第2部 事例報告ー2−(2)

和布の伝統工芸を伝えながら
きくちゆうこ(ハンディ&シニア企画)

 皆様こんにちは、ハンディ&シニア企画のきくちゆうこと申します。
 会の名前の説明からさせていただきますと、ハンディというのは障害、シニアは高齢ということで、障害者の方、高齢になった方のための着やすい洋服を研究しております。資料のほうにもほとんどのことを書かせていただきました。後ほど読んでいただくことにいたしまして、実際にお洋服を見ていただきながら、ご提案をお伝えできたらいいなと思っております。
 昨晩、懇親会でもファッションショーをさせていただきまして、皆様の温かい声援と眼差しと拍手でみんな元気になりました。今日の舞台は東京から来た4人のモデルさんに務めていただこうという計画だったんですが、市民の方が協力してくださいます。今日授業参観があるけれど、今日は病人がいるけれど、というのを克服して、6名の方が急遽、今日一緒に参加していただけることになりました。本当にうれしく思います。
 なぜ市民の方に出ていただきたいかということを……。最初5月ごろ、企画のお話を岩下先生にお持ちしましたら、岩下先生が、駒ヶ根ではそんなモデルになってくれる人はいないと思うから企画倒れになりそうだよなんておっしゃったんです。けれども、まずやってみたらきっと声を出してくださり、手を挙げてくださる方がいらっしゃると思うので、ぜひ市民の方に参加していただいて、市民参加のサミットにしていただきたいんですと無理やりお願いしました。この企画を入れていただき、また私も壇上に立たせていただけることになりまして、夏の間ちょっとハラハラしたんですが、皆さん快くお引き受けいただけました。倍ぐらいの衣裳をお送りしたんですが、きれいに見えるにはサイズが合わなきゃだめ、身長も違う、体型も違いますが、ある中から選んで、よりきれいに着飾っていただきました。趣向を凝らしまして、第1部はパーティードレスで、第2部は留袖をリフォームしたものをまとめてお送りしたいと思っています。
 では、お話だけよりも、まず見ていただきたいと思います。では音楽をお願いいたします。

 どうぞ。
 水色の洋服から。

 今までヨーロッパのほうで洋服などを提案していきましたけれど、アジアとの交流も大切ということになりました。私、東京を中心に活動していまして、東京都もヨーロッパの先進国よりもアジアを主体に、アジアとの交流を始めています。ベトナムとの交流のためにアオザイの創作をいたしました。アオザイは正式には白の上下らしいんですが、着物のきれを使ったアオザイを作ってみたいと思いまして、2種類発表させていただきます。
 次は、小学生のルナちゃんには、今日も参加していただきます。先生にお願いしてきてくれました。私たち障害を持っている方との交流ということも含めまして、赤ちゃんからお年寄りまでいろんな方が地域に住んでいます。細い人もたっぷりした人もいろいろいる地域の中できれいにおしゃれをする、楽しく暮らすということを提案していきたいと思います。モデルさんはいつも赤ちゃんから何歳まででもというふうに募集していますので、今日は小学生の方が来てくださり、本当にうれしく思います。

 こちらのオレンジ色のは七五三の着物でした。ちょっと地味なら組み合わせをしていただくと楽しくなると思います。
これは普通の無地のお着物から作ったワンピースです。愛用しているものだったので、ロングドレスにはできませんでしたので、ワンピースの丈にしてみたものです。
 皆さんタンスの中に無地も小紋も紬もいろいろおありでしょう。それを生かしていただくため、今日はちょっと舞台用に派手ですけれども、ふだん着には大島とか紬とかいろいろ使っていただけると毎日気分が良くなるんじゃないでしょうか。ぜひタンスの中をもう一度、お蔵の中も見ていただくと、おじいちゃまのもの、おばあちゃまのもの、たくさん地方のほうにはあると思いますので、その提案ができたらと思います。

 次は、赤いお帽子をかぶっていただいてます洋服は、シルクミュージアムのほうに展示したかった、私の一番力を入れた作品でございます。絽の薄い男物の着物にプレス加工をしてみたかったんです。絹はプリーツ加工はだめと聞いていましたけれども、原宿にあります井上プリーツにお話しして、何しろやってほしいということで、工場は富山のほうらしいんですが、そこでやっていただき、プリーツを入れました。プリーツは熱や水に弱いからというお話なので、実際にもしドライクリーニングをしたらここがフワフワになっちゃうかもしれないですけど、今回楽しみにこのプリーツを加えて作ったものです。スカートの下のほうはパッチワークをし、いろいろ色を組み合わせたのが着物に映って、いかがでしょうか。
 上着の下に着ているピンクのブラウスは、羽織裏の派手なものを使ってあります。
 スカートのここがちょっとつまんでありますけれども、羽織のひもをくわえて、中が見えるような工夫もしてございます。暑いときは全部おろしていただければ黒のスカートになると思います。
 時間もないので、第1部はこれで終了します。
 2部は、留袖を中心にご紹介します。
 年配になりますと、結婚式も長時間着物できつくて、お留守番しようかななんていうおばあちゃまたちにぜひお洋服にして差し上げたら、長時間、またおなかいっぱいお食事もできるし、よろしいんじゃないでしょうか。音楽をお願いいたします。
 宝塚の音楽をテーマに見ていただきましょう。
 留袖も古い留袖は小さな柄……。専門家の方の中で私が説明することないんですが、現在ですと大きな柄までいろいろございます。今日は3種類の私の好きな留袖の柄にしていただきました。ラップドレスといいましてウエストが絞ってないので、どんな体型の方にも着ていただけるサイズにしてございます。

 次も私の好きな柄です。着物のきれは幅が決まっているのでなかなか思いどおりにできないんですが、上下作れました。というのは、中が袖なしになっているんです。袖なしに羽織れる上着ができました。

ルナちゃん、またお着替えしてくださって。これはベルベットのお洋服のきれなんですが、ちょっと着物みたいなきれを選んで加えました。
 こちらも私の大好きな留袖の柄です。肩がいっぱい出るデザインなので、ちょっと外して……。
 このストールは、先日、岡谷へ行きまして、岡谷の織物のところで購入しました。地元で働いている方が作って売っています。ぜひ岡谷の作品も一緒にと思いまして、今日は着ていただきました。
 これは留袖ではなくて訪問着ですが、ブルーの花が大好きです。すてきな色だと思って、全部真っ黒よりもブルーを入れてみました。
 ストールは、着物のきれではなく、先日フランスへ行った方が買ってきてくださったチュールのレースを組み合わせてみました。たくさんのイヤリングやネックレスと指輪も10本ぐらいつけてくださいなんて皆さんにお願いして、お化粧もいつもより濃くということで舞台に出ていただきました。
第2部、留袖シリーズと訪問着を終了します。
 今日のモデルをなさっている方は、駒ヶ根市と伊那市等の地元の方と東京からの4名です。東京の4名は、72歳になりましたけれども、バスで三、四時間かけて昨日から参りました。
 では、フィナーレをさせていただきます。昨日と同じなんですが、マツケンサンバで出ますので、お手をおかしください。

 今登場いただきました。ドレスで皆さんおいでいただきました。私の黄色のドレスは羽織のえりの中に入って、絞ってないところがストール。1枚のきれですが、このように肩へ。邪魔なときには手が通るようになっています。
 これで終了します。ありがとうございました。
 このように勢ぞろいしていただきました。私、東京でも品川区という区におりまして、そこで毎年、70歳の方をお祝いするシルバー成年式というのがございます。シルバー成年式というのは、70歳になったら再スタート。20歳の成人式ではなくて、70歳もこれから再スタートというイベントなんです。70歳の方全員にご案内をお送りします。70歳にならないとそのイベントに行かれないということで皆さん楽しみにしてくださっているんです。内容には、生まれた月日の新聞をコピーしてくれるとか、アートフラワーを体験してみましょうとか、コンサートとかいろいろイベントがある中に、ファッションショーをさせていただいています。そのファッションショーに、70歳でモデル体験をしてみませんかという募集を入れていただきます。3,000人ぐらい毎年お送りするんですが、10名ぐらいの方が勇気を持って応募してくださいまして、その方たちがまた次、次と参加してくださり、8年たちましたら随分大勢になっております。その中の4名が今日は来てくださって、実は2年前に70歳だった……。こちらが地元のきれいな方。あちらがちょっと年齢を加えたきれいな方。若い方。市民の方々にメンバーになっていただきました。ありがとうございます。
 ぶっつけ本番で、昨日の今日でしたが、お上手にやってくださったのです。みんなおしゃれするとか、きれいになるというのは、男性は余り出てきてないかもしれませんけれども、女性の中にはいつもあると思います。それを生かして、お化粧もすると元気が出るし、きれいになっているとだれかが声かけてくれるんです。ちょっとすてきな格好をしていると、「あ、お出かけ?」とか「今日はいつもと違うわね」と声をかけてくれるんですけれども、下向いて歩いている人にはなかなか声ってお互いにかけづらいということもあるのです。ぜひ皆さん、今度、お洋服とかネクタイを買うときは一つ明るい色を選んでいただいて、下は何も落ちてませんし大丈夫ですから、少し上を見ながら歩いていただくと、すてきに見えるんじゃないでしょうか。
 それから、モデルさんを体験していただきますと、スポットライトを浴びますよね。そうすると元気になるし、テレビを見たときに、女優さんってどうやって出てくるのかしら、どんな帽子をつけてるかしらと、興味を持ってテレビを見ます。また町を歩いているときにはショーウィンドーの自分の姿を映して、「あ、背筋が曲がってたわ」というのを1日1回でも気づけば、背中が丸まっていったりするのが遅くなります。
 普通に見えるお洋服だと思いますけれども、これは全部パターンで工夫してございます。年配になると背中も丸くなる、そうしますと後ろのすそが上がって、前が下がり、とても着にくいんです。足元も引っかかります。後が上がるのを防ぐために背中の部分でパターンを開いて、丸いんだけども真っすぐ見えるようなパターンにしています。布が多過ぎるところは型紙をたたんで短くするような工夫をしてあるお洋服です。今日の方は皆さん姿勢がいいんですけれど。今のファッションメーカーは若い人のお洋服が一番売れるために、若い人向きの細くて短い洋服が大半ですけれども、私たちいつ車いすになるかもわからないし、いつ足が悪くなるかもしれないということを想定しながら、足が悪くなったときでも真っすぐはけるズボンとか、なるべく着やすい前あきの洋服にするとかしていきたいと思っています。
 何でも楽な洋服がいいわけじゃないですね。使える機能は全部使って着なければいけないので、ボタンも必要です。全部がマジックテープがいいわけでもないんです。障害者の方も一人一人違います。手が悪いといってもここまで上がる人と後ろに行かない人、いろいろいらっしゃるので、ご要望を聞きながら、どこまで上がるのか、どこまで上げたいのか、などを聞きながら一人ずつの洋服を作ることになっているのです。すき間産業といいますか、企業ではなかなかやっていただけない洋服になっています。
 このようなことを少しずつやっているんですが、私たち東京の一部でやっていてもたかが知れているんです。駒ヶ根の方には初めてだし、上田の方にもお話しすると初めてだしということなので、いろんな地域でボランティアが育成されて、お隣のおばさまのために作ってあげる、入院したときにはちょっとすてきなベストを作ってあげる、羽織を直してあげるというような方がたくさん地域に広がって、助け合った楽しい地域生活ができたらいいなということを目指して、今日は駒ヶ根まで越させていただいたわけです。(拍手)
座長: ファッションということでいろいろ楽しみ方があると思いますし、その中で
                 本当にどうもありがとうございました。


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