イベント・セミナー詳細

専門家

水曜会(第702回)

情報公開日:2017年9月12日 (火曜日)

今回の水曜会は、一般財団法人日本生物科学研究所から笹川 千尋 理事長をお招きし、演題「腸粘膜における病原細菌と自然免疫の攻防について」をご講演いただきます。
参加希望者の事前登録は不要、当日参加も可能です。皆様のご来聴をお待ちしております。

日時

平成29年9月27日(水曜日)13時30分~

場所

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 研修棟講堂
茨城県つくば市観音台3-1-5 (交通案内/会場案内(建物3)
Tel: 029-838-7937(企画管理部 企画連携室 交流チーム)
Fax: 029-838-7907

内容

座長:伊藤 博哉(動衛研)

腸粘膜における病原細菌と自然免疫の攻防 (60分)

○笹川 千尋 (一般財団法人 日本生物科学研究所)

腸管粘膜には、外来微生物に対する「固有バリアーと免疫バリアー」が備えられている。しかし腸管病原細菌は、これらのバリアーを回避・克服し、腸粘膜を足場として感染・定着する。赤痢菌、サルモネラ、エルシニア、腸管病原性大腸菌等は、高度に進化したタンパク質分泌装置(III型分泌装置)を備え、多様に機能分化したエフェクターを、感染の各過程で宿主細胞へ分泌する。赤痢菌、サルモネラ、エルシニア等は、III型分泌装置によりエフェクターを分泌して、マクロファージや上皮細胞へ侵入し増殖する。その結果、様々な菌体成分がPAMPs (病原体関連分子パターン)としてTLR、NLR、カスパーゼ等の自然免疫受容体に認識され炎症が誘導される。また菌の細胞侵入に伴うアクチン重合、膜破壊はDAMPs(危険関連分子パターン)として認識され、ERストレス、ミトコンドリア障害、ROS産生、カスパーゼ活性化等を通じて、オートファジー、細胞死等が惹起される。さらに感染細胞・死細胞から、さらなるDAMPs(ATP、 F-アクチン、HMGB1、細胞デブリ等)が周囲に放出され、炎症、組織破壊が増悪する。
赤痢菌の感染では、菌が大腸粘膜のマクロファージ、上皮細胞へ侵入・増殖する過程で、様々なPAMPsと大量のDAMPsが創成され、これらに対して自然免疫が過剰に反応し、最終的に血性の劇症腸炎(細菌性赤痢)が惹起される。これまでの一連の研究で、私共は「病原体と宿主相互作用」や「病原性」の概念に、新たなパラダイムを導入してきたが、赤痢菌には多くの未知エフェクターがあり、本菌の感染戦略を包括的に理解できるまでに至っていない。その理由の一つとして、霊長類以外で自然感染モデルが未だに確立されていないことがある。我々は、マウス腸内細菌叢(マイクロバイオーム)の感染に果す役割に注目し、マイクロバイーム組成を薬剤で変動させたマウスに赤痢菌を経口感染させ、腸炎が再現性よく惹起されることを見出した(未発表)。
今回、赤痢菌を例に、腸粘膜バリアーの克服と自然免疫の回避・制御において発揮される、病原細菌の高度に進化した感染戦略、及びマイクロバイオームの感染に果す役割を紹介する。

法人番号 7050005005207