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水曜会(第706回)

情報公開日:2018年6月21日 (木曜日)

今回の水曜会は、メルボルン大学にて博士課程を修了した枡鏡特別研究員とオハイオ大学での在外研究より帰国した宮﨑主任研究員に加え、物質・材料研究機構(NIMS)の山本玲子研究員をお招きし、3名による演題を予定しております。
参加者の事前登録は不要、当日参加も可能です。皆様のご来聴をお待ちしております。

日時

平成30年6月27日(水曜日)13時30分~

場所

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 講堂
茨城県つくば市観音台3-1-5 (交通案内/会場案内(建物3))
Tel: 029-838-7937(企画管理部 企画連携室 交流チーム)
Fax: 029-838-7907

内容

座長:江口 正浩(動衛研)

Metabolomicsを用いたマイコプラズマ遺伝子機能の解明 (20分)

○枡鏡 優美子 (農研機構 動物衛生研究部門 細菌・寄生虫研究領域 細胞内寄生菌ユニット)

Mycoplasma gallisepticumおよびM. bovisはそれぞれ、家禽や牛に慢性呼吸器病や様々な病態を引き起こし、経済的にも重要な病原体である。 マイコプラズマは自己増殖可能な最小の細菌として知られている。最小ゲノムにより、 その病原性は細菌の構成要素や代謝産物が関与していると考えられている。そのため、病原性を示す マイコプラズマの遺伝子機能の解明は、病原性や病態を理解するのに重要である。しかしながら、その遺伝子機能 は手法が限られているため、未だにその多くが解明されていない 。
本研究では、比較的新しい分野の学問であるMetabolomicsの手法を用いて、2種のマイコプラズマの比較研究を行い代謝系の違いを明らかにした。また、MetabolomicsとBioinformaticsを統合することでマイコプラズマの代謝系における新規遺伝子機能を明らかにした。 この基礎研究をもとに、2種のマイコプラズマの変異株についてもMetabolomicsおよびBioinformaticsを適用し、その遺伝子機能を明らかにした 。 以上のことからMetabolomicsは今後、マイコプラズマ遺伝子機能の解明に寄与することが期待される。

座長:大橋 誠一(動衛研)

ロタウイルス等下痢症ウイルスに対する新規免疫賦与法の探索 (30分)

○宮﨑 綾子 (農研機構 動物衛生研究部門 ウイルス・疫学研究領域 発病制御ユニット)

2016年5月より2年間、The Ohio State University, College of Veterinary Preventive Medicine, Ohio Agricultural Research and Development Center, Food and Animal Health Research Program のDr. Linda J Saif研究室において、標記の課題で農研機構長期在外研究を行った。
ロタウイルスは乳幼児と幼若家畜における下痢の主原因であり、ロタウイルス感染症によりアジア・アフリカを中心に年間22万人の5歳以下乳幼児が死亡している。プロバイオティクスは、特異的治療法のないロタウイルス等による腸管感染症や抗生物質起因性下痢に対する安価な治療手段、そして病原体に対する免疫増強手段として公衆衛生のみならず家畜衛生分野でも関心が高まっている。本在外研究では、腸内細菌をもたない無菌豚ならびにヒト健康乳児糞便細菌叢を移植した無菌豚におけるヒトロタウイルス感染実験系を用い、プロバイオティクスであるEscherichia coli Nissle 1917 株(EcN)のウイルス排泄および発症軽減効果を検討したので報告する。また、ロタウイルス感染症の被害が集中するアジア・アフリカでロタウイルスワクチンの効果が期待より低い一因として、栄養不良が挙げられている。前述のヒト健康乳児糞便細菌叢を移植した無菌豚を用い、栄養不良がヒトロタウイルスワクチン効果に与える影響についても検討したのであわせて報告したい。

***休憩時間***

座長:川嶌 健司(動衛研)

銅・銅合金の抗菌特性と迅速化の試み (30分)

○山本 玲子 (国立研究開発法人 物質・材料研究機構)

多剤耐性菌の蔓延は世界的な問題であり、抗菌薬の適正使用と共に、抗菌薬に頼らない殺菌・滅菌対策が求められている。感染症の8割は接触により伝搬するため、環境表面における生菌数制御が重要である。銅・銅合金は、グラム陰性菌・グラム陽性菌・真菌・芽胞・ウィルス等、幅広い対象に対して抗菌効果を有し、金属表面にて細菌のcontact killing(接触死)が生じるという特徴がある。さらに、殺菌作用に加えて菌のDNAを分解するため、水平伝搬を阻止し、多剤耐性菌の発生防止が期待される。環境表面としての使用を模擬し、試料表面にDNAを塗布・乾燥させ、一定時間経過後に回収、残存量を調べたところ、銅・銅合金表面では約5分でDNA量はガラス表面の20%以下に減少した。一方、抗菌ステンレス表面では、6時間経過後もDNAの90%以上が残存していた。
このように銅には優れた抗菌特性が認められるが、耐食性の低さから、環境表面への適用は進んでいない。一方、銅合金は銅よりも耐食性には優れているが、抗菌特性に劣る。そこで、銅合金の抗菌活性の向上・迅速化を試みた。銅の殺菌機構として、溶出Cu2+の作用の他に活性酸素の発生が示唆されており、有機小分子の添加により活性酸素の発生を促進したところ、抗菌活性の向上が認められた。