第2部 事例報告ー2−(4)

まゆが織り成す神秘
小林さな恵(駒ヶ根シルクミュージアム まゆクラフト)

 それでは、発表させていただきます。
 私が繭手芸に出会ったのは二十数年前になります。姉がどこかで習ったと言ってコサージュを教えてくれました。お蚕様とは縁のない家庭で育ち、人一倍虫嫌いですが、繭には不思議な魅力があり、どんどんはまっていきました。
 色とりどりに染まった繭を手芸屋さんより買い求め、いろいろなグループへ行き、一緒にコサージュを作ったり、幾つもブーケを頼まれて作ってきました。手芸にもはやりがありまして、手芸屋さんで繭を置かなくなりました。仕方なく白い繭を手に入れて染めることにしました。染料で染めても上手に染まらず、プラモデルの塗料がよいと言われれば染めてもみました。しかし、シンナーのにおいが強くて、家の中へはいつまでも持ち込めず、これも失敗でした。
 今ほど周りに関心のある方がいなかったため聞くこともなく、白いブーケばかり作ってきました。そして、4年半前にシルクミュージアムの建設を知り、参加させていただきました。
 1匹のお蚕様が吐く糸は約1,500メートルだと聞いております。繭自身、神秘だと思います。昔では、とうとくて考えられなかった繭を、切ったり、染めたり、剥いだりするという、今だからできるさまざまな作品づくりを制作して楽しんでおります。見学に来られたお客様の中には、昔は家でも飼っていたので懐かしいとか、子供のころお蚕様にお座敷を取られて、自分たちが小さくなって寝たものだ等、いろいろなお話を聞かせていただきます。
現在、12名の「まゆっこサークル」の仲間で活動しております。やっぱり好きで集まった仲間ですので、それぞれ特技や知恵の交換の場となっております。皆で考え、大勢の手ですると立派な作品ができます。

昨年は、ことしの酉年に合わせて約1,000個の繭を使って大きな孔雀を作りました。これもシルクミュージアムのほうに飾ってありますのでご覧になってください。
 初めのころの作品づくりではまず染めが難しく、剥がしてみると中まで染まっていませんでした。一緒のフロアにいる染色の細田先生のアドバイスを受けながらやってきました。まだまだ染め直しをしながら染めております。染めむらも味わいのあるものになりますが、使用目的によってはしっかり染めたいものもあります。
 それでは、幾つかの作品の制作過程をご説明させていただきます。

 ブーケの場合ですが、花びらの花の切り方で違いはありますが、繭35個から40個、ここに今40個の繭がございます。この40個、これだけの繭で大きなブーケができるんです。まず、繭へ、3等分になるように切り込みを入れます。次に、花びらのように角を落として丸みをつけて、それから、これを目打ちで……。いい繭は四、五枚に剥がれます。ちょっと働きの悪かった蚕様のは3枚ぐらいしか剥がれないのもあります。5枚くらいに剥がれたものを、次に花のしんになるものを作っておきまして、ペップというものなんですが、それに5枚を互い違いに通して、ボンドでとめていきます。テープを次に巻いてでき上がりです。

 これのほかに、葉っぱとかカスミソウ、それからちょっと揺れるカップフラワーというのがあるんですが、そういうのを取り混ぜて組み立てていきます。これだけの繭でこういう豪勢なブーケができ上がります。
 自分のために、または娘さんのためにと作られる体験者があります。先日も、この魅力に取りつかれた、お友達のために3個目のブーケを作られた方がいます。自分のときには繭との出会いがなく、自分のための繭のブーケはまだないそうです。また、来年、お式の日も決まったお友達には、染めからしてみたいと、小さな幼子を抱えながらも意気込んでおられます。

 次の作品はトラです。これは額に入ったものですが、トラの毛並みをカットの方法で何か表現できないかなと思って制作してみました。繭を縦半分に切り、それを3等分にした、つまりは1つの繭を縦に6等分にした細い繭へ、細かな切り込みを入れていきます。そして、それを茶、薄茶、黒、金茶等に染め、薄く剥いで、女性の方はご存じだと思いますが、つけまつげのようなものをトラの下絵に張っていきました。上から触るとタワシのような感触でしたけれど、動きのある毛並みとか力強さの表現に大変苦労いたしましたが、1枚ずつ毛を張っていくとおもしろくて、1カ月くらいで夢中になって仕上がりました。竹の部分は、厚紙をちょっと膨らませてその上に真綿を緑に染めて張って作りました。竹の葉も繭でできております。

 次に、盆栽を作ってみました。これはたまたま松なんですが、ほかの普通の手芸で梅の盆栽を作った方がありましたので、その盆栽づくりの基本を教わって作ってみました。この松の盆栽ですが、緑に染めた繭を縦半分に切り、丸みのあるほうから細く切り込みを入れていきまして、3から4本の切り込みを入れましたら切り落としまして、それを針金に巻いて1つの松葉になります。とにかくたくさん切りました。こんな感じで松葉が……。三、四本まとめて1本の松葉にしました。

 次ですが、幹は18番から16番くらいの太い針金を10本ぐらい束ねて枝ぶりを作りまして、その上にティッシュペーパーで肉づけをして、茶色のテープを巻いて、それから飛鳥土――これは手芸用に売っているんですが、飛鳥土と液体のり、それと水で少し薄めまして、それをまぜて筆で塗りつけて、さも幹のように見せて作りました。繭から取れる大きさというものは限られております。といって平面繭は高価でなかなか手に入りにくいので、繭を螺旋に切って細長く継ぎ合わしたりして、大きな葉を作ったりもしております。

次に体験指導ですが、「まゆっこサークル」の中から体験指導してもよいという人、7人ほどなんですが、指導者の「桑の実の会」を作りまして、体験希望者の指導に当たっております。教えるということはなかなか難しいことです。でき上がった作品をいとおしそうに大切に持ち帰られると、こちらも、喜んでもらってよかったと思います。また、大変遠くからのお客様もあります。昨日受付にてお配りしたコサージュも作らせていただきました。これも全体的に染まったほうがよいということで、何回も剥がしてみて染まってないとまた染めるという工程を繰り返して、こういうコサージュができました。体験メニューを3、4カ月ごとに考えて、3年半くらいの現在までに9,800名の方々が体験されました。資料のほうには6,800名となっておりますが、この9月から観光バスのツアーによる体験者が 3,000名ほどあり、短時間でできるペンギンを作って楽しんでいってもらっています。
そのほか、講習会といたしまして、2時間2回コース、2時間3回コース、ブーケの場合は2時間3回コースくらいで1つを作り上げていただくわけなんですが、それぞれそういう大作を年3回から4回企画して、参加していただいてきました。
ちょっとここで皆さんに登場していただくので、ライトをお願いします。(出演者登場)
 繭クラフトですが、紹介させていただきます。

 一番向こうから、ミニブーケということで小さいブーケを作ってみました。トス用にも使われます。
 次には、テーブルフラワーといいまして、籠盛りです。テーブルセンターなんかに置かれるといいかと思います。
 次は、桜。これも盆栽です。

 次は、ユリです。黄色のユリと白のユリです。
 それから、先ほどから作っていますブーケを、ここは市の花がスズランなものですから、スズランをブーケにして作ってみました。
 次が、コスモスの籠盛りです。

 私たちは額へも納めてみようということで、経験者でいろいろなことを経験される方がありますものでこういう知恵も出まして、額へ納めてみようということで、ヒマワリの額を作ってみました。
 次は、カエルです。とても愛らしくて、ちょっと小物なんですが、上の葉っぱから落ちそうになる水滴を3匹の親子ガエルがながめているというのを想像して作りました。とても愛らしい、かわいらしい、いい色が出ております。
 最後になりますが、今、盛んにあちこちの庭で咲いています秋明菊を作ってみました。

 これが先ほど説明しました盆栽の松でございます。ちょっと遠くて見にくいと思いますが、これから見学していただくシルクミュージアムのほうに、済みましたら早速、帰りまして展示しておきますので、またごゆっくりご覧になってください。
 奥の深い繭手芸、まだまだできることがあるのではないかとサークルの仲間で研さんしております。
 最後になりますが、サークルに多くの方々に入っていただき、もっと仲間がふえることを望んでおります。
 カットの方法、真綿を作り、作品にする、繭の染めも身近な草木を使っていろいろな色を出していきたいと思っております。これからも繭の織りなす神秘に近づくような作品づくりをしていきたいと思います。
 以上、大変拙い発表でしたが、繭の変身ぶりを見ていただき、お許し願いたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

座長: ありがとうございました。
 こういう繭クラフトの製品化とかそういうことはお考えになっていませんか。
小林: 作品を作りまして、シルクミュージアムの売店のほうに出させていただいております。お土産店にあるところもあります。
座長: 日本全国でもこういう繭クラフト      多いと思うんですが、そういう全国レベルでの横のつながりみたいなことはあるんでしょうか。
小林: 横浜のほうで毎年行われる全国の農業協同組合のクラフト展があるんですが、そこへ毎年1月、出品させていただいております。先ほどのトラが賞をいただきましたので……。
座長: 何かほかに、コメント等ございますか。それではこれで、ありがとうございました。


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