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Subject: [silkmail:224] Re: 『八方にらみねこ』 2004/11/24 <Takeda Satoshi >

北村様の投稿を見て、以下のことを思い出しました。それは、『猫が小さくなった理由』と言う本に出てくる、わが国の養蚕と猫についての記述です。
引用しておきます。
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東洋では、猫は仏教と密接な関係を持つようになりました。寺院にいる猫は経典をネズミの被害から守ってくれるからです。おそらく、猫がついに日本に到達したのもこのことと関連があるのでしょう。猫が日本に来たのは仏教が伝来したのと同じ六世紀だからです。伝説では、その数世紀後、ある日本の天皇が中国から来た白い母猫から生まれた真っ白な五匹の子猫を珍重するあまり、皇太子と同じ待遇を受けさせるように命じたそうです。五匹の子猫は白子(色素が欠乏あるいは欠如している白子は、一対の突然変異を起こした劣性対立遺伝子によって引き起こされる)ではなかったようですが、青い目をしていたということから、現在のシャム猫の先駆のような猫だったのでしょう。シャム猫の毛色は、白子の遺伝子の対立遺伝子とチンチラと呼ばれる遺伝子の対立遺伝子との複雑な相互作用によるもので、温度によって微妙に変化する珍しいものです。温度が高いと淡い色に、低いと濃い色になります。生まれたばかりのシャム猫の赤ちゃんは母猫の子宮が暖かかったために真っ白です。成長するにつれて、全体にクリーム色がかってきて、尻尾や耳、鼻づらといった体温が比較的低い部分は濃い色になります。不幸にして毛の一部を失った場合、新しく生えてくる毛はもとの毛より濃い色です。また、シャム猫はもうひとつの点でもしばしば突然変異を起こしやすく、アメリカ北東部の海岸地帯に住む猫のように、足指がしばしば普通より多いのです。
 天皇の猫が特別扱いされたおかげで、猫は日本中で大切にされるようになりました。外に出るときはかならず紐をつけていたので、飼い主が繁殖の管理をすることができました。そして、ネズミよけになるというので仏教寺院だけでなく養蚕場でもとても大切にされ、崇拝の対象とさえなりました。ネズミは蚕や繭の大敵だったので、猫がいるだけでネズミがいなくなるのが魔法のように思えたのでしょう。やがて、養蚕所の戸に猫の絵を貼ったり、室内に猫の置物をおいておくだけでも、ネズミが寄りつかなくなると信じられるようになりました。猫のいないところでは、青銅や木製や陶器の猫の置物がかわりにつくられました。当然ながら、絵や置物だけで効果が出るわけはなく、その不満がやがて不当にも猫に向けられました。猫は悪魔の使いだと言われるようになったのです。
『猫が小さくなった理由』(スー・ハベル著、矢沢聖子訳) 東京書籍 2003年
p.144-146
生物研 竹田敏

Chikayoshi Kitamura wrote:

> 先日、絵本でも買ってやろうかと、孫を連れて子供の本専門の本屋に行きました。
> 一心に物色する孫の横で、何気なく本棚に目をやると『八方にらみねこ』という面
> 白そうな表題と、真っ赤な表紙が目にとまりました。中をみてみると、捨てねこだ
> った三毛の子猫が、拾ってくれたじいさま、ばあさまの恩返しのつもりで、お蚕を
> 鼠たちから守ろうとするのですが、ちびねこのみけでは力不足。そこで山に修業に
> 入り、やまねこさまから「八方にらみの術」を会得して、ついには、お札に書かれ
> るというような話です。なかなか、かわいいお札の絵なので、ついつい買ってしま
> いました。
>  この作品は、「母の友」(福音館書店)昭和55年3月号に掲載され1981年に講談
> 社から刊行されたものを、新装版として2003年に復刻したものだそうです。
> 文:武田英子、絵:清水耕蔵で1800円でした。
> 奥付に、武田英子さんの“この物語について”というのがあり、そこには
> “養蚕の歴史は、「魏志倭人伝」に書かれているほど古く、長いあいだ、わが国の
> 民族産業として人々の生活を支えてきました。とりわけ、近代では、国の経営に大
> きな役割を果たしました。
>  美しい絹の糸を吐くおかいこが元気に育ってくれるようにと、人々は、日夜見守
> り、心身をつかい、とりわけ主婦の働きは大きいものでした。また、おかいこが病
> 気やねずみにやられないように、蚕影明神や蚕玉様などの神様に祈り、蚕安全の猫
> の絵馬を奉納しました。猫も、ねずみ退治に一役を担ったのです。
>  今日では、いりいろな化学繊維が開発され、この物語のじいさやばあさが経験し
> たような養蚕の苦労は、だんだん忘れられていくようです。そのことを伝えたくて
> 清水耕蔵さんの絵に託して、この絵本を心をこめてつくりました。”とありました。
>
> 何かほっとすると同時に、この本を「講談社の創作絵本ベストセレクションとして
> 現代に甦らせ」た講談社にも感謝です。
>
> Chikayoshi Kitamura (NIAS/MAFF) kitamura@affrc.go.jp