農村工学研究所

農村工学研究所メールマガジン

メールマガジン第6号(2010年9月号)

☆農村工学研究所メールマガジンは、ISSN(国際標準逐次刊行物番号)を取得しました。

目次

1)トピックス

■山形県知事から感謝状の贈呈

鶴岡市七五三掛(しめかけ)地区の地滑り災害に対して、技術支援を実施した中里裕臣室長(施設資源部基礎地盤研究室)に山形県の吉村美栄子知事より感謝状が贈られました。

七五三掛(しめかけ)地区の地滑り災害は、平成21年2月に発生し、規模が拡大したため、同年4月に農林水産省と山形県から専門家の派遣が要請されました。中里室長らによる技術助言等を踏まえて実施された緊急対策工事が大きな効果を発揮し、同年7月に地滑りは沈静化しました。現在は、地滑りの恒久対策工事や避難世帯の生活支援などの復旧事業が実施中です。

緊急対策工事が本年7月に完了したことを踏まえ、9月16日に山形県の高橋節副知事が来所され、これまでの技術支援に対するお礼と感謝状を頂きました。

企画管理部 防災研究調整役 木下勝義

(関連URL)

2)イベントのご案内

■農村研究フォーラム2010の開催(第一報)

11月19日(金曜日)の13時00分~17時15分に、秋葉原ダイビル(2階)において、標記フォーラムを開催(第9回)致します。今回は、「農業・農村の持続性と再生可能エネルギーの利活用」をテーマとし、未利用な再生可能エネルギーの利活用と既存のエネルギー利用の効率化等について、内外の講師6名から問題を提起いただき議論を深めます。ご来場をお待ちしております。

申し込み先:nkk-unei◎ml.affrc.go.jp(企画管理部業務推進室)
※メールを送信する際は「◎」を「@」にしてください

3)新しい技術や研究成果の紹介

■強震時の埋設管浮上を低コストで防止する新工法

地中に埋設される管路は、水源地から末端の圃場まで安定的に水を配水するために、適切な深さに設置しなければなりません。また、車両などの路面荷重によって管がダメージを受けないことや地下水によって浮上しないように、ある程度の土かぶりを確保しなければなりません。

このため、特に大口径の幹線の管路(パイプライン)では、地盤を深く掘削して管を設置する必要があり、大規模な工事となるため工事に要する期間も長く、多くの経費が必要です。

新工法は、ジオテキスタイル(土木工事用の繊維シート)で砕石などの礫材を包み、管路の上部に載せて管と砕石を一体化させて埋設する工法で、土かぶりが小さくても浮上に強いパイプラインを低コストで実現できます。さらに、砕石による埋戻しによって、地震時の安全性も向上し、耐震性に優れた管路を経済的に構築することが可能です。平成14年に特許登録し、これまで約73ヶ所、10.1Kmの施工実績があり、コスト縮減に大きく貢献しています。

お気軽にご相談下さい。

施設資源部 土質研究室長 堀俊和

(関連URL)

4)メッセージ

■独立行政法人国際協力機構筑波国際センター所長佐藤武明様より

JICA筑波国際センターでは、途上国から年間約1000人の行政官や研究者を受け入れ、農業や教育などを中心に研修を実施しています。中でもかんがい排水や水管理分野は、稲作、野菜、農業機械とともにJICA筑波の主要な研修コースとなっています。特に、最近はアフリカ支援の強化に伴いアフリカからの参加者も増えています。

かんがい排水分野の研修を実施するに当たり、農村工学研究所の先生方には長年にわたり講義をお願いしており、研修員も第一線の講師陣の講義を受け、大きな成果をあげています。さらに、貴所からはJICAの調査団への参加や、専門家として各国に派遣されるなど、農業・農村開発の国際協力分野で貢献していただいております。

途上国の人口がますます増加するなかで、食料の安定確保のためのかんがい排水施設をはじめとしたインフラ整備や適切な水管理技術の導入などのニーズは依然として大きいものがあります。それらに対応するために、貴所に蓄積された技術・経験を生かして、今後とも途上国の発展のための一層のご支援を期待しております。

(関連URL)http://www.jica.go.jp/tsukuba/

5)水土里のささやき<技術相談>

■小水力発電の採算性の問題を解決する方策を教えて下さい

近年、農業水利施設を利用した小水力発電の開発が広まっていますが、かんがい期と非かんがい期で発電量の差が大きい、小水力発電の発電コストは高い等の理由から、計画段階で断念する場合もあります。これらの問題を解決できるような、ハード面・ソフト面の方策があるでしょうか。また、小水力発電の導入に当たって検討しなければならない事項があれば教えて下さい。

東北農政局 和賀中部農業水利事業所 宮崎聖久 様

□お答えします。(施設資源部 上席研究員 後藤眞宏)

具体的な課題としては、売り側が不利になりがちな売電交渉、かんがい期と非かんがい期の水量差(水利権)、電力土木に精通したコンサルタンツの不足などが挙げられます。これらの課題の解決には、行政的な対処に加え、各地域の地道な取組が必要と考えています。

当所では現在、農業用開水路で簡易に設置できる小規模水車、開水路への設置方法、発生した電力の利活用方法、小水力発電構想を踏まえた地域づくりなどについて研究開発を進めていますので個別にご相談下さい。

(関連URL)

■管路内の調査・診断方法について教えて下さい

パイプラインの管路内面の状態を調査したい場合、実際に管路内に入って目視で確認する方法が確実かと思いますが、管路内の水を抜いたり、通気性を確保して安全に実施する必要があります。管路内の様子を推測できる簡易な方法があればご教示下さい。

関東農政局両総農業水利事業所小野寺敬子様

□お答えします。(施設資源部長 毛利栄征)

パイプラインのどの様な内面状態を確認仕様とするのかによって、調査方法も変わります。パイプの調査・診断方法には様々な技術が開発されており、単純に内面をテレビ画面で見るのであれば、多くの機器が適用できます。

ただし、いずれも一長一短あり、その適用に当たっては、パイプラインのどの様な状態を把握し、どの様な性能を見極めようとするのかを予めしっかりと整理した上で、現場の条件を勘案して慎重に検討して下さい。

(関連URL:詳細回答資料)http://www.naro.affrc.go.jp/nkk/mail_magazine/files/mm06_05-02.pdf

■ダクタイル鋳鉄管の設計・施工上の注意点を教えて下さい

ダクタイル鋳鉄管のパイプラインの路線設計を担当しています。設計・施工を行っていく上で、注意点や最新の技術などがあればご教示下さい。

関東農政局 那珂川沿岸農業水利事業所 宝多南日様

□お答えします。(施設資源部長 毛利栄征)

全てのパイプラインに共通的な路線選定上の留意点があります。パイプラインは、地盤地表面近くに埋設されている線状構造物ですので、地盤の動きがそのままパイプの動きになるという感覚が重要です。このため、地質構造が変化するところや地形の変化点では、設計と施工に最大限の注意を払う必要があります。

ダクタイル鋳鉄管については、継ぎ手部の曲げ性能や離脱防止機能をうまく利用した路線の選定も可能ですが、その適用に当たっては、地盤の特性をしっかりと把握するとともに現場の周辺条件を勘案して慎重に検討して下さい。

(関連URL:詳細回答資料)http://www.naro.affrc.go.jp/nkk/mail_magazine/files/mm06_05-03.pdf

6)最新の「農工研ニュース」より

■バイオマスの地産地消を~メタン発酵技術の実践的活用~

バイオマスとは生物資源(bio)の量(mass)のことで、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」のことです。その種類には、

  • 廃棄物系バイオマス(家畜排せつ物、食品廃棄物、建設発生木材、集落排水汚泥など)
  • 未利用バイオマス(稲わら、もみ殻、林地残材など)
  • 資源作物(エネルギーや製品材料のために栽培されるさとうきび、藻類など)

があります。

メタン発酵法とは、ふん尿などの有機物を微生物に分解させて、メタンガスを発生させる方法です。メタン発酵法は乾燥工程が不要なので、水分の多いふん尿類や食品残さの処理に向いています。メタンガスはボイラーや車両燃料などに利用されます。一方、分解されたふん尿などは、窒素やリンを豊富に含む消化液と呼ばれる即効性の高い良質の液肥となるので、農地にまいて使用されます。

メタン発酵は、全体システムが適切に設計され、地域の方々により管理がなされるようになれば、環境保全とエネルギーの地産地消に貢献できる優れた技術です。

農村総合研究部 資源循環システム研究チーム長 柚山義人

(関連URL)http://www.naro.affrc.go.jp/nkk/mail_magazine/files/mm06_06-01.pdf

7)農村工学研究所の動き

■農業農村整備のための実用新技術説明会の開催

9月29日に、全国町村会館(東京都永田町)において、本年度で7回目となる標記の説明会を開催しました。会場には、農林水産省、地方公共団体、関係法人、民間会社等の多岐にわたる農業農村整備に関わる技術者ら245名(当所職員を除く)が来場しました。

来賓の農水省農村振興局・斎藤政満整備部長から、「ストックマネジメントは更新から長寿命化へと舵を切っている。農業水利施設の機能を維持・増強する技術は今後とも重要であり、農工研の研究開発に期待している。」とご挨拶がありました。引き続き、(株)コンサルテイメント代表取締役・高橋昭夫氏の基調講演では、技術開発の「死の谷」を乗り越え、技術力競争時代を生き抜くため、技術マネジメント(MOT)の効果的な活用が強調されました。

今回初めて取り入れたインデクシング発表は、ポスター展示の内容を概観でき、関心のある課題を絞り込めるなどと好評でした。その後、研究担当者は、来場された方々から寄せられる実践的な質問に約1時間受け答えし、実用化や事業化への手応えを感じているようでした。

技術移転センター 移転推進室長 丸茂伸樹

(関連URL:会場風景)http://www.naro.affrc.go.jp/nkk/mail_magazine/files/mm06_07-01.pdf

■インターンシップ技術講習生(第二期)のつぶやき

本年度のインターンシップ第二期生(8月23日~9月3日)として来所した大学3年生5名の技術講習が終了しました。指導に当たった研究者から実務の一部を任され、就業を体験しました。彼らが社会人になっても、農村工学分野との関わりの中で応援していきたいと思います。提出されたレポートの中から一部抜粋しました。

技術移転センター 移転推進室 交流チーム長 高梨典子

(関連URL:講習生の感想)http://www.naro.affrc.go.jp/nkk/mail_magazine/files/mm06_07-02.pdf

■所内研究発表会の開催

農研機構は、農林水産大臣から与えられた中期目標に基づいて研究活動を行っています。本年度は、第2期中期目標期間(平成18~22年度)の期末に当たることから、各研究チーム・研究室の活動実績を相互に理解し、次期における研究活動の連携をさらに深める目的で、9月16~17日に所内研究発表会を開催しました。

各研究チーム・研究室が、全研究職員を前に20分間の研究発表を行い、研究部単位で30分間の意見交換を行いました。農村工学分野の研究は多様であり、専門領域を越えた情報交換は、日常的には個人レベルに限定されがちです。今回の発表会は、研究部や専門領域にとらわれず、組織を挙げて交流する場になったと感じました。

企画管理部 業務推進室長 小川茂男

■日韓共同シンポジウムの開催

当所と韓国農業公社農漁村研究院(RRI)との間で、2008年にMOUを締結し、「農業の多面的機能増進と新たな価値をもった農業と農村の創造のための管理技術の開発」に関する研究を3年間実施することになっています。このMOUに則り、毎年度、共同でシンポジウムを開催しており、今年度は9月14日につくばで開催しました。

今回のシンポジウムは、「Sustainable agricultural environme-nt management for green growth and biodiversity :shiftingfrom quantity management to quality management」(和訳:緑の成長と生物多様性保全のための持続可能な農業環境管理:量的な管理から質的な管理へ)と題し、日韓双方から3名の研究者が成果を発表し議論しました。

農村環境の健全な成長は、日韓両国の重要な政策課題です。農村環境が類似している日本と韓国では背景や問題意識に共通点が多く、日韓両国の研究者が、それぞれの強みを活かしながら効率的に研究を進めています。

農村環境部 環境評価研究室 松森堅治

(一口メモ)MOUとは
二者間の合意を交わす覚え書きのことを、英語ではMemorandumof Understanding (MOU)と言うのが一般的です。

(関連URL)

8)研究チーム・研究室等のご紹介

◇農村総合研究部広域防災研究チーム

我が国はその地形条件や気象条件から、豪雨災害、地震災害等を極めて被りやすい条件のもとにあります。農村地域においても、毎年災害が発生し、尊い人命が失われ、農地や農業水利施設が被災しています。そのため、災害が発生した場合の迅速な復旧および防災・減災のための対策は、重要な行政課題であり、研究課題でもあります。

広域防災研究チームでは、現在5人の研究者が、農地・農業用施設の災害予測技術や防災・減災対策方法などの研究開発に取り組んでいます。

9)研究ウォッチ

■真夏の温室の中はトマトも人も暑い!~霧で温室を冷やす~

施設栽培は露地栽培と比較すると、雨が当たらないので病害の発生が少なく、また、植物の生育にとって良好な環境をつくることができるので、質の高い作物を安定して出荷できます。ただし、温室の中の気温が上昇すると植物は生理障害を起こすため、夏季に高温となる地域では、通常、夏季の間は温室の利用を休止します。

そこで私たちは、自然換気と細霧冷房を工学的に組み合わせた温室の冷却技術の開発に取り組んでいます。この技術は、水の気化冷却を利用するので、低コストで環境負荷が極めて小さいという利点があります。ただし、水の噴霧により湿度が上昇するので、温室内の相対湿度が100%に達すると冷却効果はなくなります。すなわち、この技術は、温室内の気温と湿度の関係や気流などを精密に制御することによって最大の効果を発揮します。

この研究成果によって、夏季の温室利用が拡大すれば、農業経営の安定と雇用創出にもつながります。なお、細霧冷房を積極的に活用する場合には、十分な水源の確保が必要です。

農村総合研究部 農業施設工学研究チーム
主任研究員 石井雅久

(関連URL:細霧冷房の効果(動画3分20秒))http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/pr_report/files/06onshitu.wmv

10)こんにちは農業・農村

■栃木県で農業体験

農林水産省採用1年目の行政職員を対象に、農業の現状を学ぶため、12日間農家へホームステイする農村派遣研修があり、私は、栃木県で水稲・アスパラガスの複合農業を営むKさんにお世話になりました。

Kさんは、「コメは日本の水田に最適な作物なのに、麦を無理やり作ろうとするから、耕作放棄地(荒地)が増えてしまうのだと思う。」、「麦は収穫の時期が梅雨と重なり博打のようだし、大豆は3年目に収量が半減する。コメを自由に作れるなれば荒地は減ると思う。」、「海外援助用に長粒米を栽培すればいいのではないか。」、「(近くにでコスモスを植えた保全管理田を指し)コメが作れるならば、大型機械はあるし、作業受託したいけどね。」などと話しておられました。

食料自給率の向上という観点から、コメの転作が大きな課題となっています。私はKさんのお話を聞きながら、農業政策や農業研究において、栽培技術の一般性と農業経営の地域特性とのバランスを取ることの大切さと難しさに改めて気付かされました。

企画管理部 業務推進室企画チーム 瑞慶村知佳(9月末まで行政研修中)

(関連URL)http://www.naro.affrc.go.jp/nkk/mail_magazine/files/mm06_10.pdf

【編集発行】

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(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 
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