生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

国産果実安定生産のための花粉自給率向上に繋がる省力・低コスト花粉採取技術の開発

年度2019ステージ応用研究分野農業 (果樹)適応地域全国

キーワードナシ・キウイフルーツ・スモモ、花粉採取効率化、花粉使用量削減、受粉作業用機械、花粉採取用品種

課題番号 28014B
研究グループ 埼玉県農業技術研究センター, 群馬県農業技術センター, 新潟県農業総合研究所園芸研究センター, 株式会社ミツワ, 静岡県農林技術研究所 (企画調整部, 果樹研究センター), 鳥取大学農学部, 農研機構 農業技術革新工学研究センター
研究総括者 埼玉県農業技術研究センター 前島 秀明
研究タイプ 産学機関結集型 Bタイプ
研究期間 平成28年~30年 (3年間)
PDF版 国産果実安定生産のための花粉自給率向上に繋がる省力・低コスト花粉採取技術の開発 (PDF:570.1 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

一般的な落葉果樹では、結実確保のために人工受粉が必須な作業となっており、生産者は自ら受粉に必要な花粉調達を行っているが、労働負担が大きいなどの理由から輸入花粉を使用する生産者が増加している。しかし、輸入花粉による重要病害の侵入、輸入量の不安定化、価格の高騰などにより、産地からは国産花粉の安定生産が求められている。そのため、効率的花粉採取技術・花粉使用量削減技術の確立及び受粉作業用機械の開発を行い、輸入花粉に頼らない果実生産を支援する。

2 研究の主要な成果

  • 花粉採取樹を低樹高ジョイント仕立てにし、一斉採花を行うことにより、棚栽培、立ち木栽培に比べ50%以上の採取効率が向上することを明らかにした。
  • 10°Cで30%以上の花粉発芽率を有したナシ3品種、10°Cで50%以上の花粉発芽率を有したスモモ2系統の花粉採取専用品種を選抜し、ナシ、スモモともに主要品種への受粉が可能であることを明らかにした。
  • 静電風圧式受粉機、手持ち式花蕾採取機、葯分離・花糸分離一体型機械、回転受粉毛式受粉機の受粉作業に係る機械開発により、花蕾採取・受粉時間の削減、花粉使用量の削減効果を明らかにした。
  • ナシの除芽、摘蕾作業の導入による開花数制限は花粉使用量の30%以上削減、着果管理時間の38%削減効果があることを明らかにした。

公表した主な特許・論文

  • 特願 2017-170837 花蕾採取機、手持ち式花蕾採取機、及び自走式花蕾採取機 (深井智子、塙圭二、大西正洋(国研)農研機構農業技術革新工学研究センター)
  • Kuroki,K et.al. Pear pollen selection using higher germination properties at low temperatures and the effect on the fruit set and quality of Japanese pear cultivars Scientia Horticulturae 216, 200-207 (2016)

3 今後の展開方向

  • 開発した技術、機械、選抜した品種を導入した現地実証を開始し、経営試算を行って大規模化に向けた問題点を把握し、花粉の国内流通の基礎を築く。
  • 花粉の大量採取に適合した樹形、大型機械の開発、安全で簡便な花粉精選技術・受粉作業用機械の開発で産業として成立する総合的技術開発を図る。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2020年度) は、花粉採取現地圃場で試験的な花粉採取を開始する。
  • 5年後 (2023年度) は、花粉採取圃場の総合的採取技術による国産花粉の地域内流通を開始する。
  • 最終的には、大規模花粉採取専用圃場に対応した機械開発で国産花粉の広域的流通を実現する予定。

4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献

  • 受粉用品種の効率的栽培、花粉使用量削減、受粉作業用機械導入により、国産花粉の流通が可能になり、輸入花粉による重要病害の侵入阻止に役立つことで、安全で安心な国産果実の安定生産に貢献する。
  • 花粉採取作業の集中化、複数樹種での導入が進めば、国産花粉の産業化に繋がり、新たな地域振興、雇用の創出、高齢者、障がい者等の就労対策等への貢献も可能となる。

国産果実安定生産のための花粉自給率向上に繋がる省力・低コスト花粉採取技術の開発

問い合わせ先 : 埼玉県農業技術研究センター久喜試験場 TEL 0480-21-1113