生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2009年度 研究成果

麹菌における染色体工学の確立と高機能性麹菌の育種

研究の目的

麹菌は、醤油・味噌・酒などの醸造産業のみならず、酵素、医薬品、化成品、食品等の産業においても重要な産業用微生物であり、2005年にゲノムは解読されたものの、未だに機能がわからない遺伝子が多数存在し、実用化に向けた技術開発は遅れている。本研究では、これまで育種が困難であった実用麹菌に遺伝子ターゲティングという新たな育種法を提供するだけでなく、染色体を自在に加工することを可能にし、麹菌の持つ潜在的な機能を明らかにしつつ、これまでの技術では得られなかった特性を備え、それぞれの産業に最適化したオーダーメード麹菌を作製することを目的とする。

研究項目及び実施体制(◎は研究代表者)

  • 染色体加工技術を用いた転写因子の機能解析と高機能性麹菌の作製
    (◎小山泰二/財団法人野田産業科学研究所)
  • 比較ゲノミクスによる標的遺伝子領域の決定と解析
    (町田雅之/独立行政法人産業技術総合研究所)

研究の内容及び主要成果

  • 麹菌ゲノム解析から予想された転写制御因子約400個の遺伝子の破壊を試み、約300個の遺伝子破壊株を得た。
  • 破壊株をスクリーニングし、分生子形成、マンナン資化性、ペニシリンやコウジ酸の合成などに関する転写制御因子を見出した。
  • 7番、8番染色体をそれぞれ20~25%欠失させた麹菌を作製し、これを宿主として遺伝子の高発現を試みた。
  • 近縁の種とのsynteny解析によって、麹菌A. oryzaeのゲノム固有のnon-syntenic領域に存在する遺伝子が、固体培養で特異的に発現が誘導され、麹菌の伝統的産業での利用に寄与することを明らかにした。

見込まれる波及効果

本研究で開発した遺伝子ターゲティングとその応用である染色体加工技術は、これまで困難であった麹菌における遺伝子解析や分子育種を容易に行うことを可能にした。これにより、今後多くの遺伝子の機能が明らかにされ、これまでにない優れた性質を有する麹菌の育種が可能となり、醸造・食品産業やバイオ産業において、高い安全性と機能性に優れた高付加価値商品の開発、食品加工残渣の減量化などにつながる新技術の創出が期待される。また、麹菌に多く存在する二次代謝関連遺伝子の機能や発現制御機構に関する知見が多く得られ、有用な二次代謝産物のみを選択的に高生産し、純度高く得ることが可能になった。

主な発表論文

  • Tamano K., et al. : Transcriptional regulation of genes on the NSB blocks of Aspergillusoryzae and its functional relationship to solid-state cultivation. Fungal Genet. Biol., 45: 139-151 (2008)
  • Tokuoka M., et al. : Identification of a novel polyketide synthase-nonribosomal peptide synthetase (PKS-NRPS) gene required for the biosynthesis of cyclopiazonic acid in Aspergillus oryzae. Fungal Genet. Biol., 45: 1608–1615 (2008)
  • Takahashi T., et al.: Generation of large chromosomal deletions in koji-molds Aspergillus oryzae and Aspergillus sojae via a loop-out recombination. Appl. Environ. Microbiol., 74: 7684-93 (2008)
  • Machida M., et al.: Genomics of industrial Aspergilli and comparison with toxigenic relatives. Food Addit. Contam. 25: 1147-1151 (2008)
  • Jin. F. J., et al.: A trial of minimization of chromosome 7 in Aspergillus oryzae by multiple chromosomal deletions. Mol. Genet. Genomic, 283: 1-12 (2010)
  • Ogawa. M., et al.: Genetic analysis of conidiation regulatory pathways in koji-mold Aspergillus oryzae. Fungal. Genet. Biol., 47: 10-18 (2010)

研究のイメージ

麹菌における染色体工学の確立と高機能性麹菌の育種

法人番号 7050005005207