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第206回つくば病理談話会演題

381) 鶏の伝染性気管支炎ウイルスによる偽好酸球浸潤の顕著な尿細管間質性腎炎[鶏の伝染性気管支炎(腎炎型)]

  • 提出者(所属): 関口 真樹(千葉県中央家畜保健衛生所)
  • 動物種: 鶏
  • 品種: 横斑プリマスロック
  • 性別: 雄
  • 年齢: 313日齢
  • 死・殺の別: 斃死
  • 解剖日: 2016年1月5日
  • 解剖場所: 千葉県中央家畜保健衛生所

発生状況および臨床所見

開放平飼い方式の種鶏場で、1部屋75羽の種鶏のうち3羽が死亡、1羽が沈鬱症状を示したため、これら4羽(全て雄)の病性鑑定を実施した。同居鶏及び他の鶏群に下痢、呼吸器症状、産卵率の低下はみられなかった。病性鑑定後、5日間で3羽が死亡した以降、死亡はみられなかった。伝染性気管支炎(IB)ウイルスのワクチンは、14日齢にH-120株、28日齢にTM株、42日齢にAK株、98日齢に練馬株とTM株を接種。

病原検索

全羽の腎臓からIBウイルスが分離された。全身臓器から有意な細菌は分離されなかった。沈鬱鶏では血清中尿酸濃度の上昇(26.8 mg/dl:正常2.5-8.0 mg/dl)がみられた。

剖検所見

体重2.83 kg。肉冠と肉垂のうっ血、腎臓のうっ血性腫大、尿管の拡張及び白色クリーム状物貯留、そ嚢の水様内容物貯留がみられた。
他の症例でも、上記と同様の所見と脾臓の腫大がみられた。

組織所見(提出標本: 腎臓)

腎臓では、髄質の間質で、重度の偽好酸球浸潤、中等度のマクロファージ浸潤がみられ、これらの細胞と球状結晶物(尿酸塩)を含んだ炎症巣も多発していた。遠位尿細管以降のネフロンで、管腔の拡張、管腔内の偽好酸球・マクロファージ・尿酸塩の貯留、上皮の変性・脱落・扁平化がみられ、この程度は下部ネフロンになるほど重度だった。また、重度のうっ血、髄質で中等度の水腫がみられた。尿管では、中等度の水腫、軽度の偽好酸球・マクロファージ・リンパ球浸潤がみられた。その他の臓器に著変はみられなかった。
他の症例でも、同様の腎臓病変がみられた。また、脾臓で濾胞の活性化、網内系細胞の活性化がみられた。

討議

  • 偽好酸球浸潤を主体とした尿細管間質性腎炎がみられたことから、IBの急性期の病変と考えていいか。同様の事例の経験の有無も併せて、ご意見を伺いたい。
  • 間質の炎症巣は、集合管が破綻し生じたものと考えていいか。

診断

  • 組織診断:鶏の伝染性気管支炎ウイルスによる偽好酸球浸潤の顕著な尿細管間質性腎炎
  • 疾病診断:鶏の伝染性気管支炎(腎炎型)

382) 鶏のAspergillus flavusによる肉芽腫性肺炎[A. flavusによる鶏アスペルギルス症]

  • 提出者(所属): 山口 遼作(JA全農 家畜衛生研究所))
  • 動物種: 鶏
  • 品種: ブロイラー
  • 性別: 雄
  • 年齢: 54日齢
  • 死・殺の別:鑑定殺
  • 解剖日時:2015年7月8日
  • 解剖場所:JA全農家畜衛生研究所

発生状況および臨床所見

3鶏舎(約7,000羽/鶏舎)で約20,000羽のブロイラーを平飼い飼養している農場で、平成27年5月に導入したロットにおいて、約30日齢時に、それまで各鶏舎20羽程度であった死亡羽数が、突然百数十羽程度に増加した(死亡率約0.5%/日)。死亡鶏群は体重減少を認めたが、その他外見的な異常は認めなかった。本症発生鶏舎における死亡および淘汰は、出荷時(約58日齢)までに2,863羽(13%)に達した。提出症例は、54日齢時に鑑定殺した1例である。

病原検索

気嚢スワブ、肝臓の臓器スタンプについて細菌検査を行ったが、有意な菌は分離されなかった。
気管および腎臓に対してIBV、F嚢に対してIBDV、肝臓に対してFAVのPCR検査を行ったが、いずれも陰性であった。
肺のパラフィン包埋ブロックからDNAの抽出を行い、Aspergillus属真菌の同定に用いられるβ-tubulinをコードする遺伝子についてシークエンスおよびBLAST解析を実施した。結果、抽出したDNA配列は、既知のAspergillus flavusのβ-tubulin遺伝子塩基配列と高い相同性を有していた。

剖検所見

胸郭前口を中心に、拇指頭大の多発性白色結節による肺の膨隆を認めた。割面では、白色結節が肺実質を圧迫するように存在していた。同様の白色結節は、左腎臓上部に位置する腹部気嚢にも認められ、気嚢は広範に白濁していた。

組織所見(提出標本: 肺)

肺および気嚢の白色結節は、真菌菌糸を伴った肉芽腫病変として認められた。肉芽腫内部は多発性の壊死巣が存在し、中心部に菌糸状および酵母状の真菌を多数認め、マクロファージおよび多核巨細胞が高度に浸潤していた。肉芽腫の周囲では、び漫性に線維増生を認め、結合組織中に偽好酸球の浸潤を観察した。PAS反応ならびにグロコット染色を実施したところ、Y字に分岐し、隔壁を有する菌糸を認めた。菌糸の幅は均一ではなく、3~8μmの範囲で認められ、菌糸側面が平行ではないものが多数認められた。ウサギ抗Aspergillus spp.血清(動衛研)を用いた免疫組織化学的検査では、病変部の真菌菌糸に一致して陽性反応を認めた。抗Rhizomucor spp.血清(動衛研)および抗Candida spp.血清(動衛研)に対する反応は陰性であった。

討議

  • A. flavusによる鶏アスペルギルス症のご経験の有無
  • 鶏真菌症の発生状況

診断

  • 組織診断: 鶏のAspergillus flavusによる肉芽腫性肺炎
  • 疾病診断: A. flavusによる鶏アスペルギルス症