畜産草地研究所

乳牛・肉用牛研究グループ

主な研究成果

主な研究成果の概要

稲発酵粗飼料の肥育全期間給与による黒毛和種の肥育

稲発酵粗飼料を黒毛和種去勢牛に10ヶ月齢から30ヶ月齢までの肥育の全期間給与すると、慣行肥育と遜色ない枝肉成績が得られる他、牛肉中の抗酸化ビタミンであるα-トコフェロール(ビタミンE)の含量が高まり、牛肉の保存性が向上することがわかりました。

胸最長筋(リブロース)中のα-トコフェロール含量
胸最長筋(リブロース)中のα-トコフェロール含量

冷蔵庫で13日間保存した牛肉(リブロース)の変色程度
冷蔵庫で13日間保存した牛肉(リブロース)の変色程度

飼料用米の第一胃内分解特性の品種および加工法による差異

自給濃厚飼料として期待される飼料用米の完熟期におけるでんぷん質の第一胃内有効分解率を乳牛で調べたところ、75.7~90.4%の範囲内にあり、「モミロマン」が最も高いことがわかりました。また、蒸気圧ぺん処理は飼料用米の第一胃内有効分解率を最も高める加工処理法であることを示しました。

もみ米品種別のでんぷん質の第一胃内有効分解率(2mm粉砕の場合)
もみ米品種別のでんぷん質の第一胃内有効分解率(2mm粉砕の場合)

もみ米加工法別のでんぷん質の第一胃内有効分解率(品種「ホシアオバ」と「モミロマン」)
もみ米加工法別のでんぷん質の第一胃内有効分解率(品種「ホシアオバ」と「モミロマン」)

水酸化アルミニウムゲルを用いたワンショット過剰排卵誘起剤の開発

水酸化アルミニウムゲルに牛の卵胞形成を促進するホルモンを吸着させることによってこれまで数回注射を要する方法を1回の注射で達成する薬剤を開発しました。

ワンショット剤に使用可能な水酸化アルミニウムゲル
ワンショット剤に使用可能な水酸化アルミニウムゲル

栄養状態と脳内ケトン体利用の関係解明

絶食によってラット脳内のモノカルボン酸トランスポーター遺伝子発現が上昇することを明らかにしました。

低栄養シグナルとそのセンシング

主な論文

タイトル著者掲載誌紹介
Successful superovulation of cattle by a single administration of FSH in aluminum hydroxide gel.(水酸化アルミニウムゲルに懸濁した卵胞刺激ホルモンの単回投与によるウシ過剰排卵誘起) 木村 康二 他 Theriogenology, (2007) 68(4), 633-639 水酸化アルミニウムゲルをホルモンの吸着剤に用いることで1回の投与で牛の過剰排卵を誘起することが出来る薬剤を開発した。
Responsiveness of rabbits to superovulation treatment by single injection of follicle stimulating hormone mixed with aluminum hydroxide-gel.(水酸化アルミニウムゲルと混和した卵胞刺激ホルモンの単回投与へのウサギ卵巣の反応) 橋本 周(IVFなんば)、木村 康二 Molecular Reproduction and Development, (2007) 74(9), 1208-1212 水酸化アルミニウムゲルを用いたワンショット過剰排卵誘起法は牛だけでなくウサギでも有効であることを示した。
The effect of glucosamine concentration on the development and sex ratio of bovine embryos.(ウシ胚の体外での発育および性比へのグルコサミンの培養液添加効果) 木村 康二 他 Animal Reproduction Science, (2008) 103(3-4), 228-238 牛胚培養液にグルコサミンを添加すると、ウシ胚の性比が雄に偏り、糖鎖修飾酵素OGTを阻害するとその効果が消滅することを明らかにした。
Effects of modification of in vitro fertilization techniques on the sex ratio of the resultant bovine embryos.(体外受精法の違いがウシ胚の性比に及ぼす影響) 岩田 尚孝(東農大)、木村 康二 Animal Reproduction Science, (2008) 105(3-4), 234-244 牛の体外受精の授精条件を変えると生産されたウシ胚の性比が影響を受けることを明らかにした。
Nutritional skewing of conceptus sex in sheep: Effects of a maternal diet enriched in rumen-protected polyunsaturated fatty acids (PUFA).(ヒツジ胚性比の栄養学的歪み:第1胃難分解性多価不飽和脂肪酸豊富な餌の効果) M.P.グリーン(Agresearch)、L.D.スペート(ミズーリ大)、木村 康二 Reproductive Biology and Endocrinology, (2008) 6(1), 21-31 多価不飽和脂肪酸を多く含む餌を妊娠ヒツジに供すると、胚の性比が雄に偏ることを示した。
Central administration of neuropeptide B, but not prolactin-releasing peptide, stimulates cortisol secretion in sheep.(ヒツジにおいてPrRPではなくNPBの中枢投与がコルチゾール分泌を刺激する) 茂木 一孝(東大院)、松山 秀一、岡村 裕昭(生物研) Journal of Reproduction and Development, (2008) 54(2), 138-141 ヒツジでは、脳内のニューロペプチドB (NPB)はコルチゾール分泌を刺激する一方で、プロラクチン放出ペプチド (PrRP) は影響を及ぼさないことを示した。
Silage fermentative quality and characteristics of anthocyanin stability in anthocyanin-rich corn.(アントシアニンを多く含むトウモロコシで調製したサイレージの発酵品質およびアントシアニンの安定性) 細田 謙次 他 Asian-Australasian Journal of Animal Sciences, (2009) 22(4), 528-533 家畜のストレスを軽減する抗酸化物質として期待されるアントシアニンを多く含むトウモロコシ品種について、そのサイレージ保存性およびアントシアニンの安定性を調べた。アントシアニン高含有トウモロコシは良好なサイレージ発酵品質を示すこと、アントシアニンはサイレージ保存中に減少すること、およびアントシアニンはウシの第一胃液による分解を受けないことを明らかにした。
Expression of adipogenic transcription factors in adipose tissue of fattening Wagyu and Holstein steers.(和牛およびホルスタイン種去勢肥育牛の脂肪組織における脂肪細胞分化調節転写因子発現) 山田 知哉 他 Meat Science, (2009) 81, 86-92 ウシ品種が脂肪細胞分化調節転写因子群の発現に及ぼす影響を検討した。黒毛和種去勢肥育牛とホルスタイン種去勢肥育牛における脂肪組織の発達を比較検討した結果、19ヶ月齢時における黒毛和種牛の皮下脂肪割合及び筋間脂肪割合はホルスタイン種牛より高いことを示した。さらに、脂肪組織における脂肪細胞分化調節転写因子の発現を検討した結果、19ヶ月齢時において黒毛和種牛では、初期分化を制御するC/EBPδ発現がホルスタイン種牛より高いことを見いだし、黒毛和種牛における脂肪細胞の初期分化能はホルスタイン種牛より高いことを明らかにした。
Development of high-performance liquid chromatography screening method for the determination of the fagopyrin content of tartary buckwheat and common buckwheat.(ダッタンソバおよび普通ソバに含まれるファゴピリン含量の高速液体クロマトグラフィーによる定量法の開発) 江口 研太郎 他 Plant Production Science, (2009) 12(4), 475-480 ソバには日光照射によって家畜に光増感作用を誘発するファゴピリンが含まれる。ソバの葉の抽出液にはクロロフィルが含まれるため、従来の分光光度計法ではファゴピリン含量を過大評価することが示された。このことから、ファゴピリンの定量には分光光度計法よりもHPLC法が有効であることを明らかにした。
Expression of bovine interferon-tau variants according to sex and age of conceptuses. (胚の性と日齢のよるIFN-tauバリアントの発現) A.M.ウォーカー(ミズーリ大)、木村 康二 Theriogenology,(2009) 72(1), 44-53 ウシ胚において発現している妊娠認識物質IFN-tauは様々なバリアントを持つが、雌雄胚および発育ステージでどのバリアントが発現しているのかを明らかにした。
Food deprivation induces monocarboxylate transporter 2 expression in the brainstem in female rat.(絶食は雌ラット脳幹におけるモノカルボン酸輸送体2の発現を誘起する) 松山 秀一 他 Journal of Reproduction and Development, (2009) 55(3), 256-261 雌ラットにおいて、短期間の絶食により黄体形成ホルモン分泌が抑制されると同時に、脳幹 のAP-NTS領域におけるモノカルボン酸輸送体2(MCT2)遺伝子の発現量が増加することを示した。
Gonadotrophin-releasing hormone pulse generator activity in the hypothalamus of the goat.(ヤギ視床下部におけるGnRHパルスジェネレータの活性) 大蔵 聡(名大)、松山 秀一 Journal of Neuroendocrinology, (2009) 21(10), 813-821 キスペプチンニューロンが局在する脳内ARC領域における多ニューロン発火活動 (MUA) は、黄体形成ホルモンのパルス頻度と同期していることを明らかにし、MUAで示されるGnRHパルスジェネレーターの活動は、GnRHニューロンではなく、GnRHニューロンに投射しているキスペプチンニューロンのペースメーカー活動である可能性を示した。
品種および加工法の異なる飼料米の第一胃内分解特性 宮地 慎 他 日本草地学会誌, (2010) 56(1), 13-19 飼料用米のウシ第一胃のでんぷんの有効分解率は、トウモロコシより高く、エンバク、コムギより低いこと、飼料用米のでんぷんを最大限に利用するためには、蒸気圧ぺん処理が有効な加工法であることを示した。
飼料米の調製貯蔵時の処理がソフトグレインサイレージの発酵品質に及ぼす要因の解析 上垣 隆一 他 日本畜産学会報, (2010) 81(3), 353-362 飼料用米をサイレージに調製するには水分の調整が不可欠であり、次に破砕程度を強くすることが効果的であること、また、添加剤の使用はより安定したサイレージ発酵が必要なときには効果的で、中でも乳酸菌製剤の添加が効果的なことを示した。
Fat depot-specific differences in Angiogenic growth factor gene expression and its relation to adipocyte size in cattle.(肉牛における脂肪蓄積部位の違いによる血管新生因子遺伝子発現の差および血管新生因子遺伝子発現量と脂肪細胞サイズとの関係) 山田 知哉 他 Journal of Veterinary Medical Science, (2010) 72, 991-997 脂肪組織部位の違いが脂肪組織の発達を制御する血管新生因子遺伝子群の発現に及ぼす影響を検討した。VEGF、FGF-2、leptin遺伝子の発現量は、皮下脂肪及び筋肉内脂肪組織と比較し、腸間膜脂肪、筋間脂肪並びに腎周囲脂肪組織で高いことを見いだした。さらに血管新生因子遺伝子の発現量と脂肪細胞径には有意な正の相関関係が存在することを見いだし、血管新生因子遺伝子の発現量には脂肪細胞径が影響していることを示唆した。
Trichostatin A-treated eight-cell bovine embryos had increased histone acetylation and gene expression, with increased cell numbers at the blastocyst stage. (ウシ8細胞期胚のトリコスタチンA処理は胚盤胞期胚の細胞数増加とともにヒストンアセチル化と遺伝子発現を増加させる) 白築 章吾(東農大)、岩田 尚孝(東農大)、木村 康二 Theriogenology, (2010) 75(5), 841-848 ウシ8細胞期胚をトリコスタチンA処理することによって、ヒストンのアセチル化が変化うけ、カドヘリン遺伝子発現が上昇した。
Digestibility, ruminal fermentation, nitrogen balance and methane production in Holstein steers fed diets containing soy sauce cake at 10 or 20 percent.(醤油粕の給与がホルスタイン種去勢牛の消化率、第一胃内発酵、窒素出納およびメタン産生に及ぼす影響) 細田 謙次 他 Animal Science Journal, In press. 醤油粕の牛用飼料としての有用性および適正給与水準について再検証するため、醤油粕を3水準(0、10、20%)で飼料に配合して比較した。醤油粕を20%配合すると、窒素利用性の向上やメタン発生の抑制が認められるものの、飼料消化率の低下などの生産性を低下させた。一方、10%給与水準は対照飼料(0%)と同等の成績を示したことから、ウシ用飼料としての醤油粕の給与水準は最大10%程度が望ましいことを示した。

研究センター