生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

かんしょ産地で発生している立枯・腐敗症状の原因究明とその抑制対策の提示

年度2019ステージ開発研究分野農業 (病害虫)適応地域九州

キーワードサツマイモ、立枯・塊根腐敗、サツマイモ基腐病、新病害、疫学的調査

課題番号 30038C
研究グループ 農研機構 九州沖縄農業研究センター, 農研機構 中央農業研究センター, 鹿児島県農業開発総合センター, 宮崎県総合農業試験場, 宮崎県農政水産部農業経営支援課
研究総括者 農研機構 九州沖縄農業研究センター 小林 有紀
研究タイプ 緊急対応研究課題
研究期間 平成30年 (1年間)
PDF版 かんしょ産地で発生している立枯・腐敗症状の原因究明とその抑制対策の提示 (488.0 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

2018年秋に、鹿児島県および宮崎県のかんしょ産地で株立枯や塊根腐敗症状が多発し、深刻な収量低下が問題となった。そこで、次年度の発生抑制対策を講ずるため、その原因を解明することを目的とする。このため、(1) 原因菌の解明、(2) 既存登録農薬の効果の解明、(3) 病害発生要因の解明、および (4) 発病抑制対策の提示を達成目標とする。

2 研究の主要な成果

  • かんしょの立枯・塊根腐敗症状が認められた圃場を調査し、基腐 (もとぐされ) 病菌、乾腐病菌、Fusarium 属菌 (つる割病菌を含む) および茎根腐細菌病菌の発生圃場率を明らかにした。
  • 土壌消毒剤2剤が基腐病菌の、苗消毒剤2剤および茎葉散布剤2剤が基腐病菌および乾腐病菌の培地上における生育を抑制することを明らかにし、これら薬剤が将来的に農薬として利用できる可能性を示した。
  • 疫学的調査を行い、統計学的手法により、立枯・塊根腐敗症状の発生には、過去の発生履歴、圃場の排水不良、適切な土壌消毒や苗消毒を実施していないことが影響していることを明らかにした。
  • 作付に向けた発病抑制対策を策定し、技術者向けおよび生産者向けの説明資料を作成し、かんしょ生産・栽培指導に係る関係機関へ配布した。

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • 県機関 (鹿児島県および宮崎県) は、今後もかんしょ生産・栽培指導に係る関係機関と連携して、本課題において策定した発病抑制対策を生産者へ周知し、実践を推進する。
  • 本課題で得られた成果をもとに、病害診断技術の開発、病害発生追跡調査等を行って、より詳細に病害発生実態を解明するとともに、薬剤、資材、抵抗性品種等を利用した病害防除技術を開発する。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2020年度) は、農薬登録を基腐病へ拡大する。国内既存品種の基腐病抵抗性程度を明らかにする。
  • 5年後 (2023年度) は、基腐病の診断・防除技術、発生要因・発生確率予測ツールを開発する。
  • 最終的には、基腐病診断・防除マニュアルを作成し、開発した技術の普及を目指す。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • 今後も基腐病の発生が続き、被害が全国のかんしょ産地にも拡大することになれば、数百億円の経済損失額が推定される。策定した発病抑制対策を実施することにより、この損失を抑制することができる。
  • マニュアルの普及により、かんしょの生産量が安定し、でん粉や焼酎などの加工食品が製造されることで、農家の経営の安定、地域経済の活性化、国民の豊かな食生活の実現などへの貢献が期待できる。

かんしょ産地で発生している立枯・腐敗症状の原因究明とその抑制対策の提示

問い合わせ先 : 農研機構 九州沖縄農業研究センター TEL 0986-24-4270