵馬を奉納しました。猫も、ねずみ退治に一役を担ったのです。
 今日では、いりいろな化学繊維が開発され、この物語のじいさやばあさが経験し
たような養蚕の苦労は、だんだん忘れられていくようです。そのことを伝えたくて
清水耕蔵さんの絵に託して、この絵本を心をこめてつくりました。”とありました。

何かほっとすると同時に、この本を「講談社の創作絵本ベストセレクションとして
現代に甦らせ」た講談社にも感謝です。

Chikayoshi Kitamura (NIAS/MAFF) kitamura@affrc.go.jp