ダイバーシティ推進 Diversity and Inclusion

小林 浩幸 中央農業研究センター 雑草制御グループ長

京都大学大学院修士課程終了後、農林水産省入省。研究員として東北農試へ異動。その後、上席研究員を経て、現職。

行政で仕事をしたことが研究職としても役立っています。

農林水産省行政職から研究職へ

大学で農学を学び、将来は研究者か教員になりたいと考えていました。農水省に入省したら、行政に配置になりました。行政施策の仕組みを知ることができ、社会との繋がりにやりがいを感じました。一方で、やはり研究をしたいと考え、毎年異動を希望していました。その後、外郭団体に出向になりました。ここでは上司の理解を得て、少し研究ができました。平日は働き、土日に研究する感じでしたが、水草と水質の関係性の原著論文や総説も書くことができました。3年後、東北農業試験場(現 東北農業研究センター)の畑輪作の研究室に研究職として異動になりました。ずっと雑草の研究をしていたので、続けたい気持ちはありましたが、1からスタートし直そうと思いました。室長から研究に専念できる環境を作ってもらえたため、学位も比較的早く取得することができました。学位取得後は研究をしたいのと同時に、周りの人や社会に貢献したいという気持ちになり、畑作部会の事務局も担当しました。研究成果の社会実装もモチベーションにつながります。カバークロップの利用効果を計数的に示した成果が政府の環境保全型農業補助制度の科学的根拠として使われ、社会の役に立てたと感じています。

東日本大震災対応

2011年3月に東日本大震災が起こりました。この直後に環境保全型畑作のプロジェクトリーダー(PL)と緊急対策の放射能対策研究の担当になりました。放射性物質で汚染された耕作地からの植物を用いた放射性セシウムの除去の検討のような、望みが薄そうでもやらなくてはならない事が多く忙しかったです。麦やソバのカリウム施肥によるセシウム吸収抑制効果の評価も担当しました。成果がカリウム施肥基準の根拠になったときは、やはりモチベーションが上がりました。

雑草研究へ

その後、今の中央農業研究センターの雑草グループに異動しました。PL、グループ長として、一人ひとりの能力を生かして、最大のパフォーマンスが上げられるようにと考えています。良い雑誌に出せそうな研究は若い人にやってもらいたいし、そのための協力は惜しみません。自分がやるべきと思う仕事は、端っこの仕事、緊急対応、現場対応です。現場対応は大切なことで、大きな仕事につながることもありますが、その場限りのことも多いので。現場対応は行政的な面が大きく、行政時代の上司からかけてもらった「行政で働くのも、国研で研究するのも、農業の施策を実施するという面で同じ。」という言葉を実感しています。

これからの目標雑草なろりんのイラスト

退職まであと8年になりましたが、それまでに達成したい目標が二つあります。一つは雑草のリスク管理体制の構築に貢献したいということです。虫害と病害はリスク管理の制度が整備されていますが、雑草は遅れています。畑作の外来雑草や水田の雑草イネの問題があります。とにかくやらなきゃ始まらないと問題を見える化することがスタートだと考えて、若い研究員と全国調査を始めています。もう一つの目標は、編集委員長をしている学術雑誌の掲載数を増やし、欲を言えばImpact factorも上げることです。プライベートでは山を歩いたり、植物や鳥の写真を撮ったりするのが趣味です。若い頃は頂上まで行くことを目指していましたが、今は途中で初めて見る植物を見つけて、写真を撮って満足して帰ったりしています。退職後は趣味を生かして社会貢献になるようなことをしたいです。一年生草本の雑草は個体群として対策することが必要ですが、地上部に見えている部分に比べて、オーダーが違う数の種子が土の中に埋まっています。この埋土種子の問題は、ほとんど認識されていません。埋土種子の写真を撮って図鑑を作るようなことをしたいと思っています。