生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

BRAINテクノニュース

BRAINテクノニュース 第66号

発行年月日: 1998年3月15日

総説

大規模エルニーニョは日本農業へどのような影響を及ぼすか?

山川 修治
農林水産省 農業環境技術研究所

1997年春に始まったエルニーニョ現象は瞬く間に今世紀最大規模にまで達した。そのインパクトは世界各地に及びつつあるが、日本への影響は果たしてどのようなかたちで現れ、展開していくのだろうか? 1997年は冷夏の予想に反して暑夏となった。そして、1997~98年の冬は、一過性の寒波の到来はあったが、暖冬傾向で推移した。今後、1998年の梅雨季~夏季には北日本を中心に冷害前線・台風絡みの集中豪雨が懸念される。

国内情報

哺乳類の発生における雌雄ゲノムの役割

河野 友宏
東京農業大学総合研究所

哺乳動物では、雌雄どちらか一方のゲノムのみを持つ単為発生胚は産子にまで発生することができない。これは生殖細胞の形成過程で行われる後天的な遺伝子への刷込みにより、雌雄のゲノム間に決定的な差異が生じていることに起因する。最近、われ我はこの遺伝子刷込みを人為的に改変すると、単為発生胚の発生が劇的に延長することを明らかにした。ここでは、遺伝子刷込みと胚発生の関係について考察する。

農業用施設の地震災害低減を目指して-ため池防災データベースの開発と防災面への応用-

谷 茂
農林水産省 農業工学研究所

最近、地震によって農業用施設であるため池(灌漑用の小規模アースダム)等に被害が発生していて、決壊が生じた場合に下流域の2次災害も懸念されている。特に阪神大震災では1,300以上のため池が被害を受けたことから、ため池の自然災害低減のためのデータベース構築の必要性が強まり、「ため池防災データベース」の構築を行った。本報文は、今回開発したデータベースの内容とその防災面への応用について述べたものである。

果樹に病原性を示すホモプシス属菌のDNA診断法

兼松 聡子
農林水産省 果樹試験場

果樹に病原性を示すホモプシス属菌のDNA診断を、形態での判別が困難な種を中心に行った。その結果、ナシ胴枯病菌、モモホモプシス腐敗病菌、リンゴ胴枯病菌は同じであり、その中にはそれぞれ2種類の菌が存在することが判明した。これら2種は接種試験、交配試験においても別の種類であることが確認された。カンキツ黒点病菌、ブドウつる割れ病菌、ブドウ枝膨病菌、西洋ナシ胴枯病菌はそれぞれ特有のパターンを示し、本法による、果樹に病原性を示すホモプシス属菌のDNA診断の有効性が認められた。

機能性担体を用いた農用地の窒素対策技術の開発と実用化-2、3の提案

安田 公昭・坪田 宏・斎藤 仁信・水上 春樹
株式会社バイオマテリアル

畑地からの浸透水による地下水の硝酸態窒素汚染を防止する方策を考案するとき、輪換田畑は格好のモデルケースになる。あらゆる畑地土壌中には脱窒菌が常在し、脱窒の主役は通性嫌気性細菌であり、硝酸塩の脱窒は嫌気的雰囲気下で起こる。土壌の団粒構造中では、湛水させると団粒内は嫌気的となり、脱窒に必要な有機炭素源が供給されれば硝酸塩の脱窒がおこる。畑地では、灌漑される時(降雨など)に脱窒が起こりうる条件が揃う。しかしながら、一般的な畑地においては、灌漑時の浸透水を脱窒に必要な一定期間湛水させるための不透層を造成する必要がある。脱窒に必要な有機炭素源を湛水層に直接送り届ければ、効率の良い脱窒が期待できる。梅雨時期などの過剰な灌漑による浸透水は、暗渠から排水できるようにする。排水速度が高くなれば脱窒能が追いつかなくなるため、暗渠排水を集積して脱窒する装置を付帯する必要がある。

地域の先端研究

カラフルポテトを創る -アントシアニン、カロチノイド含有ばれいしょ品種の育成-

森 元幸
農林水産省 北海道農業試験場

ばれいしょの普通栽培品種は、いもの肉色が白~淡黄色である。ところが原産地である南米アンデス地域には、アントシアニンで赤~紫色、カロチノイドで濃黄色に着色した近縁栽培種が存在する。これらを遺伝資源として、従来とは異なる着色肉系統を育成した。S.phurejaに由来する赤肉色および濃黄肉色を有する2倍体系統、S.tuberosum ssp. andigenaに由来する赤肉色および紫肉色を有する4倍体系統である。含有する色素は、単に色彩の多様な食材に役立つばかりでなく、抗酸化能などの機能性を有している。平成9年に種苗法による品種登録の申請を行ったが、従来の普及品種とは異なり原々種の生産は行われていない。普及のためには、さらに実用形質の改良をすすめる必要がある。

ニホンナシ新品種「おさゴールド」の作出

井上 耕介
鳥取県園芸試験場

ニホンナシ「ゴールド二十世紀」は「二十世紀」にガンマ線を緩照射し誘発・選抜した黒斑病耐病性突然変異品種で、殺菌剤が大幅に削減できる。「おさ二十世紀」は自家和合性で人工受粉が省略できるが、黒斑病にり病性である。そこで、「おさ二十世紀」にガンマ線を緩照射して、黒斑病耐病性突然変異体を誘発・選抜したのが、人工受粉が不要で、殺菌剤の散布回数が削減できる「おさゴールド」である。

文献情報

細胞質型ホスホリパーゼA2欠損マウスにおける繁殖力低下と虚血性脳損傷

Reduced fertility and postischaemic brain injury in mice deficient in cytosolic phospholipase A2
Bonventre, J.V., et al. Nature, 390: 622 (11 Dec. 1997)

雄の生殖機能の中のエストロジェンの役割

Do males rely on female hormones?
Sharpe, R.M., Nature, 390: 447-448 (4 Dec. 1997)

A role for oestrogenes in the male reproductive system
Hess, R.A., et al. Nature, 390: 509 (4 Dec. 1997)

アラビドプシスにおける抵抗反応シグナルが収束すると予想されるタンパク質(NDR1)

NDR1, a pathogen-induced component required for Arabidopsis disease resistance
Century, K.S., et al. Science, 278: 1963-1965 (1997)

海外便り

生物殺虫剤としての組換えバキュロウイルスの改善に関する研究 -カリフォルニア大学デイビス校での2年間-

 谷合 幹代子
農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所

[項目]

  • はじめに
  • サソリ神経毒を発現するウイルス
  • 昆虫ホルモン加水分解酵素を発現するウイルス
  • 遺伝子組換えバキュロウイルスの展望
  • ポスドクとしての義務
  • おわりに
法人番号 7050005005207