農村工学研究所

農村工学研究所メールマガジン

メールマガジン第11号(2011年2月号)

【登録会員の皆様へお願い】

メルマガの冒頭で大変恐縮ですが、編集事務局からのお願いが2件ございますので、よろしくお願いします。

  • 4月の異動シーズンが近づいてまいりました。つきましては、登録会員の方で、メールアドレス変更を伴う異動をされる場合は、忘れずに変更手続きをお取り頂きますよう、呉々もよろしくお願いします。
  • 早いもので、農工研メルマガ配信開始から1年が経とうとしています。つきましては、この1年間を振り返り、会員の皆様からのご感想や今後の要望、はたまた励ましのメーセッジ等、何でも結構ですのでお声をお聞かせください。「水土里のささやき」コーナーにて掲載させて頂きますので、ぜひよろしくお願い申し上げます。

目次

1)トピックス

■日韓農業農村振興実務者ワークショップの開催

2月9日~11日に韓国のソウルで、第5回目となる標記のワークショップ(W/S)が開催され、日本から行政や研究に関わる7名が参加しました。このW/Sは、両国の技術力の向上、国際的な枠組みの中で日韓の連携強化、中堅と若手職員の人材育成などを目的として、1年に一度相互に開催されています。

韓国では、1970年代以降の急速な産業化で農家人口の減少と高齢化が進み、農村の過疎化と休耕地の増加、米の生産過剰などの問題を抱えながらも、グリーンツーリズムなどによって農村活性化が図られています。このように、日本の農業農村の構造や取り巻く社会環境と共通点が多く、このW/Sが設置された意義を実感しました。

施設資源部 水路工水理研究室 主任研究員 向井章恵

農村総合研究部 資源循環システム研究チーム 研究員 折立文子

(関連資料)http://www.naro.affrc.go.jp/nkk/mail_magazine/files/mm11_01-01.pdf

2)イベントのご案内

■「伊勢湾流域圏の自然共生型環境管理技術開発」研究成果報告会

都市を含む流域圏は、高エネルギー投入型の人間中心的な管理を行ってきたため、環境が悪化してきました。そのため、自然との共生という理念のもとで、疲弊した流域を修復するため、生態系の健全性を指標とする技術の確立を目指して、7つの研究機関が伊勢湾を対象に5年間の研究に取り組みました。

農工研は、農地の生態系の機構解明と修復技術の開発を分担しました。3月3日に、名古屋大学構内において、その研究成果を報告します。関心のある方は是非お立ち寄り下さい。

施設資源部 水源施設水理研究室長 高木強治

■農村工学研究所研究会の開催(第3報)

3月9日~10日に、つくば農林ホールにおいて、この5年間(平成18~22年度)を総括する標記研究会を開催致します。東京大学の田中忠次名誉教授による基調講演と、「ストックマネジメント」、「防災」、「地域資源の保全」という3つの分野で研究発表を行います。農業農村整備に携わる技術者をはじめ、多くの皆さまのご参加をお待ちしています。

申し込み先:nkk-kikaku◎naro.affrc.go.jp(企画管理部 業務推進室)
※メールを送信する際は「◎」を「@」にしてください

■障がい者就労推進研修会をつくば市で開催

農水省事業「女性・高齢者等活動支援事業(障害者就労支援事業)」の一貫として、農業分野における障がい者就労への啓発を目的とした研修会を、農村工学研究所研究会の開催に併せて、下記のとおり行います。

関心のある方は是非ご参加下さい。

(研修会の日程)

  • 日時:平成23年3月10日(木曜日)13時30分~17時00分
  • 会場:農林水産技術会議事務局筑波事務所本館内
    (上記の農工研研究会終了後に同じ会場で開催予定)

農村計画部 集落機能研究室 主任研究員 唐崎卓也

3)技術なんでも相談

■落下水の騒音を軽減する対策技術があれば教えて下さい。

東北農政局平鹿平野農業水利事業所所長有森正浩様より

当地区ではコンクリート用水路の改修事業を行っております。その際に、水路の途中に設置されている水クッション型の落差工を跳水型に変更し改修したところ、落差工の上流側の近隣住民から騒音の苦情が寄せられたため、落差工区間に蓋をかけて暗渠化しました。農工研において、農業水利構造物の騒音対策について知見があればご教示下さい。

(関連資料)

【お答えします】

施設資源部 水源施設水理研究室長 高木強治

農村地域において都市化や混住化が進むと、ゲートや落差工からの落水による騒音が、近隣の住民の苦情となることが少なくありません。水クッション型落差工では、騒音の音源が越流水の着水点となるため、落差工の鏡壁と水路壁の影響で、騒音は下流側では減衰しにくく、上流側では減衰しやすいという特徴があります。

そこで農工研では、施設の構造が落下流と発生音に及ぼす影響を評価し、(1)落下流の騒音を低コストで低減する筏(いかだ)型の装置、(2)越流ゲートの水膜振動に起因する低周波騒音を低減する樋型のスポイラー(水切り材)、(3)落下流の騒音を抑え、景観にやさしいライジングセクターゲート(官民連携の新技術)、を開発しましたのでご紹介します。

(関連資料)

4)水土里のささやき

■ポンプの機能診断と評価 -キャビテーション対策-

東北農政局 北奥羽土地改良調査管理事務所
佐々木久 様より

管内に国営土地改良事業で建設され、現在、土地改良区が管理している用排水機場があります。当機場に設置されたポンプのうち、供用開始後14年が経過した横軸両吸込渦巻きポンプ2台について施設管理者が基幹水利施設管理事業によるポンプの分解・点検整備を実施したところ、羽根車に孔食が見つかりました。

キャビテーションが発生していることが考えられ、この原因の究明を含めて、国営造成水利施設保全対策指導事業により、ポンプの機能診断調査を行いました。ポンプの運転管理状態を点検した結果、ポンプからの送水を一端貯留し、需要に応じて送水する役割を果たす配水槽において、農業用水の一時的な利用集中の影響で、貯留水位が極度に低下する状態が発生していました。

このような状態では、ポンプへの負荷が小さくなり、ポンプの揚水量が過大となるので、これがキャビテーションの主要な原因と断定し、再びキャビテーションが発生しないように、ポンプの運転操作の見直し等を行いました。

(関連URL)http://www.naro.affrc.go.jp/nkk/mail_magazine/files/mm11_04-01.pdf

■福井県2011豪雪 -九頭竜川下流地区からの報告-

北陸農政局 九頭竜川下流農業水利事業所 技術専門官
吉田弘明 様より

福井県は、豪雪地帯対策特別措置法に基づき指定された特別豪雪地帯及び豪雪地帯です。雪に慣れた地域とはいえ、今年の雪は、北陸道、国道8号線、JRが次々と立ち往生したように、1986年以来25年ぶりの記録的な大雪でした。

戦後の福井県の大雪の記録は、1947年・59年・63年・68年・77年・81年・86年で、中でも63年(昭和38年)と81年(昭和56年)には特に大きな雪害を受けました。

福井県の発表によると、2月15日現在で、県内の農業被害は約114百万円、117棟の農業施設が倒壊しました。当国営地区の受益地でも大きな雪害に見舞われましたのでその状況を報告します。

(関連資料)

5)最新の「農工研ニュース」より

■小規模水路の簡易点検・診断・補修マニュアル

農地や水路などの農村地域の資源は、食料生産だけでなく、国土や環境を支えています。これらの資源は、多くの農家の献身的な努力で保全されてきましたが、これからは地域ぐるみで取り組む必要があります。

このような取組を後押しするため、農林水産省では農地・水・環境保全向上対策を推進してきましたが、平成23年度からは、老朽化が進む水路などを補修・更新して長持ちさせる取組(長寿命化)を支援する仕組みが追加されることになりました。

ただし、コンクリート水路が傷んできたとしても、専門的な知識がないと何をして良いか分かりません。そこで私たちは、小規模なコンクリート水路のひび割れや目地の損傷を、農家や地域住民の皆さんが現場で自ら点検・診断し、対策を講じられるように、簡易補修マニュアルを作成しましたのでご利用下さい。

農村総合研究部
地域資源保全管理研究チーム 上席研究員 森丈久

(関連資料)

6)農村工学研究所の動き

■農村工学関係研究行政技術協議会の開催

2月25日に、農村振興局の課長補佐と農工研の研究室長が農林水産省本館7階講堂に集まり、行政施策や農業農村整備事業の推進上に伴う技術的な課題と、それを解決するための研究課題と進捗状況をすりあわせる研究行政技術協議会が開催されました。

従来11月に開催されていたものを行政の動きに合わせて、今回初めて2月に開催したものです。

今回は、これまでの連絡調整事項に加え、研究計画に行政ニーズを的確に反映させる方策、研究成果の実用化に向けた普及戦略等について話し合うこととなり、実務者同士で効率的に意見を交わすため、全体会議と7つの分野別に分科会形式による個別会合を行いました。今後の新たな行政との連携方策の第一歩として考えています。

企画管理部 研究調整役 奥島修二

(関連資料)http://www.naro.affrc.go.jp/nkk/mail_magazine/files/mm11_06-01.pdf

■ブルキナファソ国の地下ダム開発

ブルキナファソ国をご存じでしょうか。位置と首都を知っていればかなりのアフリカ通です。北西アフリカに位置するこの国で、農水省が主導する現地調査が平成23年1月22日~30日に実施され、私は地下水調査・解析の専門家として参加しました。

調査の目的は、日本政府が1997年~2002年に、ブルキナファソのナレ村(Nare)に建設した地下ダム(埋没型アースダム)の利用状況を調べ、アフリカにおける地下ダムの適用範囲の拡大と他の水源とを組み合わせたハイブリッド水源開発という2つの課題の可能性について検討するというものでした。

首都ワガドゥグは日本ではほとんど知られていませんが、アフリカでは芸術・文化都市として知られています。移動中に撮った写真を交えて、この国の一端をご紹介します。

農村環境部長 今泉眞之

(関連資料)http://www.naro.affrc.go.jp/nkk/mail_magazine/files/mm11_07-01.pdf


【編集発行】

〒305-8609 茨城県つくば市観音台2-1-6
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
企画管理部 情報広報課 Tel:029-838-8169

研究センター