生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

突然変異を活用した生産環境と消費者ニーズに優位な食用きのこ新品種の開発

年度2019ステージ開発研究分野林業・林産 (きのこ)適応地域全国

キーワードきのこ、品種育成、DNAマーカー、無胞子性、エルゴチオネイン高含量

課題番号 27036C
研究グループ 鳥取大学農学部, 奈良県森林技術センター, 北海道立総合研究機構林産試験場, 株式会社北研, 株式会社スリービー
研究総括者 鳥取大学農学部 松本 晃幸
研究タイプ 育種対応型 Aタイプ
研究期間 平成27年~30年 (4年間)
PDF版 突然変異を活用した生産環境と消費者ニーズに優位な食用きのこ新品種の開発 (529.2 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

きのこの生産現場では、子実体から大量に飛散する胞子による生産者の健康被害等の問題解決と市場競争力を有する品種の育成が早急に求められている。突然変異による有用形質の迅速な導入育種の確立はその有効な解決方法である。このため、本研究では、紫外線誘導変異体を材料にしてDNAマーカー育種とTILLING法を用いて、胞子の問題解決に繋がる無胞子性を具備し、実需者及び消費者ニーズが見込まれる柄短性シイタケ及びエルゴチオネイン高含量タモギタケ品種の育成を達成目標とする。

2 研究の主要な成果

  • シイタケ、タモギタケの無胞子性変異検出マーカーを原因遺伝子を特定して得た情報に基づいて開発し、菌糸体段階でのリアルタイムPCR法による迅速・正確な大規模マーカーアシスト選抜を実現した。
  • TILLING法によりタモギタケ変異体ライブラリーより元株 (野生型) の2倍近く、タモギタケの既知データベース対比でもトップクラスのエルゴチオネイン高含量変異株を獲得し、優良品種作出の素材とした。
  • シイタケの無胞子性かつ柄短性を備えた株を育成した。柄短形質が検出できる表現型判定法を開発した。
  • タモギタケの無胞子性かつエルゴチオネイン高含量品種を開発し、その栽培使用によって施設の飛散胞子量が大幅に低減されることを初めて証明した。

公表した主な特許・品種・論文

  • 米山彰造他. タモギタケ胞子欠損性変異体に関する遺伝学的および細胞学的解析. 日本菌学会会報 58(12), 41-50 (2017).

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • DNAマーカーを活用したマーカーアシスト選抜やTILLING法を活用した育種選抜系の成果を公表し、試験研究機関や種苗会社への普及を図ることで、他のきのこ種の無胞子性等有用な品種の迅速な開発が期待できる。
  • シイタケの無胞子性柄短株は栽培性能の向上を図った後、タモギタケの無胞子性エルゴチオネイン高含量株は優先実施権終了後、種苗会社等に普及し、全国展開を図っていく予定。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2019年度) は、タモギタケの無胞子性かつエルゴチオネイン高含量品種を登録申請する。
  • 5年後 (2023年度) は、シイタケの無胞子性柄短かつ栽培性能の高い品種を登録申請する。
  • 最終的には、タモギタケやシイタケの加工品も含めた売上げ6億円以上を目指し、無胞子化技術を他のきのこ種に広く応用し、きのこ栽培での無胞子化をスタンダードとした生産環境の改善を目指す。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • 長年きのこ生産の現場で課題となってきた胞子の問題の解消と消費者ニーズに応える魅力ある品種開発に繋がる成果が本研究で得られた。開発した技術が普及することにより、中山間地域を活性化するきのこ産業の拡大と六次産業化の推進が期待される。とくに、エルゴチオネイン高含量タモギタケは健康食品への製品化と販売に繋がることで、国内アンチエイジング市場の0.1%のシェアで約30億円程度の経済効果が期待できる。
  • 本研究の成果を活用した無胞子性品種栽培の普及によって生産現場における胞子の飛散量が大幅に低減することを示した。これにより、安定生産に必須である生産環境の快適性と生産者の作業負担が大いに改善される。さらに、優れた抗酸化能を示すエルゴチオネインを高濃度で含むタモギタケ品種の流通は今後、活性酸素種に起因する様々な疾病の予防対策としての貢献が期待できる。

突然変異を活用した生産環境と消費者ニーズに優位な食用きのこ新品種の開発

問い合わせ先 : 鳥取大学農学部会計係 TEL 0857-31-5345