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水曜会(第697回)

情報公開日:2016年6月22日 (水曜日)

今回の水曜会は、新規採用職員3名による一般演題3題を予定しております。
参加希望者の事前登録は不要、当日参加も可能です。皆様のご来聴をお待ちしております。

日時

平成28年6月29日(水曜日)13時30分~

場所

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 講堂
茨城県つくば市観音台3-1-5 (交通案内/会場案内(建物3))
Tel: 029-838-7707(企画管理部 企画連携室 交流チーム)
Fax: 029-838-7907

内容

座長:大橋 誠一(動衛研)

シュードタイプウイルスを用いたクリミア・コンゴ出血熱ウイルスの性状解析および実験室診断系の構築(20分)

○須田 遊人 (農研機構 動物衛生研究部門 ウイルス・疫学研究領域 発病制御ユニット)

クリミア・コンゴ出血熱ウイルス(CCHFV)はブニヤウイルス科ナイロウイルス属に属するウイルスであり、一類感染症であるCCHFを引き起こす。CCHFはヒトでの致死率が30%近くにも上る重篤な出血熱であり、その症例報告は地域、数ともに増加しており問題となっている。一方、CCHFVはバイオセーフティレベル(BSL)4施設での取り扱いが求められるウイルスであり、そのためCCHFVの研究は未解明な部分が多い。したがって、新規の実験系の構築や研究に用いることができる新規のツールの構築が求められている。
シュードタイプウイルスは、目的ウイルスのエンベロープ蛋白質を被ったウイルスであり、水胞性口炎ウイルス(VSV)やレトロウイルス、レンチウイルスなどがそのベースに用いられる。これらシュードタイプウイルスは、BSL-2施設での目的ウイルスの侵入機構の解析、目的ウイルスそのものを用いない代替法としての中和試験による血清診断を可能とするものとして、これまで様々なウイルスで利用されてきた。そこで、CCHFVの研究、検査への応用を目指し、VSVベースのCCHFVシュードタイプウイルスを作製した。
本発表では、シュードタイプウイルスを用いたCCHFVの性状解析と血清学的診断法の構築について紹介したい。

座長:下地 善弘(動衛研)

気管支敗血症菌が産生するバイオフィルム関連因子BrtAはBvg-遺伝子でありながら宿主感染時に発現している(20分)

○西川 明芳 (農研機構 動物衛生研究部門 細菌・寄生虫研究領域 細胞内寄生菌ユニット)

百日咳菌に代表されるボルデテラは、宿主に呼吸器感染症を引き起こす。ボルデテラはBvgASと呼ばれる二成分制御系が外環境を感知し、病原性を可逆的に変化させることが知られている。BvgASが活性化している状態をBvg+相、不活性化している状態をBvg-相と呼ぶ。通常の培養条件下では宿主感染に重要な病原因子を発現していることから、菌は宿主感染時にもBvg+相として生育しており、Bvg-相で発現する遺伝子は宿主感染時には発現しておらず病原性や感染には重要でないというのがボルデテラ研究の通説である。しかし、実際の宿主感染時にボルデテラが発現している遺伝子セットは調べられていなかった。そこで我々は百日咳菌の類縁菌である気管支敗血症菌が自然宿主であるラットの気道に感染している際に発現する遺伝子を網羅的に同定する方法を開発した。その方法を用いてbrtAと名付けたBvg-遺伝子が感染時に発現上昇していることを見出した。さらにBrtAはin vitroの系においてバイオフィルム形成に重要であることが明らかになった。このことからBrtAが宿主感染時の菌の付着に関わっている可能性が示された。以上の成果により、ボルデテラがBvgAS以外の病原因子発現機構を持つことが示唆された。

座長:秋庭 正人(動衛研)

Toll-like receptor 3の細胞外二重鎖RNA認識に関する研究(20分)

○渡部 綾子 (農研機構 動物衛生研究部門 細菌・寄生虫研究領域 腸管病原菌ユニット)

常に、ウィルスや細菌の侵入にさらされているわれわれ人間にとって、侵入してきた異物を認識することは極めて重要である。1990年代の後半に発見された、病原体特有の構造を認識し、自然免疫を誘導するToll-like receptor (TLR) の中でTLR3に焦点をあて研究を進めた。細胞内に発現しているTLR3はウィルス侵入によって生じる細胞外からの二重鎖核酸 (dsRNA) を認識し自然免疫を誘導する。マウスにおいてdsRNAの取り込みは細胞表面分子 (CD14) を介して行われることが示唆されていた。しかし、CD14を発現していないヒト細胞において細胞内にdsRNAを取り込み、TLR3を介したウィルス除去機構がはたらいていることを明らかにした (J. Immunology, 181(8), 5522-5529, 2008)。そこで、未解明の細胞外からの刺激が細胞内TLR3に輸送されるまでの経路を明らかにすることを試みた。CD14の発現していないヒト細胞から合成dsRNA (poly(I:C)) に特異的に結合する100以上のタンパク質の分離精製に成功し、poly(I:C)刺激によるTLR3依存的な自然免疫の誘導に関与しているRaftlinというタンパク質を同定した。Raftlinは細胞内タンパク質であり、ヒト細胞 (HeLa細胞とヒト単球由来樹状細胞) においてpoly(I:C)の細胞内取り込みと細胞質内拡散に必須な分子であることを明らかにした。また、マウスにはraftlin-1とraftlin-2が発現しておりraftlin-2がpoly(I:C)の細胞内取り込みと細胞質内拡散に必須な分子であることも明らかにした。以上のことから、ヒトとマウスの両者においてRaftlinはpoly(I:C)の細胞内輸送に関わる分子の一つであると考えられる(J. Biol. Chem., 286(12), 10702-10711, 2011)。

法人番号 7050005005207