開発レポート

開発レポート第22回 「新品種「春のいぶき」による初夏の新ソバ需要拡大と春まき栽培法の発展」

「蕎麦」は日本の伝統食ですが、その原料の自給率は2~3割程度であり、多くは中国、北米、オーストラリア等からの輸入に依存しています。農業経営においてソバ栽培は、栽培期間が2~3ヶ月と非常に短く、栽培に手間もかからない(労働時間が2~6時間/10a)ことから、他作物の合間にソバ栽培する輪作に活用されてきました。しかしながら、近年台風等の気象災害により、国産ソバの供給は不安定さを増してきております。国産ソバの需要拡大を図るには、高品質のソバを安定的に供給することが重要です。

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開発レポート第21回 「大麦新品種「ゆきみ六条」が広げる地域連携の輪」

「ゆきみ六条」の育成のきっかけは、新潟薬科大学の「新たな麦焼酎造りを通じて、地域再生、地域貢献をしよう」という提案でした。その提案に応える形で、中央農業研究センター(以下、中央農研とする)・北陸研究拠点で、開発・品種登録出願を行いました。その後「ゆきみ六条」は、その品種特性を生かして、「焼酎」だけではなく、「大麦クッキー」などの生産・販売にも利用され、障がい者福祉施設なども関係した新潟市での地域連携(農業-福祉-企業)に拡がりつつあります。
この一風変わった大麦新品種の誕生、成長をご紹介いたします。

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開発レポート第20回 「ダブルアーチ補強技術などを用いた次世代型パイプハウスに関する産学官連携・普及活動」

近年の台風の大型化による自然の脅威や原油価格の高騰などの社会的要因から、園芸用施設を強く・丈夫にすることや省エネ・低コスト化を図ることが一層重要になっています。しかしながら、わが国の施設園芸面積の約8割は依然としてパイプハウス(鋼管パイプを骨組としたビニールハウス)が占めており、これらを対象とした技術開発は、パイプハウスが広く普及した四半世紀前に比べて大きな進展はみられていません。

そこで、パイプハウス自体のバージョンアップを図り、保温性を最大限に高めるため、「日本型日光温室」というコンセプトで、民間企業、大学および公設試験研究機関が協力して技術開発に取り組みました。また、強度を高めるために、アーチ部分を二重にするダブルアーチ構造に取り付ける簡易な補強部材を開発しました。

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開発レポート第19回 「飛ばないナミテントウの開発と製剤化」

アブラムシは、野菜や花、果樹などの葉や茎から汁を吸いウイルス病を媒介する重要な害虫です。ナミテントウは、このアブラムシを1日に100匹以上食べる天敵であることが知られており、アブラムシ防除への利用が検討されてきました。しかし作物上に放しても飛んでいくためアブラムシ防除につながらないという問題がありました。そこで遺伝的に飛翔能力を欠く系統である「飛ばないナミテントウ」を育成し、「天敵製剤(有害生物の防除のために生物を農薬として使用するもので、生物農薬とも言う)」として実用化するための研究に着手し、平成18(2006)年にはほぼ全ての個体の飛翔能力を失った系統を育成しました。

平成20(2008)~22(2010)年度にかけて、農研機構、株式会社アグリ総研、岡山大学、近畿中国四国地域の公設試験研究機関と連携して研究プロジェクトを実施しました。本プロジェクト終了後、株式会社アグリ総研が「飛ばないナミテントウ」の農薬の登録申請を行い、平成25(2013)年に施設野菜類用の天敵製剤(テントップ)として登録し、平成26(2014)年より販売が開始されました。

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開発レポート第18回 「簡易迅速なコシヒカリ判別キットの実用化」

食品表示法において、精米及び玄米には品種とその使用割合の表示が義務付けられています。こうした品種表示の信頼性を担保するため、科学的に品種を判別する技術が不可欠であり、農研機構をはじめとして多くの機関で技術開発が行われてきました。
現在日本では400以上の米品種が栽培されており、さらに毎年新品種がデビューしています。その中にあって、コシヒカリはその食味の良さから非常に人気の高い品種です。そのため、品種偽装への対策、品種表示の担保としてコシヒカリの品種判別技術には根強い需要があります。

コシヒカリの簡易迅速判別キットは、精米、玄米及び炊飯米を粉砕なしに処理するDNA抽出工程と、いもち病抵抗性遺伝子Pii の有無をLAMP法で検出する検査工程の2つからなり、いずれも試験管ミキサー、卓上簡易遠心機といった汎用機器だけを用いて約1時間で全工程を行うことができます。結果の判定は、2つの検査液の蛍光発色によって行い、コシヒカリ、コシヒカリ以外の品種、コシヒカリと他品種の混合の3パターンを見分けることができます。「コシヒカリLAMP判別キット」は、平成24(2012)年末に、ニッポンジーン株式会社から販売されました。

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開発レポート第17回 「硝酸態窒素濃度が低いイタリアンライグラス品種の開発」

牛の飼料中に硝酸態窒素が多く含まれていると、それを食べた牛が硝酸塩中毒(食欲不振やふらつき、時には呼吸困難や突然死を引き起こすこともある)を起こします。飼料作物への硝酸態窒素の蓄積は通常、適切な施肥管理や最適な収穫時期を守ることにより低く抑えることができます。しかし実際の生産現場では堆肥の投入量が多すぎたり、天候不順等の理由で硝酸態窒素が蓄積してしまう場合があります。そこで自給飼料中の硝酸態窒素による牛への悪影響を少なくするため、平成9(1997)年に硝酸態窒素を蓄積しにくい牧草(イタリアンライグラス)の品種育成に着手し、幼苗を利用して硝酸態窒素の蓄積程度を検定する方法を開発しました。

平成17(2005)年には、この方法を利用して、硝酸態窒素濃度が低いイタリアンライグラス品種「優春」を茨城県畜産センター、雪印種苗(株)と共同で育成しました。その後、さらに硝酸態窒素を蓄積しにくい特性を持つ育種素材を開発し、これを利用することで、平成26(2014)年までに「LN-IR01(商品名:ゼロワン)」「SI-14」「JFIR-20」の3品種を育成しました。

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開発レポート第16回 「お米の乳白粒の多発を収穫前に予測する装置」

近年、地球規模で温暖化が進行していますが、日本でも米粒内部の一部が白濁したまま成熟する"白未熟粒"の発生が多くなっています。白未熟粒の一つである乳白粒(お米の側面の1/2以上が白濁したもの)は、夏場が高温かつ日照不足になった場合や、高温乾燥風(フェーン)が吹いた場合に多く発生します。
気象災害などで農作物の品質を加味した収量が一定の割合以上減少すると、農業共済制度により、経済的な補償を受けることができますが、収穫前の稲の状態から玄米品質の低下を予測することは容易ではありません。平成19(2007)年に南九州で乳白粒が多発した時も、倒伏はほとんどなく、登熟時(籾の中にデンプンが送られ、米粒が形成される時期)の籾の色もきれいであったため、ほとんどの農家は事前に被害申告を行わず、被害補償を受けられないという事態が発生しました。

そこで、農研機構九州沖縄農業研究センターでは、品質被害発生時の適確な被害申告や玄米品質による仕分け入荷への活用が図れる「乳白粒の多発を収穫前に予測する装置」を(株)ケツト科学研究所と開発しました。

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開発レポート第15回 「果樹ウイルス病診断キットを利用した産学官連携・普及活動」

カンキツの温州萎縮病は、温州萎縮ウイルス(以下「SDV」とする)により引き起こされる病害で、わが国ではカンキツに広く感染し、各地で大きな被害を出しています。
SDVは、他の果樹ウイルスと同様に接ぎ木をすることで確実に伝搬し、いったん感染してしまうと有効な治療方法はありません。そこで、唯一の対策はSDVに感染していないウイルスフリーの母樹から健全な苗木を育成して供給することとなりますが、気がつかないうちに、汚染された苗木を生産してしまうことがあります。これを防ぐために、苗木増殖の前後でSDVの感染を確実に診断する必要がありますが、その多くは特別な機器や専門知識が必要で、苗木増殖に携わる者や苗木を購入する生産者などが自ら診断することはできませんでした。そこで、誰でも場所や設備の制約を受けること無く、簡単にSDV診断を行うことができるキット(以下、「SDV簡易診断キット」という)を開発し、今回市販するに至りました。



図 SDV簡易診断キットの
「フィンガーマッシャー」(上)と「テストプレート」(下)

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第14回 「機能性乳酸菌」を利用した産学官連携・普及活動」

畜産草地研究所は、約2,000株の乳酸菌株を保有し、その中で、乳製品製造に適した「乳酸菌H61株」が「老化促進モデルマウス」(通常のマウスより寿 命が短く、色々な老化関連の病気が発症するマウス)の老化に伴う皮膚の潰瘍や骨密度の低下を抑制することを明らかにしました。当該研究については平成 15(2003)年頃から開始され、その成果を基に平成22(2010)年10月に特許権が登録されました。
特許化のプロセスと並行して、畜産草地研究所、茨城県工業技術センター、(株)つくば研究支援センター、筑波大学と実需者が連携して、特徴のある乳酸菌を 利用した付加価値の高い商品の生産・販売に向けた研究開発を進め、平成20(2008)年11月に乳酸菌H61株を利用したドリンクタイプのヨーグルトが 発売されました。また、平成25(2013)年8月からは茨城県内の別の乳業メーカーよりH61株を使ったカップタイプのヨーグルトが発売されました。

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第13回 「北海道十勝地方の自然の中から分離した優良パン酵母の北海道産小麦専用イーストとしての実用・商品化に関する開発研究」

日本最大の小麦産地である北海道十勝地方で「原料にこだわったパン」をつくるため、帯広畜産大学と北海道農業研究センターは、十勝の自然の中からパン製造 に適した野生の酵母50菌株を分離し、その中から最もパン生地発酵力が強く美味しいパンをつくることができる菌株として、エゾヤマザクラのサクランボから 分離した酵母「AK46株」を選抜することに成功しました。
この酵母は、地域の食材を用いてパンを作る地元の製パンメーカーやパン酵母の大量生産と販売を行っている企業の協力で、道産小麦専用の活性ドライイーストとして実用・商品化されました。

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第12回 「地下水位制御システムFOEASの開発および普及」

食料自給率の向上には、水田転換畑を用いた麦・大豆・野菜類などの栽培が不可欠ですが、排水不良等により転作が困難な地域が多く存在します。そこで、従来は排水にしか用いられて来なかった暗渠管に地下かんがい機能と水位制御機能を付加することで、湿害と干ばつ害の両方に対応した地下水位制御システムFOEAS(フォアス)を開発しました。 FOEASを導入した際の大豆と麦の栽培試験では、無施工ほ場に比べて、両作物ともに約4割の増収が確認されました。

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第11回 直播向き水稲品種「萌えみのり」の鉄コーティング直播栽培における産学官連携と普及活動

日本農業の国際競争力強化の必要性が指摘される今日、米生産を担う現場からは、水稲作の省力化、低コスト化、安定多収化を実現する技術が求められるようになってきました。このような背景から、鉄コーティング湛水直播栽培技術と、直播適性があり多収で良食味の水稲品種「萌えみのり」を組み合わせて、省力・低コストで米生産を行うことのできる水稲栽培技術の開発を行いました。

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第10回 「高接ぎ木法によるトマト青枯病防除技術」に係る産学官連携と普及活動

トマト栽培の産地化に伴う連作により、土壌伝染性の難防除病害である青枯病が発生し大きな問題となっています。本病は高温時に多発することから、近年の温暖化による被害の拡大も懸念されています。本病の防除法として、抵抗性台木品種を用いた接ぎ木栽培が広く普及しています。しかし、従来の慣行接ぎ木を用いても青枯病の被害を回避できないことが多く、より防除効果の高い技術の開発が求められていました。
高接ぎ木法は、慣行接ぎ木(接ぎ木部位:子葉上)より高い位置(同:第2、3葉上)に穂木を接いだ苗を利用することで青枯病を防除する技術です。高接ぎ木栽培を行うことで、台木品種の持つ"植物体内で青枯病菌の移行と増殖を抑制する能力"を最大限に活用し、青枯病菌による穂木の感染、発病が抑制されます。

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第9回 営農支援活動で利用できる「営農計画策定支援システムZ-BFM」の開発・普及

今日の営農支援活動では、具体的な営農計画案を提示し、担い手と対話しながら、より良い経営改善策を見出していくことが求められています。そこで、JA全農と連携し、営農支援活動で利用できる「営農計画策定支援システムZ-BFM」を開発しました。Z-BFMは、様々な前提条件のもとで、農業所得を最大にする営農計画案の策定を支援するプログラムです。特に、営農支援活動ツールとして、入力の簡便化、複数の営農計画案の比較表示、結果のグラフ表示、提案書形式での印刷等の機能を持ちます。

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第8回 日射制御型拍動自動灌水装置の開発と普及

日射制御型拍動自動灌水装置の模式図中国四国地域の耕地面積に占める中山間地域の割合は60%(全国:約38%)と高く、小規模な経営が多数を占める中で、水田の規模拡大が難しいため収益性の高い露地野菜への転換を進める農家も増えています。
このような中、露地野菜生産を安定して高めるため、施設栽培で多く用いられる養液土耕栽培の導入が有効と考えられましたが、中山間地域では必要な商用電源や充分な水圧・水量を得られない場所が多くあります。また、土壌病害による被害を抑えるため、露地野菜の収穫後は水田作に戻す輪作体系をとるなど、年毎に作付け地を移動することも多いため、農家が設備を簡単に移動でき、設備投資は短期間で償却できることが必要となります。そこで、省力・低コスト・多収・高収益を兼ね備え、農家が扱いやすく場所を選ばすばずに移動可能な養液土耕装置を開発しました。

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第7回 ウンシュウミカンの搾汁等の加工技術および飲料製品の製造・販売

ゆめちからパンフレット表紙日本国内では果物の健康に対する価値が一般消費者に殆ど認識されておらず、逆に甘味があるために高糖・高カロリーと誤解され、果物は肥満や糖尿病の危険因子であるという誤った認識をもたれていることが多くあり、そのことも一因で国内の果樹産業は衰退の一途を辿っています。また、国内果実加工業者においては、輸入果汁との競合による収益低下や加工後に発生する加工副産物の処理等の問題を抱えていました。
そこで、本研究では、ミカンに特徴的に含まれるβ-クリプトキサンチンの有用性を基礎的研究とヒト臨床試験の両面から明らかにするとともに、日本発の機能性食素材として期待の高いβ-クリプトキサンチンを柑橘加工副産物から大量調製する技術開発を行い、より付加価値の高い機能性食素材を柑橘加工副産物から製造するための技術開発を行いました。

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第6回 自給率向上のための画期的パン用品種『ゆめちから』の飛躍的普及・利用促進

ゆめちからパンフレット表紙 我が国の食料自給率が低下する中、小麦自給率の向上のため、自給率が1%未満であった製パン用の小麦の国内生産量を増大させる必要がありました。国内で最も製パン適性が高いのは北海道産の春播小麦でしたが、収量性が低くしかも播種期や収穫期の天候の変動(融雪期の早晩・降雨等)に影響を受けやすいために生産量が不安定という問題がありました。そこで、春播小麦よりも生産量が安定しやすい秋播小麦で、収量性の高い製パン用の小麦品種の育成を目指しました。

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第5回 三種の食中毒菌迅速多重検出システムの実用化

実用化された食中毒菌迅速多重検出キット「TA10」シリーズ 昨今の大規模食中毒の発生は極めて重大な社会不安を与えており、食品製造現場での衛生管理業務は以前に増して重要になっているところです。しかし、食中毒菌検査を実施するには、従来の手法では検査結果を得るのに4~7日を要し、食品製造現場で食中毒未然防止策を迅速に実施できず、現状を超える製品の安全性保証や衛生状態の改善が困難となっていました。
本研究では、食品製造現場での多種多様な衛生管理業務に対応できる自主衛生検査の開発・普及を目指して、複数食中毒菌を一括して同時に検出可能とする技術開発を行いました。

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第4回 前処理が簡単なBSE検査キットの開発

図1 抗プリオン蛋白質抗体を用いた異常プリオン蛋白質検出法 牛海綿状脳症(BSE)のスクリーニング検査には、固相酵素免疫測定法(ELISA)が用いられます。異常プリオン蛋白質は宿主が持つ正常プリオン蛋白質(PrP)の構造異性体であり、診断に用いられる抗体は正常、異常のどちらのPrPとも反応してしまいます。そこで、検体に蛋白質分解酵素処理をすることで、残存した異常プリオン蛋白質を検出しています。また、動物種を超えて高度に保存された正常プリオン蛋白質の存在は、BSEの診断に有用な抗体を作製するための障害となっていました。 診断やプリオン病の研究に有用な抗体を作製するために、PrPを持たないマウス(プリオン遺伝子欠損マウス)を用いて抗PrP抗体を作製しました。その中から、検査キットに最適な抗体を組み合わせ、従来品と比較して約10~100倍の感度をもつサンドイッチELISAの検出系を確立しました。

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法人番号 7050005005207