各地の事例報告−3−
シルク博物館
(神奈川県横浜市)

シルク博物館博物館部長 小泉勝夫

 私どもの博物館は昭和34年にできまして現在40数年経っております。一昨年、平成11年度に満40周年を迎えたということで博物館の大改装、リニューアルをいたしました。このとき、私どもは、まだ20世紀でしたが21世紀にも対応できる博物館にしようという目標をおきまして取り組んだのであります。その時に、いったい来る人達のニーズはどうなのだろうということで大変議論したのですが、ただ今来られる方のニーズは大変広いわけです。子供達から服飾学校、服飾の関係の大学、一般の方、高齢者それぞれ皆立場立場によって違うわけです。ですから、そのニーズに全て応えることはできないわけですが、極力応えられるものを作ろうといたしました。
 館の中としては子供達に対応できるような、私どもの博物館は1階2階と2つの層になっておりまして、1階の部分は学習的な、科学的なものを学習できる学習コーナーのようなものを設けまして勉強できる場作りをいたしました。そこは、時期によっては糸繰りができるとか、機織りは1年中やっておりまして大変人気があるのですが、とにかく触ったりいろいろできるなどの体験できることを中心にしました。2階の部分につきましては、やはり絹の博物館ですから美術的な美術品としての美しさ、美の工芸美を見ていただこうと、もう1つは歴史を見ていただくということで、古代から現代までの日本の服飾の変遷といったようなものを見ていただける形に整理したわけであります。1階のコーナーにも世界の絹のコーナーを設けたり、科学的なコーナーということで、1階の部分は現代のいろいろな絹製品をおいてあります。
 博物館の中は今までの博物館とは全く変った形に整理をいたしました。そういうことで、整理はしたのですが、やはり博物館運営として一番苦労していることは入館者を如何にして確保するか、これは私どもどこからも補助金を貰うわけではないし、自分達の体でもってかき集めなければならない。ということで取り組んでおりますので大変厳しい中での取り組みです。ですから、1人でも多くの人を入れたい。かといって、あまりミーちゃん、ハーちゃんの面白半分の博物館であってはならない。これは博物館の尊厳に関わりますので出来ません。如何にして皆さんに博物館の機能を発揮して見てもらうか、どれだけの人数を確保できるか、ということで苦労しております。私ども横浜には博物館、資料館、もう大変な数がありまして2〜3軒おきにあるわけです。最近の入館状況全体を見ても、年々大きく減っているわけです。そのような中で、リニューアルしたことによってどれだけ効果がでるかということも我々大変上からのプレッシャーがかかっている中でやっています。今のところ減ってはいませんが、期待するほど、何万人も増えるというような効果はでておりません。ただ減るということだけは押さえておりまして多少上向きの傾向は示しております。ただそのリニューアル効果がどれだけもつか大きな課題となっております。
 博物館は私含めて学芸員3名、私の下に3名いるという中で、年に特別展を4回ないし5回組んでおります。今の博物館の状態を見るとどうしても常設展では人の確保は難しい。仕方なく特別展を多くしてある。これをやることで入館者を確保している。本来なら常設展でもって7〜8割の人を確保すべきなのですがそれができないことが今の博物館の辛さでございまして、今大よそでございますが常設展で入る人が50%欠けます。ですから特別展でもって50数%の入館者を確保するという状況になっております。という中で我々どうしても特別展で稼がなければならないとすると、特別展をどういう事業でやるのかという内容のもので、大変議論もするわけですが、そのような特別展で頭を悩ましております。またその取り組みに大変な大きな時間を費やしております。今回のアンケートの中には書いておりませんが、これが博物館としての一番大きな取り組んでいく上での時間もかかるし大変な取り組みだということです。
 それから私どもやっていくなかで常設展にどうしても人を確保したいということで、実は私ども常設展の配布、展示物を替えようと、リピーターを増やすようにしようとしております。ですから常設展の中でも展示を変える時はアンケートの中に触れておきましたが、1つはミニ企画展示ということで大きなガラスケース2つなり3つなりテーマをもたせまして1つの流れにします。たとえばひな祭りといったら衣装人形でもって何点か綺麗に飾ったケースを作って、そのような流れを作るとか。お正月でしたら、お正月の華やいだもので絵を書いて皆さんに見ていただく。常設展であってもひとつの企画をもたせる、テーマをもたせるなどして常設展でも苦労しております。
 それと、どうしても絹の染色品を扱っておりますので日頃苦労するのは照明等です。 それから地域との ふれあい等でございますが、今、小学校が総合学習ということで学習要領の中に入っておりまして、その取り組みが始まっておりますが、学校に対しては博物館手引きというものを作りました。各3年生の教科書、これは全部集めたのですが、買いだめして3年、4年、5年、中学生の社会、美術、歴史、高校までの教科書を集めまして、どこの学年でどのような歴史を学ぶ、どういう社会をならう、それに対して、どういう対応をするか。また小学校3年生であれば、理科にモンシロチョウや蚕がでてくる。これにどういう対応をするか、学年に合わせた手引きを作りまして各学校に配りました。こういうことでひとつは博物館を利用してもらうという取り組みをしています。それともう1つ、総合的学習に合わせて理科教材で蚕が非常に必要だという状況になっているものですから教育委員会からの要望がありまして各地の教育委員会が主催する蚕の飼い方なり観察の仕方なり、あるいは歴史・社会に対応した講演会等に私どもの職員が出席して講師になって話をするというようなこともしております。
 それと、私達の博物館は全国の人たちが利用するものですから繭がどこから手に入るか、蚕の種がどうかとか、いろいろありまして皆さんのお手元にもお配りしてあると思いますが、実際、人工飼料ひとつとっても対応してくれる工場はあっても、学校で500グラム入ったもの、1キロ入ったもの、何個欲しいと言っても対応してくれない。そういう対応してくれるのはどこだということで全国隈なく調べて少ない量でも対応してくれるところを皆さんのお手元には配ってあると思いますが、今の段階ではこのような資材やいろいろの問い合わせがあった時は対応できるようにしております。それから私ども博物館で、春に1回だけは蚕の卵を蚕糸会社から大量に購入しまして各学校に有料で配布する。都内や神奈川県、埼玉、千葉の時もありますがそういうことを配布しております。この配布もまだ農家があるから、2代、3代と飼うことはよしなさいと注意をしながら、微粒子病の注意をしなければ大変ですから、そのような注意をしながら種を配っております。
 現在抱えている問題ですと、今言いましたようになんといっても入館対策が、寝ても起きても頭から離れないのが一番の問題です。 もう1つ今の博物館で魅力ある博物館にするとなるとどうしてもバリアフリーにしないと皆さん満足しないので、これをすることによってまた博物館は大きなリスクを背負う。ということで板ばさみになるのですが、このリスクは仕方ないだろうということで私どもも取り組んでおります。ですから、たとえば人形の腕がどこかへ飛んでいってしまうとか、繭を朝綺麗なものを出しておいても、全部きれいに潰してしまう、生糸など綺麗なので皆引っ張ってしまうとか、このような悪戯が頻繁に起こる。もう次の日には飾れないと、という事故も起きておりますが、一部の人がすることが博物館には大変な迷惑になっているということもあります。
 いろいろな課題を抱えておりますが、私の最後のお願いですが、せっかく農林水産省の蚕糸・昆虫農業技術研究所が中心になってシルクサッミトを企画してもらったわけですから、是非このような機会を長く続けていただいて、お互いの連携、情報交換が出来る場が持てればいいなという意見も持っております。また、私ども大きな特別展をやってみたいと思うのですが、大変お金がかかる。ひとつの特別展をやるとなると1,000万以上、ちょっとしたものでは2,000万位の金がないとできないという実態なのです。そうなると1つの館でやるのではなく、国内のいろいろな館と提携をしながら持ち回りでやれば費用も安くなるだろう。このようなことも出来ないかなとご提案申し上げて説明を終ります。ありがとうございました。