ダイバーシティ推進 Diversity and Inclusion

コルネット リシャー 生物機能利用研究部門 主任研究員

フランス ブルゴーニュ大学で博士号取得。東京大学でのポスドク、助手、北海道大学でのポスドクを経て、農業生物資源研究所の任期付研究員。その後、同研究所の主任研究員として採用され、現職。

子どもの頃から日本と昆虫に興味がありました。

日本で働く研究者になったきっかけ

もともと自然が好きで、いわゆる昆虫少年でした。お隣が研究機関の人だった影響で、大学で生物学を専攻し、大学院ではゴキブリの性行動に関わるフェロモン関連因子の同定のテーマで博士号を取りました。
日本の文化にも興味を持っていて、子どもの頃から柔道をやったり、高校を卒業してからは日本語を習ったりしていました。大学での国際学会で日本人参加者のガイド係をしていたときに、案内した東大の先生のシロアリの研究発表を聞きました。とてもおもしろいと思い、日本にも行ってみたかったので、JSPS外国人研究員のグラントで東大で2年間ポスドクをしました。その後、東大で助手を1年、北大でポスドクを2年しました。グラントが終わり、次のポストをいろいろ応募しましたが、競争があってなかなか決まりませんでした。ビザの期限が迫る中で、研究がダメなら視野を広げてと、大学の外国人学生担当などにも応募しました。最後に幸い、農業生物資源生物研究所のネムリユスリカの研究の募集がでていて、興味のある内容だったので応募して、任期付研究員のポストを得ました。ビザの期限ギリギリセーフ。研究の道を続けられて、ほっとしました。

ネムリユスリカ

ネムリユスリカは、幼虫がカラカラに乾いても死なない昆虫。乾燥した幼虫に水を与えてしばらくすると20分くらいでピクピク動き出して、泳ぎだして、また通常に発生を続けます。乾燥耐性因子の研究の中で、機能解析やツール開発に興味があったので、RNA(i 干渉)で遺伝子の機能を見ることをメインの仕事にしました。だんだんユスリカのゲノムプロジェクトが盛り上がって、ゲノム、トランスクリプトーム等のいろいろな情報が利用できるようになってきました。今では二つのテーマで研究をしています。1)乾燥耐性が進化的にどうやって獲得されたか。2)乾燥耐性のメカニズムを利用して常温乾燥保存技術の開発をする応用研究。2)を達成するために、第一のステップとしてネムリユスリカの培養細胞の常温乾燥保存に成功しました。今は乾燥耐性に関わると推定されるいろいろな遺伝子や代謝産物がどこまで重要か、添加や抑制実験でスクリーニングしています。最終的には、これらの乾燥耐性関連の保護因子を酵素や抗体の常温保存に利用したいです。また、ちょっとハードルが高いですけれど、他生物に利用するため、イタリアのグループと協力して、家畜の配偶子の乾燥保存技術の開発に参加しようとしています。バイオバンキングに利用して、家畜の珍しい品種を保管するのに応用したいです。乾燥耐性の現象がおもしろいので、研究することにモチベーションをもって仕事ができています。同時に成果の出口の可能性も見えていますので、それに貢献できれば非常におもしろいなと思っています。

仕事と私生活

研究機関は大学と違って、講義とかデューティが少なくて研究に集中できる環境と思っていました。いろいろな設備がそろっていて研究する環境としては良いところですが、やっぱり時間が無い。書類や、コンプライアンス、セキュリティのルールに対応するために必要な時間もあります。時間が限られている中で、つぎつぎ仕事がやってくるので、仕事に優先順位をつけて順番にやっています。今年、1月に娘が生まれました。妻が一番子育てを頑張ってくれていますが、彼女も仕事に復帰しましたから、仕事と子育てのバランスがますます忙しくなってきました。子育てはこの時期にしかできない経験ですので、できるだけやりたいことのひとつですね。機構の子育ての制度も利用しました。最初はルール上2日しか休みがないかな*1と思っていましたが、パパの子育て支援*2とか掲示が貼ってあって、妻が退院したときとかに休みを取って、一番辛いときに手伝うことができました。
最近はあまり行けていませんが、ユスリカは結構いろいろなところに生息していて、特に温泉に生息するユスリカを探しに行くのが趣味です。温泉にもつかれるし、温泉毎に特定の集団がいたりして結構おもしろいと思っています。

*1 配偶者出産休暇(2日) *2 育児参加休暇(5日)