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水曜会(第700回)

情報公開日:2017年2月 7日 (火曜日)

今回の水曜会は、第700回を記念し、『ワンヘルス』をキーワードに東京大学医科学研究所 渡辺先生、国立感染症研究所 黒田先生による特別記念講演を行います。
参加希望者の事前登録は不要、当日参加も可能です。皆様のご来聴をお待ちしております。

日時

平成29年2月20日(月曜日)13時30分~

場所

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 講堂
茨城県つくば市観音台3-1-5 (交通案内/会場案内(建物3))
Tel: 029-838-7937(企画管理部 企画連携室 交流チーム)
Fax: 029-838-7907

内容

座長:内田 裕子(動衛研)

インフルエンザウイルスの宿主への適応戦略(60分)

○渡辺 登喜子 (東京大学医科学研究所 感染・免疫部門ウイルス感染分野)

インフルエンザは毎年冬になると流行し、乳幼児や高齢者を中心に多くの犠牲者を出し、社会的な問題となっています。また、2009年に出現した新型H1N1ウイルスのように、インフルエンザウイルスは数十年に一度世界的大流行(パンデミック)を引き起こし、甚大な被害をもたらします。さらに最近、H5N1亜型やH7N9亜型といった鳥インフルエンザウイルスが人に感染して重篤な症状を起こす例が多く報告されており、鳥インフルエンザウイルスによるパンデミックの危険性も懸念されています。

インフルエンザウイルスの自然宿主はカモなどの野生の水禽です。水禽が保有しているインフルエンザウイルスが、自然宿主でない他の動物へと伝播することはまれであり、さらに伝播した先の動物間でインフルエンザウイルスの伝播は容易には起こりません。なぜならそこには、宿主の違いという大きな壁があるからです。しかし、ひとたびウイルスが、宿主の壁を乗り越え他の動物へと伝播し、さらにその動物間でも伝播できる能力を獲得すれば、瞬く間にウイルスは広がりパンデミックを引き起こす可能性が高くなります。

我々は、鳥由来のインフルエンザウイルスが、どのようにヒトに適応していくのかを調べるために、これまでにパンデミックを引き起こしたインフルエンザウイルスや、ヒトから分離された鳥由来ウイルスを用いて、研究を進めています。また、インフルエンザウイルスの増殖メカニズムの全体像を分子レベルで理解するべく、インフルエンザウイルスの増殖に関わる宿主因子の同定および機能解析を行っています。本発表では、最近得られた研究結果をもとに、インフルエンザウイルスの宿主への適応戦略について概説します。

座長:秋庭 正人(動衛研)

ゲノム情報から見た薬剤耐性菌の自然界における存在(60分)

○黒田 誠 (国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)

次世代シークエンス技術 (Next-Generation Sequencing: NGS)は感染症分野の基礎と臨床研究のアプローチを抜本的に変え、原因不明症例の網羅的病原体スクリーニング検査法やゲノム分子疫学による公衆衛生対策(ワンヘルス含む)として十分に機能し更なる活用が期待されている。

集団発生等の複数患者の分離株群であれば、NGSデータにてゲノム分子疫学情報を実地疫学調査への補完材料として機能しうる。実際、我々は旧来型の分子疫学法では同一遺伝型の結核菌アウトブレイク株を"ゲノム分子疫学"として高精度に追加解析し、紛れ込み例を適正に判断し疫学調査と一致する結果を得た。我々は、包括的な分子疫学検査に加え株固有の薬剤感受性の推定も可能にした結核菌ゲノム分子疫学ツール(TGS-TB)を開発した。

細菌ゲノムは所謂 "Genome Plasticity (ゲノム可塑性)"があり、プラスチックのように多彩な流動性(形質転換、形質導入、相同組換え、水平伝達、相変異、縮退)をもって環境に適応している。特にプラスミド水平伝達による薬剤耐性菌の世界的拡散が懸念され、ワンヘルス(ヒト・動物・環境)対応による薬剤耐性菌制圧が至上命題になっている(WHO Global action plan参照)。厚労・農水関係各位が参集したAMED班を結成し、薬剤耐性菌ゲノム情報(特に薬剤耐性プラスミド)の収集と統合ゲノムデータベース GenEpid-Jを構築中である。2015年11月に中国発の多剤耐性緑膿菌およびアシネトバクターの治療薬であるコリスチンの耐性因子MCR-1 を有す薬剤耐性プラスミドが発見された。即座に我々のGenEpid-J データベースで検索したところ、家畜由来の大腸菌とサルモネラから検出され、日本の汚染状況を迅速に把握し関係各位へ情報伝達できた。米国FDAでは7万株以上の食中毒菌(サルモネラ等)のゲノムデータベース (GenomeTrackr)の構築等、世界はゲノム情報の高度な"配列指紋"を利用して、有効な感染症対策の立案へ歩み始めている。

本発表では、ワンヘルスに関連する特筆すべき外部論文を紹介するとともに、我々のGenEpid-J がもたらす未来像とワンヘルス対応としての取組について皆様と情報共有できれば幸いである。

法人番号 7050005005207