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第214回つくば病理談話会演題

401) 子牛のFusobacterium necrophorumによる脳膿瘍[F. necrophorum感染症、牛マンヘミア症]

提出者(所属): 高橋 優花(山梨県東部家畜保健衛生所)

  • 動物種: 牛
  • 品種: 黒毛和種
  • 性別: 雌
  • 年齢: 43日齢
  • 死・殺の別:斃死
  • 解剖日:2017年3月10日
  • 解剖場所:山梨県東部家畜保健衛生所

発生状況および臨床所見

県有肉用繁殖牛約200頭を飼養し、県内農家から育成牛等を預託される公共牧場において、2017年1月26日生まれの牛が、2月中旬から元気消失し、心音不整が認められた。3月8日に衰弱が顕著となり、翌9日午後に斃死したため、病性鑑定を実施した。

病原検査

細菌学的検査では、心臓、肺、肺門リンパ節、肝臓、胸水、心嚢水および気管スワブからMannheimia haemolytica(M. haemolytica)が分離された。大脳、小脳、肝臓、脾臓、腎臓および肺門リンパ節についてFusobacterium necrophorum(F. necrophorum)のPCR検査を実施したが、特異遺伝子は検出されなかった。

剖検所見

やや削痩し眼球陥没が認められた。脳実質には小豆大~母指頭大の膿瘍が多数形成されていた。肺は胸壁および心外膜に重度に癒着し、右前葉が重度に出血し硬結していた。赤色の胸水および心嚢水が貯留していた。第四胃粘膜の一部が出血していた。

組織所見(提出標本: 大脳)

左脳の嗅球から側頭葉付近の実質において、大型の凝固壊死巣が多数形成されていた。壊死巣周囲をリンパ球、形質細胞、線維芽細胞からなる肉芽組織が取り囲んでおり、軽度から中程度の囲管性細胞浸潤が認められた。Warthin-Starry染色により凝固壊死巣に多数の長桿菌が認められ、免疫染色によりF. necrophorumの陽性反応が認められた。肺では右前葉において重度に出血および壊死し、細菌塊や燕麦様細胞が多数認められた。小葉間結合組織は好中球やマクロファージ浸潤、線維素析出を伴い、水腫性に拡張していた。気管支腔においても細菌塊や好中球が認められ、粘膜上皮細胞が一部脱落していた。肺の細菌塊に一致してM. haemolyticaの陽性反応が認められた。肺門リンパ節の被膜や小柱および心外膜も炎症細胞と線維素を伴い水腫性に拡張していた。第四胃ではびらんが認められた。

討議

昨年度、本県では若齢牛におけるF. necrophorumによる脳膿瘍形成を伴う斃死が2例(15日齢のホルスタインおよび本症例)ありましたが、過去の研修会では育成牛や成牛における報告が多いと思われます。若齢牛でのご経験がありましたら、発生状況、病変分布、死因等をご教授下さい。

診断

  • 組織診断: 子牛のF. necrophorumによる脳膿瘍
  • 疾病診断: F. necrophorum感染症、牛マンヘミア症

402) ウサギのPasteurella multocida(莢膜抗原A型)による化膿性壊死性胸膜肺炎[ウサギのパスツレラ症]

提出者(所属): 上野山 慧(動物検疫所)

  • 動物種: ウサギ
  • 品種: ライオンラビット
  • 性別: 雌
  • 年齢: 1ヵ月齢
  • 死・殺の別:斃死
  • 解剖日:2017年4月26日9時半(死後約1~17時間)
  • 解剖場所:動物検疫所

発生状況および臨床所見

当該兎は、2017年4月24日に台湾より成田支所天浪検疫場に輸入された愛玩用ウサギ106羽中の1羽である。4月25日午後4時まで異常を認めず、4月26日午前9時の観察時に斃死しているのを確認した。その他の個体に異常は認めなかった。

病原検査

主要臓器の細菌学的検査を実施した結果、左右肺、心臓、膀胱よりPasteurella multocidaが分離された。PCR法を用いた莢膜抗原型別はA型であった。

剖検所見

肺は、右肺全体は白色構造物に覆われ、胸膜および横隔膜に強固に癒着していた。左肺前葉から後葉前縁は暗赤色部を呈し、割面は白色膿瘍が散在していた。膀胱内には、黄色貯留物が貯留していた。

組織所見(提出標本: 右肺)

右肺では白色膿瘍部に一致して、肺胞上皮細胞の壊死を広範囲に認め、壊死巣を形成していた。壊死巣辺縁では、重度の偽好酸球、マクロファージ浸潤と燕麦様細胞がみられ、多数のグラム陰性桿菌塊が認められた。壊死巣の外側では偽好酸球に加えてII型肺胞上皮細胞の過形成が認められた。細気管支腔内には、細胞退廃物や赤血球が充満していた。肺胸膜には、偽好酸球、マクロファージ浸潤と燕麦様細胞がみられ、グラム陰性桿菌塊が認められた。左肺では、白色膿瘍部に一致して偽好酸球、マクロファージ浸潤と燕麦様細胞、グラム陰性桿菌塊からなる化膿巣が認められた。また、脾臓においては、黄褐色のヘモジデリン色素がび漫性に沈着していた。

討議

壊死巣の外側にみられたII型肺胞上皮細胞の過形成の理由について。

診断

  • 組織診断: ウサギのPasteurella multocida(莢膜抗原A型)による化膿性壊死性胸膜肺炎
  • 疾病診断: ウサギのパスツレラ症

403) 犬アデノウイルスI型実験感染犬における急性肝炎[犬伝染性肝炎(実験感染)]

提出者(所属): 萩原 寛子(共立製薬株式会社)

  • 動物種: 犬
  • 品種: ビーグル
  • 性別: 雌
  • 年齢: 20週齢
  • 死・殺の別:鑑定殺
  • 解剖日:2012年8月28日
  • 解剖場所:共立製薬株式会社 先端技術開発センター

発生状況および臨床所見

犬アデノウイルスI型(CAVⅠ:強毒株)の病原性確認試験に用いた実験感染検体である。CAVⅠ 108.2TCID50/mLを頸静脈内に3mL接種したところ、接種後3日目に体温が低下し(37.8°C)、接種後4日目には食欲減退、歩行困難の状態を呈したため、エンドポイントとして安楽殺を実施した。

病原検査

肝臓のパラフィンブロックより、CAVⅠの特異遺伝子を検出。その他、臓器における菌分離およびウイルス分離は未実施。

剖検所見

肝臓は全体にやや黄褐色を示し、一部は斑状模様も観察された。その他、胆嚢壁の軽度な水腫性肥厚、胸腺萎縮および下顎リンパ節の充・うっ血が観察された。

組織所見(提出標本: 肝臓)

肝臓は類洞がごく軽度に拡張し肝細胞索の配列が乱れ、肝細胞の変性・壊死が小葉中心性に観察された。肝細胞やクッパー細胞および血管内皮の核内に好塩基性や両染色性のcowdry A型およびfull型の核内封入体が全域に多数観察され、クッパー細胞の壊死も認められた。門脈域はリンパ管の拡張を伴う水腫が中程度に観察され、門脈域や類洞には好中球や単核細胞が軽度に認められた。
その他の臓器では、胆嚢壁の水腫性肥厚、脾臓および胸腺のリンパ球減少、扁桃の出血および炎症、腎臓および脳の微小出血、諸臓器における血管を中心とした内皮細胞に核内封入体が観察された。
抗CAVⅠウサギ血清(共立製薬)を用いた免疫組織化学的染色では、肝臓、胆嚢、脾臓、腎臓、心臓、肺、胸腺、下顎リンパ節、扁桃、腸間膜リンパ節、胃腸、膀胱および脳に陽性反応が認められた。

討議

本症例の変性・壊死は小葉中心性に観察されましたが、免疫染色では小葉中心部の反応が顕著ということは無く、全域において均一な反応が認められました。伝染性肝炎の小葉中心性壊死は、類洞内皮の損傷による局所的な酸素欠乏によるとされていますが、その他にも中心性壊死を引き起こす要因として考えられることがあるのか、ご教授お願いします。

診断

  • 組織診断: 犬アデノウイルスⅠ型実験感染犬における急性肝炎
  • 疾病診断: 犬伝染性肝炎(実験感染)
法人番号 7050005005207